歴史ある江戸川の小松菜を守る 門倉周史さん

先祖が残したありがたい家宝、土

小松菜は江戸川区発祥の野菜として知られています。この地で6代続く農家の門倉周史さんを訪ねました。
「残っている記録からすると6代目なんですけどね、本当はもっと前から先祖は小松菜を作っていたのかも知れません。ありがたいと思うのは、この土を残してくれたこと。海が近いからミネラルを含み、水はけがよくて、しかもある程度は水持ちがいい。除草剤は使わず雑草は手作業で抜いています。」
門倉農園では土壌消毒はしないと言います。消毒すれば土に含まれている有用な微生物まで死んでしまうから。「人間だって体中を消毒してサプリメントだけ摂取していればいいってわけじゃないでしょ。ちゃんと食事をとらなきゃね。」と言って門倉さんは笑みを浮かべました。おかげで門倉農園の小松菜はえぐみや苦みが少なく、サラダで食べられる小松菜として知られています。

農園の名前が入った小松菜へのプライド

門倉さんは5代目である父を「すごい人」と言います。5代目は神田にあった市場で最年少で最高値をとっていた小松菜農家として名の知れた人物です。
「小学校に上がる前から将来の夢を聞かれると“小松菜を作る人”と答えていました。幼い頃から「すごい人」である父や祖父の仕事ぶりを目にしていた彼は、その姿に憧れていたのでしょう。大学生のときにはアルバイトで手伝い、卒業してからは農園の仕事に専念しました。「俺もいつか1番を獲りたい」という気持ちを抱いて。
以降、父の教えを守るとともに自分なりの工夫も加えてきました。小松菜は冬菜とも呼ばれるように旬は基本的に冬場です。しかし門倉農園では1年を通して出荷しています。ですが都内の有名デパートや高級スーパーなどに卸す、農園の名前が明記された小松菜が、夏場だからといって冬と比べて細いとか、味もやや落ちるなどということは許されません。

農園の名前が入った小松菜へのプライド

僕はもっとおいしい小松菜をつくりたい

「冬場と同じ品質の小松菜を年間通して出荷するために、水の管理や種をまく間隔とか、いろいろ試行錯誤しましたよ。見た目の美しさにもこだわりました。」門倉さんが農園でさりげなく小松菜を抜き、根を切って、余分な葉を取り除いてパッケージしてくれました。水洗いなしでも確かに泥などは付いておらず、みずみずしさでいっぱいです。
門倉さんは仕事を始めて約10年ですが、江戸川区の小松菜農家ではまだ最若手。最後に、歴史ある小松菜をこの先どうやって残したらよいか尋ねました。「おかげ様で僕の小松菜は江戸川区の品評会で4年連続特選を受賞しました。僕はもっとおいしい小松菜をつくりたい。そして僕自身がもっと有名になれば、若い人に刺激を与えられると思っています。」門倉さんの小松菜に対する情熱を大いに感じました。

僕はもっとおいしい小松菜をつくりたい

門倉農園6代目

門倉 周史さん/KADOKURA Shuji

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