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初夏を迎え、トマトがおいしい季節。東京都清瀬市でトマト栽培を行う関健一さんは、「本当においしいトマトを東京の人に食べてもらいたい」と語ります。400年以上続く農家を受け継ぎ、試行錯誤を重ねながら続けるトマトづくり。その現場を訪ねました。

バスの車窓からも体感できる都市農業のリアル

池袋駅から西武池袋線の快速に乗って22分。降り立った清瀬駅の周辺は大型商業施設やマンションが立ち並び、都会のベッドタウンといった様相でした。駅の北口から西武バスに乗って駅前ロータリーを抜けると、住宅の間に点在する畑と無人直売所が車窓から見えました。こんなにも駅近の場所に農地があるとは驚きです。10分ほど乗車してバス停「中清戸東」で下車。バス停から歩いて5分ほどのところに、今回訪問した関ファームの「直売所 蔵」がありました。直売所の目の前は美しく整備されたバス通り。取材にうかがった日は街路樹のツツジが満開でした。

おしゃれなフラッグが「直売所 蔵」の目印 大谷石の立派な蔵の一角に直売用自販機が設置されている

おしゃれなフラッグが目印の「直売所 蔵」の前で、関ファームの園主 関健一(せき けんいち)さんと待ち合わせ、トマトを栽培しているハウスまで案内していただきました。収穫体験は行っていませんが、東京産野菜に興味を持つシェフなどを招いての畑見学を行うことはあるそうです。

トマトのハウスに向かう小道沿いには集合住宅や新築中の住宅が何棟も連なっていました。清瀬市の宅地化は年々進んでいるそうで、近隣住民の増加は直売所のニーズが高まるという利点がある反面、朝早い時間の農作業は控えるなど近隣への細やかな配慮を必要とする面もあり、都市農業が抱える難しい現実もあるようです。

清瀬で先祖代々400年以上も農業を営む「関ファーム」

この地で先祖代々400年以上も農業を営んでいる関家では、相続のたびに農地の縮小が避けられず、150アールあった農地が今では90アールまで縮小しています。元々の栽培品目は清瀬の特産品のニンジン、サトイモ、ホウレンソウ、ゴボウ、ダイコンなど。畑の面積を広く使うような露地栽培での農業を行っていましたが、農地縮小にともなって、周年出荷できるハウス栽培の水菜に切り替え、次に狭い面積でも効率よく栽培できるハウス栽培のトマトに切り替え、今ではトマト栽培がメインとなっています。

関さん

園主の関さんは、幼い頃から家業を手伝い、高校卒業後の18歳で本格就農。お父様が病に倒れたことを機に、25歳という若さで関ファームを引き継ぐことになりました。

最初に作り始めた野菜はトマト。選んだ理由は「とにかく好きな野菜で、直売所のお客様にも喜ばれ、なおかつ単価が取れる野菜だったから」と語ります。市場出荷するにはある程度のボリュームで生産する必要がありますが、当時は直売所が増え始めて、少量でも出荷可能な環境が整い始めたタイミングでした。

トマトの苗木10〜20本からスタートし、徐々に増やしていきましたが、トマト栽培が軌道に乗るまでには大変な苦労がありました。関さんが30歳の年にお父様が他界、その翌年にはお祖父様も他界。トマト栽培本格化のためにハウスの建設計画を立てていた時期と重なっていました。お父様の病状が思わしくなく、家族経営による先行き不安から一度は諦めかけましたが、「やりたければ、やった方がいいぞ」というお父様の言葉でトマト栽培を拡大していく覚悟を決めたのだとか。
「農園を引き継いだ25歳〜30歳もなかなかの大変さだったが、先代の2人を急に失った30歳以降は休みなく働かなければならない状況だった。帯状疱疹も発症し、あの頃は体力的にも精神的にも厳しい時期だった。」と関さん。何年も試行錯誤を重ね、44歳となった今、「従業員を雇えるようになり、週に2日休めて、大玉トマトだけでも一年に6,000本の栽培規模になっている」とのこと。丁寧に整備された美しく大きなハウスを見渡し、ここにどれだけの努力が詰まっているのだろうかと想像するだけで、目の前のまだ青いトマトすらおいしそうに思えました。

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関ファームのトマトは滋味のあるおいしさを追求

関ファームのトマト栽培は、ココヤシを使用した土壌による養液栽培が中心。ハウス内の温度、CO₂濃度、水分などのデータ管理を行って環境を制御し、甘み、酸味、旨みに加えて、滋味のある味わいを追求しています。「野菜は生き物ですから毎日顔色が違います。少しでも気を抜けばトマトはおいしく育ってくれません。常に様子を観察して愛情を注いで育てることでおいしく育ってくれます。関ファームが考えるクオリティに満たない場合は出荷しません」と関さん。東京に住む人に「本当においしいトマトを食べてもらいたい!」という気持ちがひしひしと伝わってきます。

関ファームのトマトは滋味のあるおいしさを追求 関ファームのトマトは滋味のあるおいしさを追求 関ファームのトマトは滋味のあるおいしさを追求 関ファームのトマトは滋味のあるおいしさを追求 関ファームのトマトは滋味のあるおいしさを追求

関ファームの直売所情報

関ファームの直売所は、バス通りに面した「直売所 蔵」と、小道を入ったところにある「直売所」の2カ所があります。水曜と日曜が定休で、他の曜日は不定期でオープン。営業時間は8時〜11時、オープン早々に売り切れてしまうこともあるようです。

関ファームの直売所情報 関ファームの直売所情報 関ファームの直売所情報

東京産野菜の都産都消を!

東京で東京産野菜を食べることは鮮度のよいおいしさを楽しめるだけでなく、物流距離の短縮によってCO₂の排出削減につながります。関さんは清瀬市の若手農家が集まる出荷組合「清瀬ベジフルパーティー」の会長もつとめ、東京で生産された農産物を東京で消費する「都産都消」を推進し、輸送距離を短くすることで環境負荷軽減にもつながる農業を目指していると語ります。関ファームの野菜は直売所の他に、清瀬ベジフルパーティーから納入している青果店や飲食店でも味わえるそうです。

東京産野菜の都産都消を! 東京産野菜の都産都消を!

作り手:関 健一
場所:東京都清瀬市下清戸1-350

タナカトウコ/Toko Tanaka

フード系ライター。著作に「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」「毎日おいしいトマトレシピ」等がある。日本野菜ソムリエ協会発行「野菜ソムリエ通信」編集担当。保有資格は、野菜ソムリエプロ、漢方臨床指導士、薬膳アドバイザー、他多数。現在は社会人大学生として地理学を勉強中。

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