東京の農業を学ぶ

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東京都の農地面積は、2015年には7130haで、東京都の総面積の約3.3%を占めています。ここでは東京の農業の特徴から、都市農業・都市農地のはたらき、安全・安心な農産物の認証制度など、農業により親しんでいただけるよう、「東京の農業」を分かりやすくご紹介します。

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東京の農業とは?

東京の農業は、都市地域、山間地域、島しょ地域(東京の島々)において、それぞれ地域の特性を生かして、新鮮な農産物を供給しています。東京の農業の特徴やそこで生産される農産物、東京オリジナルの農産物をご紹介します。

東京の農業の特徴

東京の農業の特徴

  • 東京の農地面積の約6割(4051ha)が市街化区域内にあります。
  • 大消費地の中で生産された農産物の8割が共同直売所や農家の庭先直売等で販売されています。
  • 山間地域や島しょ地域では、自然環境にあった農業が営まれています。

地域ごとの特徴

  • 都市地域

    都市地域

    市街化区域内では、都市化の進展により農地の細分化や点在化が進んでいますが、農地の多くは生産緑地地区に指定されています。また、市街化調整区域には、農業振興地域をはじめとする比較的まとまった農地が広がっています。都市地域では、コマツナやトマト、スイートコーンなど多様な品目が生産されています。

    生産されている主な農産物

    23区/コマツナ キャベツ ブロッコリー
    エダマメ 鉢花など
    北多摩/ホウレンソウ ニンジン ブロッコリー ウド ナシ キウイ 鉢花 緑化木など
    南多摩/生乳 トマト ダイコン ホウレンソウ ナシ ブドウ 鉢花など
    西多摩/スイートコーン トマト ダイコン クリ 茶 生乳 鉢花など

  • 山間地域

    山間地域

    東京の西部の山間地域では、林間や斜面が多く、農地は小規模なかたちで散在しています。多様な環境の中で、地域の特色を生かした農業が営まれています。

    生産されている主な農産物

    ワサビ ジャガイモ ウメなど

  • 島しょ地域

    島しょ地域

    海洋性の温暖な気候を生かした農業が営まれ、島々の風土に根ざした特色ある農産物が生産されています。

    生産されている主な農産物

    アシタバ サヤエンドウ サトイモ 切葉 切り花 パッションフルーツ レモンなど

東京オリジナルの農産物

公益財団法人東京都農林水産振興財団 東京都農林総合研究センターなどで、開発や改良された、東京オリジナルの農産物をご紹介します。

  • 東京ゴールド

    東京ゴールド

    東京生まれのキウイフルーツ。果肉は黄色で甘みが強く、ほどよい酸味です。

  • 都香(みやか)

    都香(みやか)

    生育や根株の太りがよく、芽数が多い生育旺盛なウド。真っ白で柔らかいのが特徴です。

  • 東京紅(とうきょうべに)

    東京紅(とうきょうべに)

    収穫期は10月下旬で果実が大きく、橙色で色鮮やかな甘柿です。

  • さわやかミディ・おだや香・はる香ミディ

    さわやかミディ・おだや香・はる香ミディ

    香りがよく、生育旺盛なシクラメンです。

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都市農業・都市農地のはたらきとは?

東京の農地面積の約6割が市街化区域内にあり、都民に潤いを与え、良好な生活環境を形成するなどさまざまな機能を有しています。そこで、私たちのくらしにも密接に関わってくる、都市農業・都市農地のはたらきについて、ご紹介します。

農産物の生産

農産物の生産

第一に、農産物の生産という重要なはたらきがあります。消費地に近いという利点を生かして、消費者に新鮮で安全な農産物を供給しています。直売所や農家の直接販売のほか、レストランのシェフと連携した契約栽培なども行い、こだわりのある農産物を消費者のもとへ届けています。また、都内産の食材を使った料理が食べられる飲食店には「とうきょう特産食材使用店」、東京の島々の食材を使った料理が食べられる飲食店には「東京の島じまん食材使用店」の認証制度を設置するなど、地産地消の取り組みが進んでいます。

