スポーツ食育とは?

公認スポーツ栄養士の金子香織です。
この連載では、子どもが主役の「スポーツ食育」をテーマに、さまざまなコラムやレシピをお届けしています。
今回は、「スポーツ食育」とは何か、改めてその基本を解説します。

「スポーツ食育」とは、運動やスポーツをする子どもたちが、栄養バランスの取れた食事を楽しみながら、健やかな成長と競技力の向上を目指すための食育活動です。
強度の高いトレーニングに励む子どもから、学校の体育や遊びで体を動かす子どもまで、幅広く対象としています。
成長期の子どもたちは、身長や体重が増え、内臓機能も発達するなど、体が急速に成長する時期です。
このため、体が大きく成長するには多くのエネルギーと十分な栄養素が欠かせません。
この時期に適切な栄養を摂ることで、将来の健康リスクを減らし、運動やスポーツ活動で最高のパフォーマンスを発揮できる基盤が整います。
「スポーツ食育」では、『栄養』『運動』『休養』の三本柱が重要なポイントとなります。

イラスト:筆者作成

1. 栄養(食事)

成長や体を動かすためには、炭水化物(エネルギー源)、たんぱく質(体の組織をつくる栄養素)、ビタミンやミネラル(体の調子を整える栄養素)をバランスよく摂ることが大切です。
これらの栄養素をしっかりと摂取するためには、「主食+主菜+副菜+果物+乳製品」を揃えることがポイントです。
このような食事を意識することで、栄養バランスが整い、健康的な成長やスポーツでのパフォーマンス向上が期待できます。

2. 運動(トレーニング)

成長期の子どもがスポーツを行う際には、適切な運動・休養・栄養補給のバランスがとても重要です。
運動量が増えると、エネルギーや栄養素の必要量も増えますが、過度なトレーニングには注意が必要です。
子ども時代にしっかり体を動かすことで、身体機能が発達し、成長が促され、運動能力も向上します。
学校での体育の授業に加え、休み時間や放課後にも積極的に体を動かすと良いでしょう。

3. 休養(睡眠)

運動や栄養とともに、休養(睡眠)も十分にとることが大切です。
学校やスポーツ活動、習い事などで忙しい子どもたちですが、スポーツの後は体を休め、回復させることが重要です。
適切な睡眠や休養が不足すると、体の修復が不十分になり、体調を崩したり成長の妨げになることがあります。

イラスト:筆者作成

上のイラストは、ある時期のラグビー日本代表チームの練習日スケジュール例です。
高強度の運動をただ長時間行うだけでなく、トレーニング後に適切な食事や休養を取り入れるなど、栄養・運動・休養のサイクルがしっかりと組み込まれています。
このようにバランスの取れたスケジュールの継続は、日本のスポーツ界でも研究・実践され、多くの優れた選手やチームが活躍しています。
これは、成長期の子どもにとってスポーツ食育の重要性を示しています。
子どもたちのスケジュールに合わせて、運動・栄養・休養を整えることで、競技力向上だけでなく、健康的な成長をサポートする役割がスポーツ食育にはあるのです。

スポーツ食育に取り組む理由

運動やスポーツを通じて、子どもたちは競技のスキル向上だけでなく、健康的な生活習慣も身につけることができます。
運動・栄養・休養の正しい知識を得ることで、「楽しく動き、おいしく食べ、ぐっすり眠る」生活が実現し、体力が向上し、健全な成長を促し、けがのリスクも低減します。
また、食事を自分で整える力が身につくことで、将来の自立した生活にもつながります。
さらに、スポーツ食育を通じて、食べ物と体の関係を理解することで、リラックスや心理的安定、コミュニケーションの手段としての食事の重要性も学ぶことができます。
食事は単なる栄養補給ではなく、心のケアや人とのつながりを深める役割も果たしているのです。

作りやすさも重視したレシピ提案

近年、子どもたちの欠食率、特に朝食を食べない割合が増えていることが課題となっています。
この朝食の欠食率は、保護者の欠食とも関連があるとされ、子どもたちがしっかり食べるためには、保護者自身も朝食を欠かさず、できれば一緒に食事をすることが大切です。
本特集でご紹介するレシピでは、保護者が無理なく続けられるように、作りやすさも重視しています。
忙しい日常の中でも、栄養バランスを保ちつつ、簡単に食べられるメニューを意識しています。
例えば、炊き込みご飯やワンプレート料理など、短時間で準備でき、さまざまな食材をまとめて摂取できるレシピをご提案し、忙しい家庭でも実践しやすくしています。

このように、スポーツ食育は子どもたちの健全な成長や身体・心の発達を支えるために重要な取り組みです。
今後の記事では、こうした観点を取り入れたレシピを続々とご紹介していきますので、ぜひお楽しみにお待ちください!

次回のテーマは、「成長期の骨作り」です。レシピは、「鮭とキノコの炊きこみごはん」をご紹介します。

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

金子 香織/KAORI KANEKO

Kakara Kai 代表
管理栄養士/公認スポーツ栄養士/修士(学術)
※公認スポーツ栄養士とは、公益社団法人 日本栄養士会および公益財団法人 日本スポーツ協会の共同認定による資格です。
https://www.dietitian.or.jp/career/specialcertifications/sports/

大学病院管理栄養士として勤務した後、スポーツ栄養分野へ転向。
スポーツ栄養士としてラグビー日本代表、ゴルフナショナルチームを始めとしたトップアスリート、社会人、大学生、ジュニア選手、女性アスリートなどの、各ライフステージにおけるスポーツ現場での食育活動に携わっている。
特技の手話を活かしてデフ(聴覚障がい)アスリートサポートも行う。
高校2年生と小学2年生の、2児の母。

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子どもが主役の
 『スポーツ食育』

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