-
TOKYO GROWNのページでも、度々ご紹介している“江戸東京野菜”。
江戸時代から昭和にかけて、東京で作られてきた伝統的な野菜です。東京の食を支えてきた食材たちは、今では希少なものとなっていますが、普及活動のおかげで少しずつ触れる機会も増えてきました。
そこで江戸東京野菜を使ったことのないシェフにお願いして、江戸東京野菜の新たな魅力を発見する新企画!
今回は、代官山の魚介フレンチ「abysse(アビス)」の目黒 浩太郎シェフに江戸東京野菜をお届けして、シェフの視点で江戸東京野菜の魅力を掘り起こしていただきましょう。
-
ル プティニース パセダ 、カンテサンスなど、3つ星レストランでの修行を経て、2015年 南青山に abysse をオープンした、魚介フレンチのスペシャリストです。2019年に移転した代官山の店舗で、初の江戸東京野菜料理に挑みます。
おいねのつる芋、谷中ショウガ、寺島ナス、滝野川ゴボウ、内藤トウガラシ、内藤かぼちゃ、足立のつまもの(ツル菜、むらめ)などなど、普段目にするものとは色や形が違ったり、見ていて楽しくなるラインナップ!野菜と一緒に、奥多摩やまめも並んでいます。ファーストインプレッションはいかがですか?
「見たことのないような形のものがあって面白いですね。かぼちゃとか、見るからにいつも使っているものと違う。ツル菜やむらめなどは使いやすそうですね。川魚も、普段はあまり使っていないので興味深いです。脂がしっかりのっていていい感じですね。滝野川ゴボウも、味が濃そうな印象で気になります」(目黒シェフ)。
普段から、魚と同じくらい野菜選びにもこだわっているという目黒シェフ。「料理を仕上げるのに大切な要素ですからね。一番大事にしているのは季節感。野菜は季節を表現しやすいし、常に旬のものを使いたいと思っています」。
いろいろな畑を訪れた経験はあるものの、ゴボウの畑は初めて見るそう。まずは、掘り起こすその深さに驚きます。「ゴボウを掘る時は、1m以上の深さを掘りますね。出荷の袋が90㎝なんですが、滝野川ゴボウはそれをはみ出る程の長さになります」と話すのは、今回滝野川ゴボウの畑を見学させてくれた岸野農園の岸野 昌さん。実際に、掘る作業を見せてくれました。「スコップと、ゴボウ掘り棒を使って掘り出していきます。細いものは簡単にするっと抜けるのですが、太いものは丁寧に脇芽を切りながら、折らないように慎重に掘り出します。春に種を蒔いて、他の土地だと10月くらいから収穫なんですけど、うちは8月には収穫出来るくらいになる。生育が少し早いんです。自分では、気候と土質によって育成が早くなるんじゃないかと感じています。下の方が赤土なんですが、赤土は雑菌もないので、ゴボウの肌がきれいな気がしますね。赤土は、肥料を吸いやすく、保水力もある。そういう土の力も、ゴボウの質をよくしてくれている気がするんです」(岸野さん)。
「ヒントも得られるし、インスピレーションも広がりますね。ゴボウを収穫しているところは初めて見たんですけど、土が柔らかいんだなあと思いました。また岸野さんから、採れたてのゴボウの香りが違うと伺って実際に香りを嗅がせてもらったんです。そういう経験をすると、この香りを生かしたメニューにしたいな、といった発想が浮かびますね。産地を見る前からすでに、こういうメニューにしようというイメージは出来ていたんですが、そのイメージ通りに自分が思ったものが作れそうだし、さらにそこにプラスアルファできるものもありそうな気がします」(目黒シェフ)。
生産者の岸野さんによると、滝野川ゴボウの特徴のひとつは香り。「いろいろな表現ができると思いますが、まさに“土の香り”だと思うんです。日本人だと、松茸の香りに近いというとイメージしやすいでしょうか? 本当にいい香りです。一般的なゴボウよりも、すこし柔らかめではありますが歯ごたえもあります。普通ならきんぴらにするのがおすすめなんですが、今回は、シェフが新しいメニューにしてくれるということで、私もとても楽しみにしています」(岸野さん)。
こうして実際に産地を見て、生産者の話を聞いて、シェフがキーワードとして選んだのは“土”。
「土が重要っていうことを改めて強く感じました。そのポイントを料理にも面白く使えたらいいですね。ゴボウって、よく土がついてるじゃないですか。買ってくると、実際に土の香りがする。そのイメージを活かして、土のスープにしたいなと思います」(目黒シェフ)。
