東京でしか作れない「特産品」

株式会社コロンバンは創業95年、創業者・門倉國輝により、日本で最も早く正統なフランス菓子の製法による本格的洋菓子を紹介した歴史ある洋菓子メーカーです。
本店屋上で採蜜した「原宿はちみつ」で作る「原宿はちみつプリン」は「東京都地域特産品認証食品・イイシナ」の認証を受けるなど、生産者とパティシエの想いが詰まったこだわりのスイーツを製造しています。

今回の東京仕事人は株式会社コロンバンで養蜂を担当する河辺穂奈美さんにお会いして、10年目を迎えるコロンバンの「都市型養蜂」と東京都内で採蜜して作る「東京の特産品」の魅力について伺いました。

虫嫌いの少女が昆虫研究

10年前に始まったコロンバンの養蜂事業は、専属の養蜂家を設けずに社長、総務部長と営業企画課課長が中心となって手探りの中で形を作っていました。偶然にも原宿エリア内で養蜂経験を持つミツバチ産業株式会社様からアドバイスをもらい、ビル風などの苦難を乗り越え、少しずつコロンバンなりの「都市型養蜂」を積みあげていきました。
「地域のために恩返しがしたい」と社員が一から始めた養蜂は、10年間コロンバンの社員によって大切に守り続けられ、生産者とパティシエの想いが詰まった「原宿はちみつスイーツ」となり、その魂は河辺さんへと受け継がれていきます。
現在、コロンバンの養蜂場を管理する河辺さんは幼少期、玄関にカマキリがいると家に入れないほどの「虫嫌い」な女の子でした。虫嫌いの河辺さんは高校時代の恩師によって生物学に興味を持ち、岐阜大学応用生物科学部(旧農学部)に入学。
いつしか花に集まる昆虫と花の関係を研究題材にするようになりました。大学院卒業後、先輩やミツバチ研究で有名な玉川大学教授の紹介で株式会社コロンバンに就職するのです。

それでも養蜂がやりたい!

河辺さんはコロンバンに就職を決める前、養蜂企業への就職も考えていました。ただ、どこも家族経営が多いため「女性は嫁入りして養蜂家になることが多い」「女性には向かない仕事」と言われ、「30キロ以上ある巣箱を数千箱もトラックに運んで移動できるのか?」と考えると、養蜂未経験者の河辺さんは体力面の不安もあり、二の足を踏んでいました。
そうして養蜂への道を模索する中、洋菓子メーカーのコロンバンが原宿本店の屋上で都市型養蜂を行っていることを知ったのは玉川大学教授からの紹介でした。
「どんな形であったとしても私は養蜂を仕事にする」そう覚悟を決めた河辺さんは、誰にも相談せずにコロンバンへの就職を決めるのです。ミツバチと花と向きあう仕事がしたいと養蜂ができる場所を探していた河辺さんにとって、コロンバンとの出会いはまさに運命でした。
今年で4年目。今となっては10キロ以上ある巣箱を軽々と持ち上げ、都市型養蜂の環境を理解しながら養蜂場を一人で管理し、コロンバンの製品を生産者として支える河辺さんの姿があります。

ティースプーン1杯の蜂蜜

「原宿はちみつ」は東京都内で四季折々に咲く花の蜜を集めた「百花蜜(ひゃっかみつ)」という蜂蜜で、百花蜜は特定の花から集めるアカシア、レンゲ等の単花蜜と違い、四季によって味が変化する特徴を持っています。
巣箱の蜜蜂は女王蜂が1日1~2千個の卵を産み、常時2~3万匹の蜂が一家族として生活しています。一般的な女王蜂は2~3年生きるのに対し、働き蜂は20日で成虫となり花の開花期は30~40日で死んでしまいます。1匹の蜜蜂が一生に作る蜂蜜はティースプーン1杯分(4~6グラム)と言われ、コロンバンの養蜂場は明治神宮の森、代々木公園、神宮外苑、東宮御所と原宿周辺に咲く花々を蜜源として、河辺さんの努力によって今や年間500kgの採蜜量を誇るまで成長しました。
河辺さんは「蜜蜂を世話することが何よりも楽しいです」と少し照れくさそうに蜜蜂の魅力を語ります。蜜蜂の魅力を語るのは河辺さんに限った話ではありません。小澤社長はじめ、取締役の太田さんと、広報の白石さん、お会いするコロンバンの社員みなさんが「原宿はちみつ」に誇りを持っています。

10年前に始めたコロンバンの養蜂場に養蜂家はいませんでした。今なおコロンバンに専属の養蜂家はいません。応接室に並ぶ麦わら帽子を見て、株式会社コロンバンという企業そのものが養蜂家であり、東京仕事人なのだと感じました。

※現在、コロンバン原宿本社は渋谷区神宮前六丁目の再開発認可に伴い一時閉店にしていますが、渋谷コロンバンビル(渋谷区神南1-6-12、原宿より徒歩10分程度)の屋上で採蜜を続けています。4月末の時点で、渋谷コロンバンビルには13の巣箱に約40万匹のミツバチが暮らしています。(令和2年4月30日)

河辺 穂奈美さんへの一問一答

QUESTIONS AND ANSWERS

Q.東京の一次産業の魅力は?
A.養蜂自体が東京都内で今ブームになっています。渋谷や銀座など、ビルの屋上の有効活用として、また益虫である蜜蜂が増えることによる環境改善の役割としても注目が集まっています。都市型養蜂も確立されつつありますので今後も面白味があります。
Q.養蜂の魅力は何ですか?
A.環境貢献への意識を持ってほしいという思いで始めた養蜂ですので、一般の養蜂と我々の養蜂は少し意味合いが違うと思います。コロンバンの養蜂に対して近隣や企業の方はとても好意的で、採蜜をしてはちみつスイーツを販売するだけではなく、養蜂場見学などを企画し多くの方々と触れ合うことで蜜蜂がコロンバンと社会の懸け橋になってくれています。
Q.百花蜜の美味しい食べ方は?
A.宣伝になってしまいますが、弊社の作る「原宿はちみつプリン」と「原宿はちみつロール」は「原宿はちみつ」を使っています。百花蜜は季節によって味が変わるので商品によって使う蜂蜜を変えています。「原宿はちみつスイーツ」は原宿本店限定の商品が多いので、ぜひ原宿本店にお立ち寄りください。またその際にコロンバンの養蜂についても知って頂ければ幸いです。

最後にミツバチは花がないと生きていけません。植物もミツバチなどの昆虫がいないと生きていけないものが多いです。みなさんもぜひ植物を育ててください!

株式会社コロンバン 養蜂担当

河辺 穂奈美さん/KAWABE Honami

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