
「楽しみながら、食を育もう!」を合言葉に、東京都主催の「東京de収穫体験フェスティバル」が、昨年に引き続き6月14日に開催されました。
今回は、サブ会場である練馬区内の農園で開催された「ジャガイモ掘り体験」の模様をレポートします。
練馬・冨岡農園で収穫体験
ジャガイモの収穫体験は、練馬区で二百年以上続く冨岡農園さんのご協力のもと実施されました。
参加者には、港区・新宿区・杉並区など、普段なかなか畑に触れる機会の少ない地域にお住まいの方が多く見られ、お子さんに農業体験をさせたいという思いで応募された方が目立ちました。

冨岡農園入り口。この日はあいにく、小雨が降ってきました…。
参加者の方にお話を伺いました
●中学2年生のお子様(港区にお住まい。お母様と参加)
期末テストが終わったばかりです!(笑)昔から野菜や食べることが好きで、お母さんがこのイベントを知って「楽しそうだね」と応募してくれました。野菜の成り立ちを知るいい機会なので楽しみにしてきました。今日の収穫の収穫したジャガイモは肉じゃがにしてみたいです!
●お母様(新宿区にお住まい。小学校2年生、5歳と参加)
インスタグラムに情報が流れてきて、参加してみたいと思い応募しました。お兄ちゃんはサツマイモ掘りはしたことがありますが、なかなか畑に触れる機会もないので、どうやってできるのか見せてあげたいです。
●保育園の栄養士をしているお母様(港区にお住まい。5歳の息子さんと参加)
野菜が好きで、毎年サツマイモ掘りなども体験しているので、SNSでこの体験を見つけて応募しました。実家が福岡にあって小さな畑もあり、キンカンを採ったりすることはあるんですけど、ジャガイモ掘りは今回が初めて。とても楽しみにしています!
いよいよジャガイモ掘りスタートです!
農園主の冨岡さんから、収穫するジャガイモの品種や作業時の注意点について説明を受けます。
「今日掘ってもらうのは『ホッカイコガネ』という品種で、調理用・加工用として使われることが多く、あまり市場には出回らないジャガイモです。フライドポテトにぴったりですよ!スーパーなどではなかなか見かけないので、今回のイベント用に特別に育ててみました。それから、帰りには“ほんの気持ち”ですが、『キタアカリ』というタイプの違うジャガイモもお渡しします。ぜひご自宅で食べ比べて、味や食感の違いを楽しんでくださいね!」

笑顔が素敵な農園主の冨岡さん。「緑の小芋は食べないように」と説明中。
「あと、たまに緑色のジャガイモがありますが、それは取らないようにしてください。
光に当たって緑化した部分には“ソラニン”という有害物質が含まれているため、食べるとお腹をこわすことがあります。それから、ミニトマトのような小さなジャガイモもあります。お持ち帰りいただいても構いませんが、見た目がかわいらしく、子どもがおやつ感覚でそのまま口にしてしまうことがあります。未熟な小さなジャガイモには有害物質が含まれていることもあるため、食べないように気をつけてください。」との注意がありました。
見慣れない緑色の小さなジャガイモに、大人の参加者からも「へえ〜」と驚きの声が上がります。

いよいよ畑に入ります。「ひと家族2株ずつ、抜いてくださいね〜」
いよいよ畑に入り、ジャガイモを掘り始めると、予想以上に大きなホッカイコガネが現れて、「うわー!」「でかっ!」「きゃー!すごーい!」「大きい!」と、あちこちから歓声が上がります。


(写真左)茎を持って引っ張ると、ずるずるっとジャガイモが抜けます。「周りにも隠れているからね〜」と冨岡さん。
(写真右)抜いたジャガイモを、まじまじと観察する子ども。


(写真左)大きなジャガイモを手に、にこにこ笑顔で嬉しそうに見せてくれた子ども。
(写真右)収穫したジャガイモに大興奮のお母さんと、抜きたてのジャガイモに釘付けの子ども。


(写真左)お兄ちゃんを撮っていたら、途中から妹さんも来てくれました。
(写真右)お野菜大好きだという女の子。お母さんと一緒ににっこり!
ひと口にジャガイモといっても、実はいろいろな種類があります。 では、ホッカイコガネの特徴は?

ホッカイコガネは、揚げても変色しにくく、芽が浅いため皮ごと調理しやすい形状が特徴です。こうした特性から、フライドポテトやポテトチップスなどの加工用として使われることが多いそうです。
ただし、生産量は少なく、全国のジャガイモ全体のうちわずか3%ほどしか栽培されていない希少な品種なのだとか。

お土産にと準備くださったキタアカリを、真剣に吟味していた子ども。キタアカリは丸い形でした。
「お土産用のキタアカリは、ホッカイコガネとは真逆の性質で、食味が良く、煮くずれしやすいのが特徴です。その特性を活かして、カレーやシチュー、肉じゃがなどに使うのもおすすめですよ」と冨岡さん。
子どもたちの感動は、大人になっても忘れない「食育体験」!
今回参加された保護者の皆さんに、参加の動機を伺ったところ、「自分が小さい頃に芋掘りをしたのが楽しくて、子どもと一緒に体験したくて応募しました」と話す方が多くいらっしゃいました。
『食育は、食に関する適切な判断力を養い、心身の健康の増進と豊かな人間形成に役立つものであり、知育・徳育・体育の基礎となるものです。』(※東京都:小池百合子知事「東京都食育推進計画」より)
今回のジャガイモ掘り体験は、東京都が進める「食育推進計画」の一環として開催されたイベントです。その「食育」の様子は、まさに“楽しくておいしい思い出”そのものでした。
子どもの頃に感じた楽しかった体験は、大人になってから「あの思い出を今度は自分の子どもにも」と、次の世代へとつながっていきます。
今日、歓声をあげながらジャガイモを掘った子どもたちも、きっと大人になったときに「そういえば、あのとき芋掘りしたなあ」と懐かしく思い出し、家族で畑に行きたくなるかもしれません。
「畑って、食って、楽しいね。おいしいね!」
そんなふうに感じてもらえたこの体験は、次世代の“食の未来”をつくる、確かな一歩となったはずです。

収穫したジャガイモを見せてくれた男の子。よほど大きなジャガイモが嬉しかったようです。
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都市農業ライター
三文字 祥子/SHOKO SAMMONJI
都市農業ライター「畑と私」
広告などの企画・編集・コピーライターを続けてきた傍ら、練馬区での都市農業を楽しんで暮らす。
都市農業のすばらしさを“農業素人”目線でレポートします!
密かに練馬大根引っこ抜き競技大会3度優勝の実力者。
趣味は三味線、民謡、盆踊り。
Instagramでも、日々の農業体験農園を綴っています。
▽ https://www.instagram.com/hatake.to.watashi/