米粉パンを食べよう!TOKYO JAPANキャンぺーンに参加して、障がいをもつ方と職員が力を合わせて、天然酵母、無添加、グルテンフリーな、パン、シフォンケーキ、ラスク、クッキー、乾燥野菜などを製造販売している福祉作業所「たしざん」。

「たしざん」では、同施設の利用者の皆さんが無農薬で育てた野菜が使用されており、収穫した野菜を店舗で乾燥させてパウダー状に加工し、パン生地に練り込んでいます。
乾燥させることで長期保存も可能なこの野菜パウダーは、「たしざん」のパンづくりの特徴となっています。
農業と福祉を融合させた「農福連携」によって、地域社会に新たな価値を提供しています。

福祉と教育を融合させた「たしざん」の理念

西武鉄道池袋線大泉学園駅北口からほど近い場所に店舗を構える「たしざん福祉作業所大泉学園駅前」で、代表理事である前田典子さんにお話を伺いました。

前田さんは、元々教育を専門にご活躍されていましたが、子育てを通じて福祉の分野に興味を持ち、農業との連携を始めました。
障がい者の働く場を創出することと、農業の労働力不足を解消することを目指して、農福連携を実現。
作業所の名前「たしざん」は、利用者さんたちができることを少しずつ増やし、彼らを支える人々もまた一人ずつ増えていくことを願って名付けられました。

販売している商品すべてに「いつもありがとう!たしざん」のイラスト付きメッセージタグやシールが付いています。

利用者さんたちの成長と地域社会への貢献

利用者さんたちは農作業を通じて、自分の役割を実感し社会参加の意義を深く感じているそうです。
畑での作業を体験することで食欲が増進し、より深い眠りを得られるようになり、その結果、体調が整うとともに通所日数も増加するなど、心身の健康にも良い影響をもたらしています。
練馬区内で農家の作業を手伝う活動を行っていますが、農家の営農現状は厳しく、農福連携の活動が地域社会に根付くには、まだ課題が多く残っています。

利用者さんたちが、農家の指導の下につくった「無農薬野菜」。こちらも販売されています。

米粉パン製造の挑戦と工夫

「たしざん」では、米粉パンの製造に力を入れています。そこで大切なのが素材の質です。
玄米粉、米粉、パン酵母、米油、きび砂糖、長崎県産海水塩、といった厳選した素材のみを使用してます。
これまで新潟県産や埼玉県産、九州各県産などの米粉を試してきましたが、それぞれの地域の特徴や気候の影響で仕上がりに差が出るため、製造には苦労が伴います。
特に、米粉パンはグルテンフリーであるため、製法に独自の工夫が必要です。

一般的なパン屋さんのオーブンで鉄板を重ねて蒸し焼きにする方法を取り入れることで、米粉パン特有の硬さを克服しています。

「玄米パン」や「米粉クッキー」の製造にも意欲的

玄米パンの製造は、港区南麻布にある「ナショナル麻布スーパーマーケット」からの依頼がきっかけで始まりました。
現在では冷凍販売のみを行っていますが、外国人顧客から高く評価されています。
また、米粉クッキーは、以前パティシエに学んだ利用者さんが一人で製造を担当しています。彼女が休むと製造がストップしてしまうことが課題ですが、ご本人はやりがいを持って積極的に作業に取り組んでくれています。

商品棚には、米粉パンをはじめ発酵玄米パンや米粉クッキーなどが並ぶ。

販売チャネルの拡大と広報活動の課題

「たしざん」の米粉パンは、店舗販売だけでなく、イベント出店や通販でも販売されています。
通販では、有名な女優がパンを購入したことをきっかけに、口コミで大きな売り上げを記録したこともあります。
売上が上がれば、利用者さんたちの工賃に反映できるため、さらなる販路拡大を目指しています。
一方で、広報活動が不十分であり、知名度向上や新たなファンの獲得が課題となっています。
今後は、SNS等からの情報発信にも積極的に取り組んでいくとのことです。

農地の減少と都市農業の未来

練馬区の農家は、相続などの問題から農地を維持することが難しく、宅地化が進んでいます。
「たしざん」は1年契約で畑を借りていますが、せめて3年契約に延長してほしいと願っています。しかし、農家側も貸し出した農地が戻らないという不安があり、長期的な契約には慎重です。
都市農業のあり方が問われる中で、農福連携の取り組みを通じて、農業と福祉の新しい形を模索しています。

代表理事の前田さん(右)と製造担当のスタッフさん(左)

「たしざん」は、地域に根差した農福連携のモデルとして、障がい者の働く場を創り出しながら、持続可能なビジネスモデルを構築しています。
これからも、彼らの米粉パンづくりが地域社会に広がり、新しい価値を生み出すことを期待しています。

東京グロウン/TOKYO GROWN

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米粉パンを食べよう!TOKYO JAPAN キャンペーン
参加販売店を訪ねて

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