10月26日(土)、「東京味わいフェスタ2024(TASTE of TOKYO)」有楽町会場で、「第53回東京都農業祭」が行われました。
特設ステージでは、江戸東京野菜都内高校生・料理コンテストで入賞した5組の高校生をはじめ、応援に駆け付けた高校生や学校関係者、ご家族などが来場し、最終審査結果の発表および表彰が行われました。
このコンテストは、都内の高等学校および高等専門学校に通う学生、生徒に向けて、江戸東京野菜や東京産農産物の魅力を学び知り味わう機会として、また江戸東京野菜の歴史や味のレガシーを未来につなげ江戸東京野菜の消費拡大に寄与することを目指しております。

~主催者挨拶~ 東京都農業協同組合中央会 代表理事会長の野﨑啓太郎氏

「入賞した高校生の皆さん、おめでとうございます。江戸東京野菜は、約20年前からブランド化に取り組み、未来へつなげていくためにはじめた取り組みの一環として、このコンテストを開催しています。」

続けて、江戸東京野菜に選定されている52種類の中で、今回選ばれた馬込三寸ニンジンについて、長ニンジンを短くする品種改良の努力の賜物であること、またその香りや甘味、さらに葉のほろ苦さなど、個性豊かで特色のあるニンジンであることが紹介されました。
さらに、東京の農業についても触れられました。現在、東京には約6,000haの農地がありますが、毎年ディズニーランドとディズニーシーを合わせた面積に相当する約100ヘクタールの農地が減少している現状があること。そして、農地は農産物の生産だけでなく、景観形成、コミュニティの形成、職能教育、地産地消、環境保全、防災など、都市の暮らしを豊かにする多くの機能を有していることが強調されました。

このコンテストをきっかけに、多くの方々に都市農地について理解を深めていただき、東京の農地や農業、農産物を未来に残していきたいという願いが語られました。

~コンテストの概要と審査過程について~ 審査員長:山田研 氏(辻調理師専門学校 教育研究センター長)

山田審査員長は、
「このコンテストは、21校379チームの参加者に課題食材である“馬込三寸ニンジン”を送付し、動画で学んだのち、実際に触れて、食べてみてからレシピを考案するというプロセスを通じて、江戸東京野菜をしっかりと理解した上でレシピを開発してもらいたい、という思いが込められている点が大きな特徴です。」
と話されました。

また、酷暑の中でニンジンを育ててくださった農家の皆さまや、応募してくれた高校生の皆さまへの感謝の気持ちが語られ、最終審査では、約37倍の競争を勝ち抜いた8チーム18名の参加者が実際に料理を作り、そのレシピ内容をプレゼンテーションする様子も紹介されました。
審査内容については、衛生面や時間の管理、料理の盛り付け、オリジナリティ、そして最も重要な「課題食材を生かしているか」という観点から、5人の審査員が全ての料理を実際に試食して評価を行ったことが説明されました。

いよいよ最終審査の発表です!

【金賞】
『ティロット』
東京都立赤羽北桜高等学校(チーム名:バニーズ)
山内明日風さん・李慧玲さん・石川真那花さん

▪高校生感想
金賞を取ることができ、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました!
▪山田審査員長
パウダー、すりおろし、ジュースといった人参を多彩に使いこなし、プレゼンテーションも映像を使ったり歌や踊りもあり独創的だった点はとてもよかったのですが、名前の由来となったティラミス感が最終的にはなくなってしまっていた点が課題です。
僅差で一位になった点は、来年への課題として心にとめておいてほしいです。

【銀賞】
『馬!馬!にんじんカレーパン! 』
東京女子学院高等学校(チーム名:鳥とみかんと火星人)
吉田 理維菜さん・中村綾香さん・高野 莉子さん

▪高校生感想
夏休みから始まった私たちのカレーパン作りですが、まさかここまで評価され賞をいただけるとは思っていなかったので、本当に嬉しいです。
馬込三寸ニンジンは、その美味しさがしっかり伝わる、かわいらしい形をしたニンジンです。
▪山田審査員長
馬込三寸ニンジンを模したカレーパンは、熱々に仕上げた点が好評で堅実な評価を得ましたが、「ニンジンの存在感がやや薄かった」との指摘もあり、そこがより表現できていれば一位だったのではないか、という意見もありました。


【銅賞】
『たっぷりチーズのキャロットピッツァ』
目黒日本大学高等学校(チーム名:青空)
山下綾菜さん・守山侑花さん

▪高校生感想
このコンテストを通してより料理の関心が深まり、これからも料理の腕を高めて頑張っていきたいです。
▪山田審査員長
土台のチーズがもう少しカリッと仕上がると、さらに良かったのではないでしょうか。
馬込三寸ニンジンの存在感が、最もストレートに伝わってきました。

【特別賞】
『マゴメータ 』
東京都立赤羽北桜高等学校 (チーム名:世界に一つだけの人参)
鈴木萌桜さん・高宮友里さん・上野花さん

▪高校生感想
少し悔しい気持ちもありますが、とても嬉しいです。
緊張しましたが、3人のチームで力を合わせて作ったものが商品化され、味わいフェスタ開催期間中に有楽町会場の特設ブースで販売されています。
お買い求めいただけると嬉しいです!よろしくお願いします。
▪山田審査員長
プレゼンテーションの評価も高く、ニンジンの形や全体のフォルムも素晴らしかったです。ただ、ニンジンの存在感がやや薄かったように感じられましたので、そこを改良されるとさらに良くなるのではないかと思います。