環境の保全

環境の保全

農業の生産活動によって、東京にも水田や畑などの日本の原風景が維持・保全されています。これらの美しい田園風景は私たちの心を和ませてくれるだけではありません。緑は水を吸収し、地面や空気の熱を奪って蒸散することによって、気温上昇を緩和するという大切な役割を果たしています。農地や農業用水路を守ることは、ヒートアイランドの抑止にもつながり、私たちの快適な生活を維持するためにもとても重要です。

防災機能

防災機能

災害時、住民の一時避難や、仮設住宅の建設などができる農地を「防災協力農地」といいます。農作物や井戸水が手に入りやすいという利点もあり、避難場所として機能することも期待されています。
また、都市農地は火災の延焼防止など、さまざまな防災機能を備えています。水田や畑で雨を一時的にためて、ゲリラ豪雨等の洪水を防止する機能もあります。

土とふれあう癒し効果

土とふれあう癒し効果

市民農園や農業体験農園等による農作物の生産・収穫体験などの農作業を行うことで、心身ともにリフレッシュさせることができます。また、農園利用者や農家との交流を通じて、コミュニケーションの形成など期待できます。

文化の伝承

文化の伝承

農作物が育つ水田や畑で農作業に励む人々の姿は、私たちの心を和ませるとともに季節の移ろいを感じさせてくれるもの。また、その土地で暮らす人々の歴史や文化を継承する大切な景観資源です。また、農業を営むコミュニティー内(農村)では、長い歴史の中で自然の恵みに感謝し、天災を避ける祈りを込めて行われる芸能や祭りなどの文化が守り伝えられています。

生き物のすみか

生き物のすみか

水田や農業用水路、ため池には、ドジョウやカエルなど、さまざまな生き物が生息しています。このほかにも珍しい植物や生物が見られます。

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安全・安心な農業

GAP認証制度

GAP(ギャップ)とは、「Good(良い)Agricultural(農業)をPractice(実践)する」の略ですが、一般的には、「農業生産工程管理」と呼ばれ、農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための取組をいいます。
これらの取組を評価する仕組みとして、民間団体による第三者認証を備えたGAP(例えば、「GLOBALG.A.P.」「JGAP」など)や、都道府県が認証するGAP(例えば、「東京都GAP」)があります。
東京都では、「東京農業振興プラン」に基づき、持続可能な農業生産と地産地消を推進するため、民間認証および東京都GAPを推進しています。

東京都エコ農産物認証制度

東京都は安全・安心な農産物を消費者に届け、環境に配慮した農業を推進するために、「東京都エコ農産物認証制度」を普及しています。認証された農産物には、認証マークが表示されており、消費者に環境に配慮して生産された農産物であることをお知らせしています。

東京都エコ農産物認証制度

東京都エコ農産物とは、土づくりの技術や化学合成農薬と化学肥料削減の技術を導入し、都の慣行使用基準* から化学合成農薬と化学肥料を削減して作られる農産物のことです。
*慣行使用基準とは、都内の通常の栽培における化学合成農薬と化学肥料の使用実態を調査して決めたものです。

ココがポイント

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農業について学べる教育機関

農業を学べる教育機関をご紹介します。

東京農業アカデミー八王子研修農場

東京農業の新たな担い手を育成するため、都内で就農を目指す方を対象とした研修施設です。
主な研修場所である八王子研修農場は約20,000平方メートル。
2年間のカリキュラムの中で、農業全般に関わる座学研修から、就農に結び付く実践的な実習研修を行います。

外部リンク:https://www.nogyoacademy.tokyo/(主催:東京都農林水産振興財団)

農業関連の学科がある都立高校

東京都内には、農業関連の学科がある高等学校が島しょ地域を含め8校あり、各校が特色ある取組を行っています。
近年では、全国的に農業高校の授業の一環としてGAPを学んでいますが、東京都では全8校が実際にJGAP認証を取得するなど、先進的な取組として注目を集めています。

都立高校の紹介とGAPを中心とした取組状況

東京都立園芸高等学校

東京都立園芸高等学校

世田谷区にある都立園芸高校は110年以上にわたり我が国の農業・園芸教育の中心を担ってきた学校です。「勤勉勤労」を校是とし、前向きで労をいとわない若者、園芸・食品・動物の知識技術で将来活躍する産業人の育成を目指しています。正門を入ると100m続くイチョウ並木をはじめ、東京ドーム約2.3個分の校地は緑豊かで、広大な都市公園と見間違うようなキャンパスです。
JGAPと東京都GAPの認証を取得したトマトの管理は園芸科2年生の必修科目となっています。GAPに含まれる安全・安心な栽培や労働安全(熱中症対策など)に気を配りながら、栽培管理、収穫等の作業を学んでいます。

