畑の見学会

今回は、都心の小・中学校で働く栄養士さんとともに「畑の見学会」へ。学校の夏休み期間を活用して、多くの栄養士さんが参加しました。畑を訪れ、東京農業の生産現場から流通、食べるところまでを実際に体験。食のプロである栄養士さんが、食材がどのように育ち、どのような人の手を経て届けられるのかを学び、子どもたちへの食育にもつながる貴重な機会となりました。

「畑の見学会」とは?

「畑の見学会」は、JA東京中央会が主催する取り組みです。農地の少ない都心部の小・中学校に勤務する栄養士や教員を対象に、地産地消や東京農業への理解を深めてもらう目的で開催されています。
今回の見学会では、直売所、農園、飲食店などを巡りながら、東京で生産された農産物がどのように消費者のもとへ届けられているのかを学びました。
見学先へ向かう車内では、JA東京中央会職員の笹間さんから東京農業についてのお話を伺いました。
東京農業の特徴は、多品目少量生産です。生産された農産物の約8割が、直売所など生産地に近い場所で流通しており、一般の市場にはあまり出回らないそうです。一方で、農業の担い手不足や高齢化などにより、農地は年々減少しているそうです。
笹間さんは、最大の消費地である都心で東京農業のファンを増やすことが、地産地消への意識を高め、東京農業の広がりにつながると話します。そして、いつでも安心して食べ物を手に入れられる環境を未来へつないでいくための「未来への種まき」でもあると教えてくださいました。

新鮮な農産物が楽しめるJA東京むさし小金井ファーマーズ・マーケット

JA東京むさし小金井ファーマーズ・マーケット

最初の見学場所はJA東京むさし小金井ファーマーズ・マーケットです。
JA東京むさし小金井ファーマーズ・マーケットは、小金井市産を中心とした農産物を取り扱っており、毎日多くの来店者が新鮮な地場産農産物を目当てに訪れます。学校給食への納品も行っており、地域の食を支える役割も担っています。

直売所での説明会

店長の岩也さんからは、直売所の魅力と東京農業が抱えるこれからの課題についてお話を伺いました。
直売所の魅力は、農家さんが直接出荷するため、新鮮な農産物を購入できること。また、市場にはあまり出回らない珍しい農産物に出会えることも魅力の一つだそうです。

一方、東京農業が抱える課題として挙げられたのが、農家の減少です。こうしたなか、直売所では一般的な市場規格に合わない野菜も積極的に販売し、1つでも多くの東京産農産物を消費者に届けています。農家さんのなかには、農薬の使用をできるだけ控えて栽培している方も多く、形や大きさが不揃いになることもあります。そうした農産物も含めて販売することで、廃棄を減らし、農産物の販売量を増やすことができます。結果として、生産者の収入確保や農業を続けていくための支えとなり、農家の減少を食い止めることにもつながっているそうです。

お話を聞いた栄養士さんからは、東京産農産物の仕入れ先について質問が出るなど、東京の農業への関心の高さがうかがえました。直売所で実際の農産物を見ながら話を聞くことで、栄養士さんたちにも地産地消への関心が広がっていると感じました。
また、直売所での買い物を通じて、東京ではさまざまな農産物が生産されており、東京農業の豊かさを学びました。

直売所売り場

直売所での楽しいお買い物タイム。空芯菜やつるむらさき、バジルなどの夏野菜を購入されていました。
また、珍しいマイクロきゅうりも販売されていました。

トマト

店長の岩也さんおすすめの完熟してから収穫するトマト。中まで真っ赤で青臭さがなく爽やかな酸味とトマトのコクが存分に味わえます。

小金井市・髙橋農園で収穫体験

髙橋農園

次は、直売所で販売されている農産物が育てられている畑を見学します。直売所から車で10分ほどの髙橋農園さんで、収穫体験を行いました。
畑までは住宅街の狭い道を通ります。線路沿いにある住宅街に突如現れた農園を見て「こんなところに畑が!」と栄養士さんから驚きの声が上がりました。

髙橋農園

髙橋農園さんでは当初、小松菜の収穫体験を予定していました。しかし、連日の暑さで葉が黄色くなってしまったため、急きょブルーベリーの収穫体験に変更することになりました。
自然相手なので、予定通りにいかないことも多いと農家の髙橋さんから伺いました。天候や生育状況によって収穫できる農産物が変わることも、農業のリアルです。

髙橋農園さんでは、収穫体験だけでなく、種まきから農産物を育てる体験も行っています。できた野菜を収穫するだけでなく、種から芽が出て、成長していく過程を実際に見ることで、農業や食べ物への関心がより高まるそうです。こうした体験が、給食の残食を減らすことにもつながっているとお話しされました。

