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「東京で梨がとれるの?」と思う方もいるかもしれません。実は、東京の多摩地域にある稲城市は、梨の名産地として知られています。多摩川沿いの肥沃な土地を生かし、江戸時代から続く梨づくりが、現在も受け継がれています。
今回は、稲城の梨を育てる農家さんと、その梨を消費者へ届ける直売所を訪ねました。大切に育てられた梨が私たちのもとへ届くまでの過程や、稲城ならではの梨の魅力を紹介します。

稲城市の特産品「稲城の梨」

稲城市の特産品として知られる「稲城の梨」。その栽培の歴史は古く、元禄時代から始まったとされています。
かつて多摩川一帯で生産される梨は「多摩川梨」として販売されていましたが、平成18年に「稲城の梨」が地域団体商標として登録され、稲城市を代表する地域ブランドとして広く知られるようになりました。

稲城市ではさまざまな品種の梨が栽培されています。そのなかでも、稲城市で育成された「稲城」は、市内で多く栽培されている代表的な品種です。大玉でみずみずしく、やわらかな食感が特徴。さっぱりとした甘さで、果汁が豊富な梨です。収穫時期は8月下旬から9月上旬ごろまでと短く、一般の市場にはほとんど出回らないことから、「幻の梨」とも呼ばれています。

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梨の収穫シーズンになると、稲城市の農家ではあちこちにのぼりが立ち、軒先での直売が始まります。街を歩いていると梨の販売所を見つけることができ、梨の産地ならではの光景が広がります。

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稲城駅前にも「稲城の梨」を守るための看板が設置されていました。梨の産地として、まち全体で栽培を応援していることが伝わります。

大きさにもびっくり!稲城の梨

大きさにもびっくり!稲城の梨

実際に「稲城」を手に取ってみると、まず驚くのがその大きさです。

写真左が「稲城」、右が今回取材した川清園さんのオリジナル品種「みのり」。どちらも片手には収まらないほどの大玉で、ずっしりとした重みがあり、約600gもありました。

大きさだけでなく、みずみずしくジューシーな味わいも「稲城」の魅力です。実際に食べてみると、口に入れた瞬間から果汁があふれ出すほどのジューシーさ。上品ですっきりとした甘さに、みずみずしく、シャキッとした繊細な果肉、ふわっと広がる梨のやさしい香りが感じられました。

稲城で16代続く農家、川清園

稲城市で16代続く川清園さんを訪ね、収穫の最盛期を迎えたブランド梨「稲城」の収穫の様子を、農家の川島さんに案内していただきました。

取材に訪れた8月下旬には、たくさんの梨がたわわに実っていました。この時期、川島さんは一人で1日に約1,000個もの梨を収穫するそうです。収穫した梨は軒先でも販売しており、取材中にも、もぎたての梨を求めて訪れる多くの人の姿がありました。

稲城で16代続く農家、川清園

軽快なリズムで次々と梨をもいでいく川島さん。一見すると簡単な作業に見えますが、袋の下から梨の色や状態を瞬時に見極め、食べごろの梨だけを収穫していきます。長年の経験があってこそできる、熟練の技です。

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3分もかからずに1カゴの梨を収穫してしまいました。黄色みがあり、ツヤのある梨が食べごろの目安だそうです。

稲城の梨は、味のおいしさはもちろん、形が整っていて見た目も美しいことから、贈答用としても重宝されています。こうした品質の高い梨に仕上げるため、川清園さんをはじめ稲城市の多くの農家では、人工受粉や有袋栽培など、手間をかけて梨を育てています。

人工受粉を行うことで受粉を安定させ、実がつきやすくします。また、梨に袋をかける「有袋栽培」には、日焼けや虫による被害を防ぐ効果があり、農薬の使用を抑えながら、きれいな梨を育てることにもつながるそうです。