【特別賞】
『にんじんパイ』
東京都立農業高等学校(チーム名:飯尾)
石田妃菜さん・今村夢芽さん・潮和真さん

▪高校生感想
予想外の結果に、とても光栄で本当に嬉しく思っております。次はさらに上を目指して頑張りたいです!
私たちの人参パイも特設ブースで販売されておりますので、ぜひお買い求めください!
▪山田審査員長
自分たちで育てた馬込三寸ニンジンを使って料理したというストーリーは素晴らしく、形もかわいらしかったです。
しかし、ニンジンの存在感がやや薄く感じられた点は、次回への課題としてください。

山田審査員長から総評

300を超える応募作品の中からの選考は非常に難しいものでした。
課題食材である馬込三寸ニンジンを主役にした作品を基準に選び、個性豊かなレシピが揃う中で最終審査に進んだレシピは、高校生らしい自由な発想が光り、ニンジンの可能性を感じさせる素晴らしいものでした。
ただし、来年への期待を込めてお伝えすると、ニンジンを「生かすべきか、なくすべきか」というテーマにおいて、全体的にニンジンの存在感が薄いと感じられる作品も見受けられました。

今回の結果を成長の糧として、ぜひ来年も挑戦していただきたいと思います。また、入賞作品が専門家によってどのようにアレンジされたのか、特設ブースのキッチンカーでぜひ味わってみてください。

特設ブースのキッチンカーにて

受賞式が終わると高校生たちがキッチンカーへやってきて、自分たちのレシピがどんな見た目、商品になったのか?を体験しながらうれしそうに食べておりました。

【ティロット】
ペーストのニンジンが何層にも重なり、ニンジンの風味が生きたデザートでした。

(写真左):【馬!馬!にんじんカレーパン】  (写真右):【たっぷりチーズのキャロットピッツァ】

(写真左):【マゴメータ】  (写真右):【にんじんパイ】

表彰式の会場横では「第53回東京都農業祭」が開催! ~多様性ある東京野菜たち~

東京の農家が丹精込めて育てた野菜・果実・花・タマゴ・キノコなど、約1,000点にも上る農畜産物が出品され、栽培や出荷技術を競い合い、お披露目されておりました。
野菜パパイヤ、ズイキ(芋茎)、レモン、東京の島である神津島の明日葉など、多種多様な野菜たちが並べられ、東京の畑の豊かさを感じました。
入選した高校生たちも見学していたり、一般の方々も「こんなのが東京で採れるの?」など声をあげながら楽しそうに野菜を見ておりました。終了後の即売会では、一目散に金賞受賞者や入選者の野菜を手にとる方が多く、笑顔でもち帰っておりました。
きっと晩御飯は東京の野菜の話題でおいしい食卓になっていること間違いなしですね。

東京農業の魅力を発見する”東京やさい畑”で収穫体験 ~東京の真ん中に畑が出現!?~

東京農業を盛り上げるために日々活動している、東京都の若手農家による組織「JA東京青壮年組織協議会」。
東京農業をもっと多くの人に知ってもらいたいという想いから、若手農家たちが都内の仲間に呼びかけ、東京各地で生産される野菜や花木を50種類以上集め、有楽町会場で収穫体験イベント「東京やさい畑」を開催しました。

コマツナ、カブ、サツマイモ、シイタケなど、さまざまな野菜が用意されていました。
「東京にも畑があり、私たち農家は野菜を育てています。消費者の方々には野菜を食べるだけでなく、こうした体験を通じて農業に触れていただき、大消費地である東京における意識を少しでも変えていきたいと思っています。このイベントは毎年人気で、予約がすぐ埋まってしまうほどなんです」
と語るのは、JA東京青壮年組織協議会委員長の笹本氏です。

イベントに参加していた新宿からお越しの親子3人にもお話を伺いました。初めての参加となる今回は、6歳の女の子が「サツマイモ掘りがとても楽しかった!」と笑顔で答えてくれました。お母さまは「新宿に住んでいると、畑での体験をする機会がなかなかないので、貴重な経験になりました」とお話しされ、収穫したサツマイモとシイタケをその日の夕食に召し上がる予定だと、笑顔で会場を後にされました。

取材後記

今回のコンテストを通じて、馬込三寸ニンジンの歴史や食文化を学び、それをレシピとして表現したものが実際に商品化され、さらに販売されて多くの方に食べてもらえるという体験は、若い高校生たちにとってよりリアルな“自分ごと”に感じる素晴らしい機会だと感じました。
また、大都市でありながら東京には、守られてきた伝統野菜や多種多様な野菜・果物が豊富にあることを目の当たりにし、豊かな生産地であることを改めて知ることができました。
この体験を通じて、住んでいる東京をさらに好きになり、大切にしたいと思う良いきっかけになったのではないでしょうか。

次回は、丸の内会場のレポート(後編)をお送りします。

愛の野菜伝道師

小堀 夏佳/NATSUKA KOBORI

“野菜(yasai)には愛(ai)がある”をモットーに、おいしいWKWK(わくわく)♪で人を幸せにする愛の野菜伝道師。
オイシックスの初代バイヤーとして20年以上全国津々浦々駆け巡り、「ピーチかぶ」「トロなす」「かぼっコリー」など、ネーミングやレシピ、売り方までトータルブランディング。
2022年8月31日(やさいの日)に一般社団法人日本野菜テロワール協会をたちあげ、伝統野菜やご当地野菜など多様性ある野菜たちを伝道している。プロフェッショナル仕事の流儀、マツコの知らない世界、世界一受けたい授業、ほんまでっかTVなどメディア出演多数。

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東京味わいフェスタ2024
(TASTE of TOKYO)

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