ブルーベリーの収穫を楽しみつつ、栄養士さんからは学校で栽培している野菜の育て方について髙橋さんに相談する場面も。生産者に直接質問できることも、こうした見学会ならではの魅力です。

30分ほどの収穫体験でしたが、暑さでヘトヘトになり、農作業の大変さを身をもって体感しました。

髙橋農園

食茶房むうぷで新鮮な東京の農産物の試食

むうぷ

収穫体験の後は隣接する三鷹市に移動して、食茶房むうぷさんでの東京産の農産物の試食です。

食茶房むうぷさんは東京産の野菜をたっぷりと使用したランチやお弁当を作っています。就労継続支援B型事業所として障害福祉サービスを提供し、食に関わる仕事を通じて、一人ひとりが社会とつながり、活躍できる場を作っています。

ランチ

ランチは、玄米ごはんとお味噌汁、メインのチキン、ナスの副菜、ポテトサラダなど、野菜たっぷりのメニューです。お味噌汁は煮干しのだしがしっかり感じられ、ほっとします。チキンに添えられた野菜のソースは素材の味が感じられ、玉ねぎの辛みも気になりません。ナスの副菜はスパイスがきいていて、食欲をそそります。
どの料理も素材の味を活かしながら、丁寧に作られていることが感じられました。

デザートのかき氷は三鷹産のイチゴを使用した特製のシロップ。イチゴの優しい香りとしっかりとした果肉が楽しめます。

いちごのかき氷

食後のほうじ茶についてきた自家製の琥珀糖も三鷹産の梅とバタフライピーを使用。甘酸っぱさが暑さで疲れた体を癒してくれます。

琥珀糖

実際に東京産の農産物を味わうことで、生産現場だけでなく、東京産農産物を料理として楽しむ魅力も実感しました。野菜たっぷりのランチを食べて、「近くにこんなお店があったらいいのに〜」「外食でこれだけ野菜がたくさん食べられるのはうれしい」と参加者からも楽しそうな声が聞こえてきました。

最後は府中市の内藤農園で収穫体験

内藤農園

試食の後は、府中市にある内藤農園さんを訪れ、この日2回目の収穫体験を行いました。

内藤さんは就農して16年。住宅街の中にある約2,500㎡の農地で、ブルーベリーと柿を生産しています。農地はネットで覆われており、普段は収穫体験を行っていませんが、地元の小学生を対象とした農業体験や、小学校給食への農産物の納品など、地域との交流を大切にしています。

内藤農園

「少ししわのあるブルーベリーがおいしい」と内藤さんが教えてくれました。適度に水分が抜けることで甘みが際立つのだそうです。見た目だけでは分からないおいしさを教えてもらえるのも、収穫体験ならではの楽しみです。

内藤農園

ブルーベリーの販売は主に農園の軒先にある販売所で行っています。宣伝は行っていませんが口コミでおいしさが広がり、店頭に並べてから30分ほどで売り切れるくらい人気だそうです。

摘みたてのブルーベリーを味わった栄養士さんたちからは、「酸味がしっかりしているので、ソースにして料理に取り入れてもおもしろそう」との声が。さっそく給食への活用を考えるなど、東京産農産物を学校給食に生かそうとする姿が見られました。

見て、触って、味わって、大人の実体験が子どもたちの食育へ

今回の「畑の見学会」では、都内で農業が営まれている現場だけでなく、その先にある販売や消費の様子まで、実際に見て、触れて、味わいながら体験することができました。こうしたリアルな体験は、参加した栄養士さんたちの学びとなり、やがて子どもたちへの食育にもつながっていきます。

次世代を担う子どもたちに東京農業の魅力を伝えていくためには、まず私たち大人が、農業の楽しさや大変さを自分自身で体験することが大切なのかもしれません。実際に体験したからこそ伝えられる言葉が、子どもたちの心に残る食育になるのではないでしょうか。

私自身、今回の「畑の見学会」を通して、東京農業への関心がさらに高まりました。自分で摘み取ったブルーベリーや直売所で購入した東京産の農産物を食卓に並べ、家族とそのおいしさや農業について話す時間は、なんとも豊かなひとときです。

東京には、都市のすぐそばに畑があり、そこで農産物を育てる人がいます。まずは身近な東京産農産物を知り、味わってみること。それも東京の農業を未来につなぐ一歩なのかもしれません。

のはらななこ/Nanako Nohara

病院、施設、保育園など10年以上現場の栄養士として活躍後、現在は栄養指導業務を中心にフリーランスの管理栄養士として活動しています。 料理が好きで、食べて健康になれるようにお野菜多めのレシピをSNS・レシピサイトで投稿しております。プライベートでは1児の母として毎日奮闘中です!

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