収穫が終わっても続く、梨づくり

収穫が終わっても続く、梨づくり

受粉用の花粉樹「ネパールミノル」は病気に強い長所がある。3月中旬にたくさんの花を咲かせる。

おいしい梨を作るためには、収穫シーズンが終わったあとも、たくさんの作業があります。
冬には、次の年に向けて土づくりを行います。川島さんの農園では、煮干しを堆肥の一部に使うなど、土づくりからこだわっています。

その後は、枝を整える剪定を行います。4月に花が咲くと、一つひとつ丁寧に受粉。実がついたら、育てる実を選ぶ「摘果」を行い、袋をかけて、収穫の時期を待ちます。

こうした一年を通した作業の積み重ねがあるからこそ、私たちはおいしい梨を味わうことができます。

川島さんによると、前年から続く丁寧な作業の積み重ねもあり、今年の収穫量もまずまずとのこと。収穫の時期だけでなく、一年をかけて梨を育てることが、おいしい梨を作る秘訣のようです。

「稲城の梨」を取り扱うJA東京みなみの直売所「Farmer’s market 東京みなみの恵み」

「稲城の梨」を取り扱うJA東京みなみの直売所「Farmer’s market 東京みなみの恵み」

写真提供:JA東京みなみ

稲城の梨は、稲城市から電車で1時間弱ほど離れた日野市の直売所でも販売されています。
販売を行っているのは、JA東京みなみが運営する直売所「Farmer’s market 東京みなみの恵み(以下、 東京みなみの恵み)」。店長の会田さんにお話を伺いました。

「 東京みなみの恵み」では、主に日野市、多摩市、稲城市の農産物を取り扱っており、約150名の農家さんが農産物の販売先として利用しています。
農家さんの負担を減らすため、さまざまな工夫も行っています。その一つが「買取制度」です。直売所で販売する農産物を買い取ることで、農家さんは値札を貼るなどの販売準備の手間を減らすことができます。

また、直売所がある日野市から離れた稲城市の農産物を集荷する際には、農家さんが直接持ち込むのではなく、最寄りのJAで集荷する仕組みを取り入れています。こうした工夫によって、農家さんが出荷しやすい環境を整えています。

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写真提供:JA東京みなみ

なかでも稲城の梨は非常に人気が高く、販売時期になると問い合わせが増えるそうです。「 東京みなみの恵み」で稲城の梨を知り、そのおいしさからリピーターになる方も多いとのこと。

直売所では、農産物の購入だけでなく、地場産の農産物を使った加工品の購入や、レストランでの食事も楽しめます。レストランでは、直売所に並ぶ農産物を使ったメニューも提供されています。

会田さんは、直売所の魅力について「より多くの人に東京の農産物を届けられること」と話します。

さらに、「東京みなみの恵み」では東京だけでなく、全国のJAとも連携。日本各地から旬の農産物が直送され、東京にいながら全国の旬の味覚も楽しむことができます。

地域の農家さんが育てた農産物を消費者へ届けるだけでなく、農家さんが出荷しやすい仕組みを整えることも、直売所の大切な役割です。「東京みなみの恵み」は、農家さんと消費者をつなぐ場所として、東京の農業を支えています。

稲城の梨を紡ぐ農家とつなぐ直売所

稲城の梨の多くは農家さんの軒先や通信販売などで販売され、一般の市場にはほとんど出回りません。そのため、生まれてからずっと東京で暮らす私も、今回の取材を通して初めて「稲城」という品種を知りました。

直売所での販売を通して初めて稲城の梨のおいしさに出会う方もたくさんいることでしょう。

元禄時代から続く稲城の梨。その伝統を守り続ける農家さんと、梨のおいしさを多くの人へ届ける直売所があるからこそ、私たちは地域の味に出会うことができます。生産者と消費者をつなぐ、東京ならではの素敵な関係を見つけることができました。

のはらななこ/Nanako Nohara

病院、施設、保育園など10年以上現場の栄養士として活躍後、現在は栄養指導業務を中心にフリーランスの管理栄養士として活動しています。 料理が好きで、食べて健康になれるようにお野菜多めのレシピをSNS・レシピサイトで投稿しております。プライベートでは1児の母として毎日奮闘中です!

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