10月14日(月・祝)、スポーツの日に辻調理師専門学校東京で開催されました。 1回目はごせき晩生小松菜、2回目は寺島ナス。3回目の今回は馬込三寸ニンジンがテーマとなりました。
入賞5作品の「最終審査発表と表彰式」は、10月26日(土)に第53回東京都農業祭の特設ステージで行われ、入賞したレシピは10月25日(金)から27日(日)までの「東京味わいフェスタ2024」有楽町会場で、プロの料理人によってアレンジされ、実際に食べることができる機会が提供されます。
馬込三寸ニンジンとは?
大田区西馬込(旧馬込村)の篤農家、河原清吉氏らによる品種改良で誕生した三寸ニンジン。
一寸は約3cm。つまり約10cmの円錐形で、太くずんぐりとして、濃い色と味、良い香りが魅力です。
従来の長ニンジン(長さ1m)の主流から、砂村三寸と川崎三寸の交配による両者のいいとこどりの品種で、大田区から全国的に広まりました。
また、江戸時代にはニンジンの根だけでなく葉も食べられており、無駄なく活用されていたことが伝えられています。
実技審査開会式
実技審査が行われた辻調理師専門学校東京には、295チーム424名の参加者の中から約37倍の競争を勝ち抜いた高校生8チーム18名が集まりました。
審査員は、辻調理師専門学校教育研究センターの山田センター長を審査員長とし、管理栄養士や料理研究家など5人が務めました。
開会式では、主催者であるJA東京中央会から「今日はスポーツの日であり、調理もスポーツ感覚で頑張ってほしい」と述べ、“江戸東京野菜”を通じて東京の農業を知ってもらうことや、農業者の協力や流通を巻き込んだ大会の特徴として、1303本の食材が都内配送便で運ばれたことや、入賞レシピを一般の方々にも味わってもらえる点が紹介されました。最後に、農業者の思いを込めた料理を作ってもらう一方で、リラックスして楽しんで取り組むことも大切であると強調されました。
エプロン姿に着替えて、いよいよ調理スタート
厳正な抽選で決まった審査の順に、いよいよクッキングスタート!
料理時間は1時間半。高校生たちは緊張した面持ちの中、時計を頻繁に確認しつつ、真剣な表情で取り組んでおりました。
審査員への料理提供&プレゼンテーション
発表では、寸劇形式にしたり、ニンジンソングを歌ったり、いろいろな表現で審査員にPRしました。
①東京都立農業高等学校
(チーム名:飯尾)石田妃菜さん・今村夢芽さん・潮和真さん
『にんじんパイ』
学校では、クラス全員で協力し馬込三寸ニンジンの栽培に挑戦したところ、形がそろわなかったが、良い経験になった。パイを切った際にニンジンのオレンジが主役になるよう最大限使い、揚げたニンジンの葉をパイに刺し、見た目を馬込三寸ニンジンの形に仕上げることにこだわりました!
②東京都立赤羽北桜高等学校 (チーム名:世界に一つだけの人参)鈴木萌桜さん・高宮友里さん・上野花さん
『マゴメータ 』
3人で元気よく寸劇形式で発表!
マルゲリータと馬込三寸ニンジンをかけあわせてマゴメータ!
生地、ソース、トッピングすべてにニンジンを使用しニンジン型のピザにすることで、ニンジンをまるかじりしているようなユーモアあるピザをつくりました!
③東京女子学院高等学校(チーム名:鳥とみかんと火星人)吉田 理維菜さん・中村綾香さん・高野 莉子さん
『馬!馬!にんじんカレーパン! 』
昨年に続いてコンテストに挑戦し、前回の経験を活かして子供も大人も楽しくおいしく食べられるように、すりおろしニンジンと賽の目切りニンジンをたっぷりと使用したニンジン型のカレーパンをつくりました!
④東京農業大学第一高等学校(チーム名:みやむれゆな)宮牟礼波奈さん、田中紬菜さん
『夏にぴったり!人参そうめん』
馬込三寸ニンジンもそうめんも江戸時代からの食文化。コラボすることで普段見ることのない馬込三寸ニンジンも身近に感じてもらいたいとの思いでつくりました。
ニンジンを千切りすることでそうめんのような演出をし、栄養たっぷりのニンジンの葉の天ぷらとソースをつくり、一緒に味わうことで馬込三寸ニンジンを感じてもらいたい!
