神津島のタカベ漁を守る三協網組 石田勝正さん|THE 東京仕事人(水産業編)|特集|とうきょうの恵みTOKYO GROWN

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THE 東京仕事人

水産業編2017/09/29 UP

神津島のタカベ漁を守る三協網組 石田勝正さん

キング・オブ・小魚 旬のタカベ

Profile:三協網組

石田勝正さん

タカベ…あまり聞き慣れない名前かもしれません。“タカ”は岩礁のこと、“べ”は魚のことだそうで、その名の通り、沿岸の岩礁域に生息しています。アジに似た姿で大きさは20cmほど、少し緑がかったブルーグレーの魚体の背中に金色の筋が入った、大変美しい魚です。夏が旬で、パリッと塩焼きにすると、ふっくらした身に脂がまわり、白身魚と青魚のいいとこどりをしたような味わいで、絶品です。高級魚であり23区内ではなかなか手に入りませんが、旬の時期の神津島では民宿の夕食にも並びます。例年、解禁は7月ごろですが、今年は島の近海に魚影が現れるのが遅く、取材に伺ったのは8月下旬。今回は長年タカベ漁に携わってきた石田勝正さんを訪ね、漁に連れて行ってもらいました。

タカベの仕事は潮との勝負

8月下旬の朝5時30分、3隻の船団で出漁です。先頭を行くやや小型の1隻は、3人が乗り組んで魚影を探すなどの役割を担い、後に続く2隻はそれぞれ7~8人が乗り組み、連携して円形に網を立て魚群を囲い込む役割を担います。漁場に着くと、まずはスカシ(魚影を見つける漁師)が海へ飛び込み、泳ぎながらタカベの群れを探します。難しいのは、ただ群れがいればよいというわけではないところ。群れの大きさ、潮の向き、そして2隻が網で囲い込める速度かどうかとの兼ね合いを総合的に判断して合図を出します。スカシが水面に顔を出して手を上げるや、「手ぇ、上げたぞ~っ」と船のあちらこちらから鬨(とき)の声が上がり、タカベとの真剣勝負がスタート。2隻がフルスロットルで放射状に大きく展開して網を広げます。この間に漁師たちは素潜りとフーカー(船上から空気が送られてくるヘルメットを装着しての潜水)に別れて次々と飛び込み、水深20mほどの海底で網を定着させたり、魚が刺さり過ぎて網が倒れないように調整したり、目まぐるしく動き回ります。約20人がフル回転で働き、約10分で網の設置完了。次は全員が船上に上がって網に刺さったタカベごと、よいしょーっ、よいしょーっと網を人力で引き上げます。全員が自分の持ち場で八面六臂の働きを見せ、船上に力がみなぎり渡ります。

皆がやるっていう限り、続けるよ

神津島のタカベ漁は、かつては「建切網漁」とよばれる、もっと大がかりな伝統漁法でした。参加する漁師は50~60人。島に3つあった網組がそれぞれ競い合ったそうです。「だけどそんだけの人数が揃わなくなってきちゃったわけさ」と石田さん。そこで神津島のタカベ漁を守るため、伝統の漁法と刺し網を組み合わせた現在の方法を取り入れたのが5~6年前のこと。「これなら少人数でできるし、潜水の負担も少なくなった」といいます。現在は3つの網組が協働する「三協網組」として、この集団漁法で海に出ています。「いつまでやるかって? 皆がやるっていう限り続けるよ」と石田さんは笑いながらいいます。太古から続く海の民の力強い息吹を感じる漁法と、目を見張る漁師たちの面魂! 「三協網組」、実にあっぱれな男ぶりです。