出前授業の先生は現役の農家さん
「出前授業」とは、JA東京中央会が東京の農業や農産物の魅力を伝えるために実施している取り組みです。農業に触れる機会が少ない都心部の子どもたちに向けて、年間約20回の授業を行っています。
今回の出前授業の先生は、高橋さんと井口さん。お二人とも都内で農業を営む現役の農家さんです。
東京の都心部では、農業に触れる機会が少なく、東京にも農業があることを知らない子どもたちもいます。JA東京中央会では、そんな子どもたちに東京の農業や農産物を身近に感じてもらうため、「出前授業」を実施しています。
今回は、東京にある新宿区立落合第一小学校での出前授業の様子を取材しました。
「出前授業」とは、JA東京中央会が東京の農業や農産物の魅力を伝えるために実施している取り組みです。農業に触れる機会が少ない都心部の子どもたちに向けて、年間約20回の授業を行っています。
今回の出前授業の先生は、高橋さんと井口さん。お二人とも都内で農業を営む現役の農家さんです。
右/高橋さん 左/井口さん
高橋さんは小金井市でブルーベリーやトマトなどを、井口さんは武蔵野市でさつまいもなどを栽培するなど、それぞれ地域の特色を生かした農業に取り組んでいます。今回の授業で子どもたちにプレゼントされたジャガイモもその一つです。
また、それぞれJA東京青壮年組織協議会の副委員長、理事としても活動しており、東京農業の魅力を広く伝えるために尽力されています。
農作業で忙しい日々を送りながらも、「少しでも農業や食に興味を持ってもらいたい」という思いで、出前授業を行っています。
この日、授業を受けたのは2年生の子どもたちです。授業は農家の先生による自己紹介からスタートしました。授業前までにぎやかだった教室は、先生が話し始めると一気に授業モードに変わります。
農家の先生が新宿区からほど近い場所で農業を営んでいると紹介されると、「そんな近くに農家さんがいるの?」と、子どもたちから驚きの声が上がりました。
まず紹介されたのは、東京の農業について。布製の大きな東京農業マップを広げながら、地域ごとに栽培されている農産物を紹介していきます。
東部ではコマツナ、西部ではワサビや酪農、中部では少量多品目の野菜や果物、島しょ部ではパッションフルーツなど、東京では地域ごとに特色ある農業が行われています。
「こんなにいろいろ作っているんだ!」と驚く子どもたち。
農地の風景写真や野菜の種類を当てるクイズでは次々と手が挙がり、教室は大いに盛り上がりました。
その後は、東京の農地が持つ役割について学びます。
農地には、「環境を守る」「農業を体験できる」「災害時の避難場所になる」「新鮮でおいしい野菜を育てる」という4つの役割があることを教えてもらいました。
野菜を育てるだけではない農地の役割に、子どもたちは熱心に耳を傾けていました。
農業の仕事についての質問タイムでは、子どもたちから「一気に野菜が育つと、収穫は大変ですか?」「野菜がおいしくなくなったり、枯れたりすることはありますか?」「寒くても暑くても働くので大変ですか?」など、子どもたちならではの素朴な質問が次々と飛び出しました。
農家の先生は、ジャガイモの収穫が続く忙しい時期のことや、夏場は空調服を着て作業していることなど、普段の農作業についても分かりやすく教えてくれました。
授業の後は、子どもたちが学校で育てているミニトマト、ピーマン、ナスについて、一人ひとり相談する時間です。
「どれがわき芽ですか?」「葉っぱが枯れてしまいました」「実が落ちてしまいました」など、それぞれが育てる中で困っていることを質問します。
農家の先生は、「雑草は根から抜こうね」「トマトは実が落ちやすいから優しく扱ってね」「ピーマンのわき芽が黒くても心配ないよ」と、一人ひとりに丁寧にアドバイスを送っていました。
アドバイスを受けた子どもたちは、忘れないよう熱心にメモを取る姿が印象的でした。
最後には、農家の先生から子どもたちへジャガイモのプレゼントも。
「今日のカレーに入れてもらう!」と嬉しそうに保護者へ話しかける子どもたち。授業で学んだ東京の農業が、その日の食卓へとつながる瞬間でした。
今回の出前授業を農家の先生と共に担当した、新宿区立落合第一小学校の主任栄養教諭の加瀬先生にもお話を伺いました。
加瀬先生は、出前授業について「野菜を育てるプロである農家さんから直接話を聞き、自分たちが育てている野菜へのアドバイスをもらうことで、子どもたちの農業への関心や、『育てて食べてみたい』という意欲につながると思います」と話します。
また、食への興味を育てることは、残食を減らすことにもつながるそうです。
「学校ではグリーンピースやソラマメのさやむきなど、食材に直接触れる機会を設けています。同じ学校の子どもたちが手伝ったことを給食の時間に伝えると、苦手なグリーンピースご飯でも残食が驚くほど少なくなりました。生産者や食材とのつながりを感じることが、『食べてみたい』という気持ちにつながるのだと思います。」
一方で最近は、果物が苦手な子どもたちがいることも教えてくれました。特に柑橘類は、皮のむき方が分からず、食べずに残してしまう子どももいるそうです。
「家庭では食べる食材が偏りがちだからこそ、学校給食では旬のさまざまな野菜や果物を取り入れています。旬の食材を味わう経験は、好き嫌いを減らし、豊かな味覚を育てることにもつながります。」
最後に、東京産野菜への思いを伺いました。
「東京の野菜は、旬の一番おいしいタイミングで収穫され、消費地との距離が近いため、新鮮な状態で食卓に届くのが魅力です。また、生産者の顔が見える安心感もあります。農家さんの『名前を出しているからこそ、プライドを持って野菜を作っている』という言葉が印象に残っています。そうした想いも、東京産野菜のおいしさにつながっていると感じています。」
今回の取材を通して感じたのは、「多様な食経験が人生を豊かにする」ということです。
便利なものがあふれる現代では、食べ物も手軽に手に入るようになりました。しかし、農家さんとのふれあいや野菜づくりの体験、給食で旬の食材を味わう経験は、子どもたちが未知のものや苦手なものに出会う大切な機会でもあります。
ジャガイモひとつをとっても、その背景には農家さんの努力や思いがあります。食べ物の背景を知ることで、子どもたちは食への関心を深め、感謝の気持ちを育んでいくのでしょう。
今回の出前授業では、子どもたちは、農家さんとの対話を通して、食べ物の向こう側にいる「つくる人」の存在を身近に感じていました。東京の農業と学校をつなぐこうした取り組みは、食への関心を育むだけでなく、子どもたちの視野を広げる貴重な学びの機会になっていると感じました。

病院、施設、保育園など10年以上現場の栄養士として活躍後、現在は栄養指導業務を中心にフリーランスの管理栄養士として活動しています。 料理が好きで、食べて健康になれるようにお野菜多めのレシピをSNS・レシピサイトで投稿しております。プライベートでは1児の母として毎日奮闘中です!




