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THE 東京仕事人

農業編2017/11/15 UP

凍てつく季節を色と香りで彩る香りシクラメン 中垣久治さん

“香りシクラメン”ってどんな花?

Profile:シクラメン農家

中垣久治さん

クリスマスが近づくと、生花店の店頭を埋め尽くすのがシクラメン。季語にも加わり、いつの頃からか冬の風物詩になりました。昭和世代ならこの花の名を聞いて思い起こされるのは、昭和50年(1975)のヒット曲『シクラメンのかほり』ではないでしょうか。幼い頃、テレビから流れるこの曲を耳にしながら家のシクラメンに鼻を近づけ、「匂いしないなあ……」と不思議に思ったものです。実際、シクラメンの多くは香らないのです。では“香りシクラメン”とは? 都内でただ一軒、東京都オリジナルの香りシクラメンを栽培する中垣園芸を訪ねました。

ヒット曲から生まれた新種

中垣園芸があるのは瑞穂町の岩倉街道沿い。花き栽培農家が立ち並び、通称〝シクラメン街道″と呼ばれています。ビニールハウスの中は出荷を間近にしたシクラメンでいっぱいで、目の覚めるような鮮やかさです。「うちでは5000~6000鉢栽培しています。その内、香りシクラメンは300鉢。ありがたいことに毎年完売します。」中垣さんに誘われて香りシクラメンの置かれた方に歩を進めると、優雅で印象的な芳香が風に乗って運ばれてきました。聞けば、原種のシクラメンには香りがあったけれど、見た目を重視した改良の過程で、香りは失われていってしまったそうです。「ところが、あのヒット曲をきっかけに、『香りのあるシクラメンを』という要望が高まったんですね。東京では80年代後半から立川の東京都農業試験場(現・東京都農林総合研究センター)で開発が始まりました。」中垣さんがシクラメンの栽培を始めたのも、やはりヒット曲と歩調を合わせた70年代中盤。「最初の仲間は8人。花栽培の本場・愛知県に視察に行くなど、ほんとに手さぐりで。」不安を抱えながらも、温室でシクラメンを育て始めてから2~3年後、「ぽつり、ぽつりとお客さんが来てくださるようになったんです。いやあ、うれしかったなあ。」次第に新聞に取り上げられたり、お客様からお礼の手紙や写真が届いたりするようになり、確実な手ごたえが感じられるようになったそうです。その後、農林総合研究センターから完成した香りシクラメンの栽培をしないかと声がかかり、取り組んだのが2005年。「研究員さんが一所懸命に完成させたものだからね、温室の最も目立つところに置いているんです。」栽培している香りシクラメンの品種は、「はる香ミディ」。今やこの花を目当てに遠方からもお客さんが訪れるほどで、中垣園芸のシンボル的な存在です。当時を知る元東京都農林総合研究センターの職員も「中垣さんのお心が伝わるのか、当初より良い品種に育ってくれているようです」と言います。

人とのふれあいで花の命を手渡す

通販全盛の現代ですが、中垣さんは「やはり直接見てもらって、手渡しで届けたい」と言います。真冬に種を蒔き、春と夏に移植を繰り返し、目をかけ手をかけ育み、やっと成人させた我が子のような花々。その旅立ちを、長持ちさせる秘訣などを一言二言添えて、見送ります。私も2鉢求めました。「風通しが大事。扉を開けるたびに空気が通る玄関などに置くといいですよ。」この冬は、疲れて帰宅しても爽やかな香りが出迎えてくれ、寒い季節を乗り切るための、心強い応援団を得た思いです。

香りシクラメンが購入できるのはこちらです

中垣園芸
(なかがきえんげい)

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シクラメンについてはこちらです

東京の花き

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