⑤東京都立赤羽北桜高等学校(チーム名:バニーズ)山内明日風さん・李慧玲さん・石川真那花さん
『ティロット』
こんにちは!バニーズですとウサギの耳で元気に挨拶する3人!パワーポイントでわかりやすく発表し、ニンジンソングもお披露目♪
蒸したり焼いたりして体験後、特徴の苦味を活かすためにティラミスを考案。ニンジンパウダー、ニンジンシロップを作成しスポンジにしみこませ、スポンジ生地にもすりおろしたニンジンを使い、苦味と甘味を表現。ネーミングはティラミスのティ+キャロットより。
⑥目黒日本大学高等学校(チーム名:青空)山下綾菜さん・守山侑花さん
『たっぷりチーズのキャロットピッツァ』
ヨーロッパに由来するピッツァを作ることで、日本と外国の文化を料理で表現し、スライスしたニンジンをたっぷり使い、歯ごたえとチーズの口あたりが合わさることで、豊かな食感と子どもから大人まで幅広い年齢層に楽しんでもらえるように工夫しました!
⑦東京農業大学第一高等学校 河出南那さん
『馬込三寸ニンジン ニョッキの中華風』
βカロテンを豊富に含むニンジンの特性を生かすために、栄養素の吸収を高めるアボカドオイルをソースに使用し、さらにニョッキにすることで、可愛らしさと強い甘みを引き出す工夫をしました!
⑧東京都立赤羽北桜高等学校 満永劉さん
『にんじん畑』
ニンジンが苦手な人でも食べられるように、すりおろしや調理、飾り切りなどの工夫を施しました。
また、SDGsの観点から葉の部分も活用したグラタンへ!
意見交換会と閉会式
審査員からは、「料理のテーマを知らない人にニンジンであることが伝わる料理であったか?」、「全体的に今回は塩味が強すぎなため、副材料としてのタマネギやベーコンを減らす工夫をすることで、メインの馬込三寸ニンジンをもっと引き出せるのではないか?」との助言をいただきました。
山田センター長からは、「選ばれなかったチームも失敗の原因を考察することで得られる貴重な学びの機会だった。来年も挑戦されることを期待しています。」とのエールが送られました。また、「選ばれたチームは、東京味わいフェスタでの専門家によるアレンジが施された料理のポイントを理解することでさらなる発展を望みます。」と話されました。
高校生たちは来年へむけて、また新たに希望とやる気に満ち溢れておりました。
高校生たちのアイデアあふれる江戸東京野菜「馬込三寸ニンジン」をぜひ味わい、東京の農業の魅力を再発見してみませんか?
東京味わいフェスタの会場で、皆様のご来場をお待ちしております!
東京都農業祭で行われる最終審査発表・表彰式と、東京味わいフェスタでの入賞レシピの料理提供の様子は、後日、後編でお伝えします。
取材後記
未来を担う高校生たちが『馬込三寸ニンジン』の歴史や食文化を学び、実際に栽培や料理を通じて貴重な体験を得ることで、東京にいる農家さんの存在や伝統野菜の重要性を実感し、ものづくりや食べることの重要性、そして未来へ残すことの大切さを再認識する機会となったようです。
また、自分たちの言葉で発信することで、より多くの人々に東京の農業の魅力を伝えることができると感じました。このような活動を通じて、新たな“東京産食材の伝道師”が多く生まれることを期待しています!
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愛の野菜伝道師
小堀 夏佳/NATSUKA KOBORI
“野菜(yasai)には愛(ai)がある”をモットーに、おいしいWKWK(わくわく)♪で人を幸せにする愛の野菜伝道師。
オイシックスの初代バイヤーとして20年以上全国津々浦々駆け巡り、「ピーチかぶ」「トロなす」「かぼっコリー」など、ネーミングやレシピ、売り方までトータルブランディング。
2022年8月31日(やさいの日)に一般社団法人日本野菜テロワール協会をたちあげ、伝統野菜やご当地野菜など多様性ある野菜たちを伝道している。プロフェッショナル仕事の流儀、マツコの知らない世界、世界一受けたい授業、ほんまでっかTVなどメディア出演多数。