山の落ち葉を堆肥に! 日の出町 「馬場農園」

みなさん、こんにちはー!東京・世田谷の農園で野菜を作るアナウンサー「ベジアナ」小谷あゆみです。
今回訪ねたのは、東京の西多摩エリアに位置する日の出町です。
JR五日市線の武蔵増戸駅から車で10分ほどの丘陵地には日の出団地が広がり、建ち並ぶ住宅のすぐ隣に、落葉樹の森があります。
江戸時代から10代続く馬場農園ではおよそ300年、この山の落ち葉を集めて堆肥にしています。
1月半ばの日曜日、都内各地で援農ボランティア活動をする「東京縁農会」の皆さんと、新春恒例「落ち葉はき」に参加してきました。

冬の木漏れ日が差し込むクヌギやコナラの森。
住宅街に隣接して、こんな豊かな落葉樹の森林が残っていたんですね。
案内していただいた馬場敏明さん(66歳)によると、「ここは町との境で、行政区でいうとあきる野市になるんですよ。なので奇跡的に山のまま残っているんです。はい、一人一本、熊手をどうぞ。はき出したらすぐに暑くなるからダウンは脱いだ方がいいですよ。」

落ち葉はきに集まったのは、農業好きのメンバー11人と馬場さん親子の合わせて13人。
森の形状は、すり鉢状になっていて、外輪から中心部へ向けて、熊手を使ってひたすら
はき集めて下の方へ寄せていきます。
広さ3,000平方メートル、テニスコート12面分の落ち葉はきは、いわば修行。13人がかりの人海戦術です。
クヌギやコナラの木の下には、ドングリが早くも芽を出しています。
畑の堆肥には、分解の早い落葉樹が適しているのだそう。

馬場農園10代目、馬場貴之さん(37歳)に伺いました。

Q、なかなか大変な作業ですが、落ち葉はきの堆肥づくりには、どういう思いがあるのでしょうか?

馬場さん:土づくりには有機質が必要なので、落ち葉堆肥をすきこむことで土壌の空気層を作り、土の力を保ってきました。集めた落ち葉はトラック10台分ぐらいになります。
それに近隣の畜産農家の牛ふんを混ぜて、堆肥にします。
うちの畑は3ヘクタールあるので、その分の堆肥をすべて購入していたら10万~20万円かかかります。作業は大変ですが、こうして山が残っているので、自分達で作れる方がいいですよね。

東京縁農会の皆さんと集合写真。1月の恒例行事となっており、今年で4回目。作業は4時間ほどで完了し、焚き火や焼き芋も楽しいひととき。参加者はリピーターも多い。

Q、落ち葉はきは、毎回ボランティアでやっているのですか?

馬場さん:実は「東京縁農会」を主宰している大森継之助くんは、前職のJA全農時代の後輩なんですよ。その縁で、4年前から毎年、新春恒例行事として来てもらっています。「新前の汗だくイベント」って言われてますけど。
それ以前は、父と2人で1週間ぐらいかかってましたからとても助かってます。終わった後は、焚き火をして焼き芋を焼いたりね、いろんな職業の人が来て、喜んでくれるのでありがたいです。

Q、まさにご縁の「縁農会」なんですね。貴之さんが農業を継いだのはいつですか?

馬場さん:7年前、30歳の時に就農しました。子どもの頃から継ぐものだと自然に思っていたので東京農業大学に進んで、社会も知っておいた方がいいと考え、全農に勤めました。
わたしで10代目なんで、やはり途絶えさせないようにという思いもありました。

Q、今の働き方、やりがいはどう感じていますか?

馬場さん:うちは子どもが5人おりまして、子育てしながらの仕事なのでとにかく1年が早いです。
畑をフル活用して作ったら収穫して、仕事をすべて自分で組み立てるのは面白く、体力的には大変ですけど、精神的ストレスはないですね。

Q、どんな野菜を栽培していますか?また、売り先はどこですか?

馬場さん:季節の露地野菜を中心に、ハウスではキュウリもつくっています。
日の出町ふれあい農産物直売所を中心に、スーパー(日野市)などでも販売していて、固定のお客さんも付いてくれています。

Q、消費者とのローカルなつながりのある顔の見える関係ですね。馬場農園のキュウリはおいしいと評判だそうですね。

馬場さん: 東京の農業は、大産地とは違って消費者が価値を決めてくれると思うので、口コミはありがたいです。うちのキュウリは、祖父が戦時中に徴兵で行った青森で栽培を教わってきたのが始まりで、父の代で技術を確立して、あとは有機質の落ち葉堆肥で土づくりから力を入れているので、評価をもらえるのは嬉しいです。

Q、地域で代々続く馬場農園として、学校給食や農体験に力を入れているそうですね?

馬場さん:はい。地元小中学校の給食や保育園に、今の時期はダイコン、キャベツ、ハクサイ、ニンジンを届けています。うちの野菜を子供達に食べてもらえることは、やりがいにもなります。
それと食育としては、保育園の2歳児クラスはタマネギ収穫、年少クラスは、キュウリの収獲、年長クラスになると町が主催して、ダイコンの種まきと収穫体験をしています。小学生も来ますし、子供たちに農業を伝えられることは嬉しく、楽しいです。

【ベジアナの取材後記】

ザザー、ザザザザー。冬枯れの静かな森の中、落ち葉をはき集めるに従って山の地肌が現れると、仕事の成果が目に見えて心地よく、身体もぽっかぽかに温まります。
畑の土づくりが重要なことは、頭でわかっていても、山の落ち葉はきから生産工程に関われる体験はそうありません。江戸時代から続く循環型農法ですが、昔の人はすごいなーと思うと同時に、それを現代に継承する馬場農園さんの信念を感じずにはいられません。
これぞ持続可能!毎年欠かさず手入れされた森は、鳥、虫、草花、様々な生き物の棲家となります。人知を集めてみんなでわいわい身体を動かす落ち葉はきは、単なる労働ではなく、人と環境の両方をヘルシーにする仕組みではないでしょうか。関わった人はきっとこの地域や農業のファンになるに違いありません。
生産と消費が近い東京だからできる、小さいけれど確かな結びつきを教わりました。

野菜を作るアナウンサー「ベジアナ」

小谷 あゆみ/KOTANI AYUMI

世田谷の農業体験農園で野菜をつくるアナウンサー「ベジアナ」としてつくる喜び、農の多様な価値を発信。生産と消費のフェアな関係をめざして取材・講演活動
介護番組司会17年の経験から、老いを前向きな熟練ととらえ、農を軸に誰もが自分らしさを発揮できる「1億農ライフ」を提唱
農林水産省/世界農業遺産等専門家会議委員ほか
JA世田谷目黒 畑の力菜園部長
日本農業新聞ほかコラム連載中

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ベジアナが行く!「東京×カラフル×農業」

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