東京都立農芸高等学校

東京都立農芸高等学校

杉並区にある都立農芸高校は、明治33年(1900年)に創立された東京都で一番歴史のある農業高校です。園芸科学科・食品科学科・緑地環境科の3学科が設置され、時代に応じた農業とその関連産業の技術者を育成しています。21世紀の産業社会で活躍する人材の育成を目指し、「環境教育実践宣言校」をスローガンに様々な場面で「環境教育」を推進しています。
本校では、園芸科学科が中心となって東京都GAPおよびJGAP認証を取得しました。GAPの基準に基づき安全で安心できる野菜や果物の栽培を学んでいます。特に、未来にわたって持続可能な農業を続けられるように、GAPで求められる省エネや校内の清掃活動など、環境に配慮したクリーンな農場運営を目指しています。

東京都立農産高等学校

東京都立農産高等学校

葛飾区にある都立農産高校は、園芸デザイン科、食品科を設置しています。園芸デザイン科では、野菜や草花の栽培、造園技術などを身に付けることができます。食品科では、実験や実習を通じて食品の製造や流通分野で活躍できる能力と態度を育てます。「食と緑と農を創造する学校」を目指し、それぞれの学科が充実したカリキュラムで教育活動を行っています。
本校では、園芸デザイン科が授業の一環として様々な野菜を栽培しており、多品目でJGAPおよび東京都GAPの認証を取得しました。「GAPをみんなでやる」という方針のもと、生徒からは衛生面でのリスクについてするどい指摘があるなど、生徒主体で作業用の身なりや整理整頓などのルールを作成し、学びの中で実践しています。

東京都立農業高等学校

東京都立農業高等学校

府中市にある都立農業高校は、農業及び家庭に関する学習を行う専門高校です。人間生活に不可欠な「衣・食・住」の専門的な知識・技術を身に付けます。創立110年の歴史と伝統を紡ぎ、現在は都市園芸科、食品科学科、緑地計画科、服飾科、食物科の5学科を設置しています。安全安心な食糧生産を行い、週3回採りたての野菜、果樹などを校内で販売しています。
本校は、都立高校の中で最初にGAP認証を取得したことで、大きな注目を集めました。取組当初から生徒同士で役割分担を決めたり、定期的に清掃を行ったり、GAPに必要な仕組みやルールづくりを生徒主体で行ったりしてきました。特に梨栽培では、手間のかかる袋掛けを行ったり、圃場全体を防虫・防鳥ネットで覆ったりするなどの工夫をして低農薬を心がけています。学校内でのGAPの取組は、先輩から後輩へと引き継がれており、GAPの教育ツールとしての効果も期待されています。

東京都立瑞穂農芸高等学校

東京都立瑞穂農芸高等学校

都立瑞穂農芸高校は、西多摩地域唯一の農業科(園芸科学科、畜産科学科、食品科)と家庭科(生活デザイン科)の専門的な知識・技術を学べる専門高校です。『生命(いのち)に学び夢を叶える~Learn about life and realize your dreams~』を合言葉に、「わかる」「できる」「つかう」のスリーステップで学習を進め、次代の産業や文化を創ることができる知識と技術の充実、社会の一員として誠実で何事にも一生懸命に取り組む生徒を育成しています。
GAPに関しては、園芸科学科の実習で扱うメロン栽培で取り組んでいます。栽培温室に入る際には、必ず手洗いや着帽確認を行うなど、生徒も教職員も衛生面に気を付けています。JGAPおよび東京都GAPの認証を受けたメロンは6月、7月頃の校内販売等で地域の皆様に提供しています。