土のスープ!? 一体どんなメニューが出来上がるのでしょうか。
そこでシェフが取り出したのは、自家製の海藻バター。このバターでゴボウをソテーして、海のエッセンスを加えるのだそうです。「そのままだとゴボウがまだちょっと固いので、ソテーする前に油で煮ます。火を入れて柔らかくしてから、魚介の要素を足していきます。少量の油で済むように、油とゴボウを真空パックに入れたものを湯せんにかけるんです。今回は、ここにホワイトバルサミコ酢も加えます。ゴボウって酢水に漬けて変色を止めたりしますが、その効果も狙いつつ、甘みと酸味のバランスをとっていきます」。
1時間ほど熱を加えたゴボウは、ピクルスのような味わいでほどよいシャキシャキの食感に! 断面もきれいな色をキープしています。ゴボウと磯の香りが厨房に広がります。
ここで、シェフが土のイメージをトッピング! 「塩味のヘーゼルナッツのクランプ(細かく砕いたクッキー)です。そこにマリーゴールドの葉を散らします。ゴボウの下にはパセリのマヨネーズ。器の中に畑を再現してみました」。
ゴボウの香りと磯の香りのどちらも感じられるという不思議な世界。皿の上で、畑と海が見事にコラボしています。ゴボウがもちろん主役なんですが、いろいろな味わいや食感が味わえてビックリ。しかも、ゴボウがこんなにおしゃれになるなんてビックリです。
「メニュー名は特にないんですが……あえて呼ぶなら“海藻のバターでソテーした滝野川ゴボウ。それと塩味のヘーゼルナッツのクランプ”でしょうか(笑)。白ワインに合うと思いますよ。今回は、江戸東京野菜を初めて使って、新しい発見がありました。生産者の方とも触れ合えてよい経験もできたし。今後も、自分の引き出しを増やしていろいろな料理にチャレンジしていきたいです。滝野川ゴボウも、今後は店でも使っていきたいですね」。
-
今回のTokyo one day trip
江戸東京野菜でネオグルメ!
魚介フレンチスペシャリスト×滝野川ゴボウゴボウはもともと好きだったんですけど、こういう食べ方は初めてでした!新しいゴボウの魅力発見です。ハーブっぽい爽やかさもあって、いろいろな味わいが融合して口の中に広がります。食べる部分によっても、また違う味わいが感じられて、一皿なのに楽しみがたくさんある感じ。江戸東京野菜って、まだまだ食べる機会も少ないですが、こうやってシェフがいろいろな新たな魅力を引き出してくれると、もっといろいろ食べたくなるし、江戸東京野菜を知りたくなりますね!
-
"東京味わいフェスタ" 出店のお店を巡る
-
-
"東京味わいフェスタ2018" TASTE OF TOKYO
-
-
東京の森林を感じる旅 - 多摩産材編 -
-
-
伊豆大島編
伊豆大島の魅力体験(前編)
-
-
伊豆大島編
伊豆大島の魅力体験(後編)
-
-
小笠原諸島・父島編
東京の南の島「小笠原諸島・父島」体験(前編)
-
-
小笠原諸島・父島編
東京の南の島「小笠原諸島・父島」体験(中編)
-
-
小笠原諸島・父島編
東京の南の島「小笠原諸島・父島」体験(後編)
-
-
小笠原諸島・母島編
東京の秘境「小笠原諸島・母島」体験
-
-
奥多摩編
奥多摩の自然を“体感”する旅
-
-
東京の南国「伊豆諸島・八丈島」体験 前編
-
-
東京の南国「伊豆諸島・八丈島」体験 後編
-
-
伊豆諸島 三宅島編
火山と釣りの島「伊豆諸島・三宅島」体験
-
-
江戸川区編
小松菜と金魚の街をめぐる旅
-
-
府中&調布編
ラグビーの街!府中&調布散策
-
-
練馬編
練馬の恵みを食べ歩く旅
-
-
木材の街
木場~新木場周辺散策
-
-
浅草・両国の下町エリア
江戸東京を楽しむ和の旅
-
-
日本の台所
豊洲と東京の海の恵み
-
-
新宿近辺を散策
女子の休日 with 東京の農産物
-
-
特別編
東京食材の取り寄せで東京オムレツ
-
-
多摩エリア
手ぶらで手軽に釣り体験
-
-
abysse×滝野川ゴボウ
魚介フレンチのシェフと江戸東京野菜の出合いから生まれる世界
-
-
東京湾
東京湾で釣りをしよう
-
-
東京の魚介とワインの織り成すハーモニーはシェフにとっても新発見
-
-
都会と自然が交差する街「立川市」を散策
-
-
新鮮で美味しい東京野菜!
-
-
未知なる野菜を!
-
-
コンパクトに楽しさつながる「瑞穂町」を散策
-
-
LOVERSファームの収穫!
野菜ブーケづくりにも挑戦!!
-
-
脂身の甘みがあふれる!
中華のシェフがにぎる東京豚の特製焼売
-