東京都立大島高等学校

東京都立大島高等学校

都立大島高校は、伊豆諸島の伊豆大島にある学校です。普通科・農林科・家政科が設置されており、生徒一人一人の個性を活かしながら、地域に密着した特色ある教育活動を展開しています。特に伊豆大島の象徴である「椿」の様々な品種を集めた校内の椿園は、2016年に教育機関として世界初の「国際優秀つばき園」に認定されました。地域住民や観光客に向けて生徒が椿のガイドを実施するなど、観光資源のひとつになっています。
本校の農林科には野菜、草花、畜産、森林の専門分野があり、校内で野菜を栽培したり、鶏や羊などを飼育しています。GAPには、青果物と畜産で取り組んでいます。特に養鶏では3年生の生徒が2019年度の課題研究として作業マニュアルや記録用紙の作成、掲示物設置などを実施し、全国の教育機関として初めて「採卵鶏・鶏卵」のJGAP認証を取得しました。アニマルウェルフェアの考え方などGAPにおける必要事項を3年生から後輩へと引継ぎ、継続的にGAPによる飼育管理を学んでいます。

東京都立三宅高等学校

東京都立三宅高等学校

都立三宅高校は東京港からおよそ180km離れた海上に浮かぶ三宅島にある唯一の高等学校です。普通科と併合科(農業科と家政科の混合クラス)があり、農業科では草花、野菜、食品製造の3分野の専門的な知識・技術を学べる学校です。少人数ながら離島の豊かな自然環境の下、広い農場を生かした教育活動を行っています。
本校ではサトイモやお茶などの品目でJGAP認証を取得しました。サトイモの地方品種である赤芽イモは、ホクホクした食感で島民の需要も多く、高校でも毎年栽培しています。また、2000年の噴火災害以降他の茶畑がなかなか再開できない中、本校の教職員と生徒の熱意で茶樹を育て、収穫、製茶加工まで校内で一貫して行っています。GAP認証審査には生徒も参加し、農業の規範や経営の手法などを学んでいます。

東京都立八丈高等学校

東京都立八丈高等学校

都立八丈高校は、伊豆諸島の八丈島にあります。八丈島は東京港から約287㎞、豊かな自然と大海原に囲まれた離島で、花卉観葉植物が島の基盤産業のひとつです。本校園芸科では栽培基礎、バイオテクノロジー、園芸装飾など専門的な知識や技術を身に付けます。また、一人の生徒が草花、野菜、食品製造の3つの分野をすべて学べるのも本校ならではの特徴です。
高温多湿で油断すると病害虫が発生しやすい八丈島ですが、GAPでは必須項目であるIPM(総合的病害虫・雑草管理)の実践に力を入れて学んでいます。とても甘いと評判の完熟ミニトマトや、八丈島特産のオクラなどでJGAP認証を受けています。

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農業 Q&A

東京の農産物はどこで買えるのか、東京の農産算出額はいくらかなど、東京の農業に関する5つの素朴な疑問に答えます。

東京の農産物はどこで買えるの?

東京の農産物はどこで買えるの?

東京都内で栽培された採れたての農産物はJAの直売所や農家の直接販売等で購入することができます。人気の農産物や生産量が少ないものは閉店前に売り切れてしまうこともあるのでご注意ください。

東京の農業産出額っていくらくらいなの?

東京の農業産出額っていくらくらいなの?

東京都の農業産出額は306億円(2015年)です。グラフの通り、構成比は野菜が約6割で、コマツナ、ホウレンソウ、トマトが上位3位を占めます。続いて、花きでは島しょ地域の切り花等、果実ではナシ等の品目が産出されています。

出典:農林水産省都道府県別農業産出額及び生産農業所得より

農業用水って東京にもあるの?

農業用水って東京にもあるの?

農業用水は主に水田に利用されていますが、「都市農業・都市農地のはたらきとは?」で環境の保全や防災機能としても役立っていることにふれました。東京都内の代表的な農業用水としては、昭和用水(昭島市)、日野用水(日野市)府中用水(国立市・府中市)、大丸用水(稲城市・川崎市)があり、いずれも多摩川本流から取水しています。その歴史は古く、室町や江戸時代から利用されていた記録が残っています。水田をはじめとした 農地がなくなれば、農業用水もその役割を終え、環境の保全や防災といった多面的機能も 失われてしまいます。そのため、農地とともに農業用水も地域の貴重な共有財産として、 後世に引き継がれるよう保全に努めています。

東京で農業を体験することってできるの?

東京で農業を体験することってできるの?

都内には、野菜や果物の収穫体験や、乳牛とのふれあい体験などを気軽に楽しむことできる農場や牧場があります。

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