「カラフル野菜で、身も心もパワーチャージ!」

東京都武蔵野市の住宅街に囲まれた畑の先に佇む、赤い屋根が目印のかわいい直売所。
畑に霜が降りてくる寒い季節にもかかわらず、直売所は朝から大勢のお客様でにぎわっています。
ここで野菜を販売しているのは、『こびと農園』代表の鈴木茜さん。
お客様を惹きつける魅力は何か?人気の秘密を探ってみました。

直売所はきっかけ作り

直売所の中を覗いてみると、定番の冬野菜から珍しいカラフル野菜までワクワクするような品揃え。一番人気のオータムポエムは既に売り切れていました。
実はこの直売所、収穫から荷造り、陳列、販売までを一貫して鈴木さんお一人で担っています!

ずいぶん大変そうな作業ですが、なぜ直売所を始めたのでしょう。
「直売所を始めたきっかけは、地域の方に『こびと農園』を知ってもらう機会を作りたいと思ったからです。農園で作られた野菜を対面で販売することで、少しでもファンが増えてくれたら嬉しいです。」

「この“紅くるり”って何?」「それは中まで赤い大根でサラダにも使えますよ」
何を買おうか迷っているお客様に、鈴木さんが明るく話しかける声が響きます。
「直売所では、なるべくお客様に寄りそって話すことを意識しています。お話が好きな方、静かにお買い物を楽しみたい方、それぞれの特性を見極めてコミュニケーションを図るように努めています」

そう語る鈴木さん、周りが住宅地に囲まれた都市部での農業は地域の方と密接にかかわるため、特に信頼関係を大切にしているとのこと。農業を通じて「人々の心を豊かにできる」ような経営を目指しているそうです。

野菜のチカラで心も元気に

鈴木さんは、東京農業アカデミー八王子研修農場(注1)で2年間研修を受けたあと2022年4月より武蔵野市と小金井市で新規就農しました。
就農まではどんな経営で農業を続けていくか悩んでいた時期もあり、「都市部で求められている農業はなにか?」と真剣に考えた末、今の営農スタイルにたどり着いたそうです。
農作物の生産、販売のみならず、農業を通じて農作業体験、食育活動などの取り組みで地域社会への貢献を目指しています。
月2回の会員制農作業体験は、現在10組の方々が参加されています。
年間を通じて種まきから収穫までを経験してもらうこの取り組みは、家庭菜園に興味がある方をはじめ、親子連れの方にも食育の一環として喜ばれているそうです。

季節に合った色とりどりのカラフル野菜も『こびと農園』の特徴の一つ。
実は、カラフル野菜は病害虫に弱いなどの難点があり、栽培は容易ではないそう。
それでもチャレンジしようと思ったのは、鈴木さんならではの農業に懸ける想いがありました。
「私はただ農作物を生産するというだけではなく、『食の付加価値』を上げるものを人々に提供していきたいと思っています。見た目が美しい野菜であれば、それだけで食卓が明るくなるしその日の気分を上げてくれる心の栄養にもなる。そういう付加価値を感じて、栽培がむずかしい野菜作りにも挑戦することにしました」

(注1) 東京農業を担う新たな新規就農者を育成するための研修施設。公益財団法人東京都農林水産振興財団が事業運営。

『地産地消』をもっと身近に

彩りを大切に作られたこびと農園の野菜は、武蔵野市にある惣菜店『公苑前のデリ』でも使用されています。
デリのオーナーである舟木公一郎さんは、これまでに食分野を軸に商店街を活性化させるなどの、まちづくりにも携わってきました。
今回、『こびと農園』の野菜を中心に使用するデリを開業した経緯をお伺いしました。

「これまでまちづくりに関わってきた中で、都心郊外の商店街で一から飲食店を経営することは容易ではないと感じました。なぜなら東京では、駅から遠いといっても家賃が高い、住宅地は人気(ひとけ)が少ない、既に全国的な人気店も多く、継続的に集客するのが大変だからです。
それは恐らく農業の分野でも同じことが言えます。そんな三重苦の都心で、新規就農することがどれくらい大変なことか自身の経験からも想像がつきます。
都会で人がたくさん暮らしている地域だからできることがある、そういうビジョンを共有できるからこそ、農食連携して新しい価値を共につくっていけるのではと感じました。」
そう語る舟木さん。まずは、野菜の出張販売や、野菜を使ったお惣菜でその足掛かりをつくることを2年間やってきました。
農業者ではなく消費者としての目線を活かして、農産物のおいしさをどう伝えていくかをイメージしたお弁当は見た目もカラフルでスタイリッシュ!
パッケージには、思わず手に取りたくなる可愛らしいデザインが施されています。

多角的に販路を広げるきっかけを与えてくれた舟木さんは、鈴木さんにとって強い味方です。
「舟木さんのデリは、新鮮な野菜はもちろん珍しい品種の野菜であっても、余すことなく美味しく調理してくれるありがたい存在です。
デリのお弁当を食べて私の農園のことを知った方が、今度は直売所に出向いて野菜を購入してくれることもあるんですよ。」と、嬉しそうに語る鈴木さんです。

さらに今後の目標をお二人に聞いてみました。
「農と食に関わる私たちが、あえて『地産地消』という言葉を使わなくても、消費者の方々が普段の買い物の中で自然と感じ取ってくれるようになってくださったら嬉しいです。
地場野菜を購入し、その美味しさを体感した人が、その野菜を利用した地域の飲食店を利用してくれるようになる。
そういうことが、もっと当たり前のこととして世の中に浸透していくようにこれからも頑張りたいと思います」
農業と異業種とのコラボ、とてもいい循環ができているようです。

都市で暮らす人々の癒しになる農作物づくりを通じて、もっと世の中を元気にしたい! 
そんな素敵な目標を持つ鈴木さんとお話していると、農業にはいろいろな可能性があって、本当に楽しそう!
そんな気持ちになりました。

都会の暮らしの中にちょっとした楽しみを提供してくれる、赤い屋根の小さな直売所。
こびと農園の直売所でお買い物をしてみたら、きっと鈴木さんのおひさまのようなエネルギーとカラフルな野菜達に元気なパワーを分けてもらえますよ!

▼ こびと農園 直売所
東京都武蔵野市関前3-8付近(毎週日曜日10:00~11:00)
東京都武蔵野市緑町2-4-38 グリーンビレッジ101(毎週木曜日15:00~17:00)

▼ 公苑前のデリ
東京都武蔵野市西久保3-9-15(営業日 水・木・金 11:00頃~19:00)
電話:0422-38-6328

株式会社エマリコくにたち

荒木 陽子/ARAKI YOUKO

〒186-0004
東京都国立市中一丁目1番1号
℡ 042-505-7315
http://www.emalico.com/

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東京生まれの“おいしい”に出会う『直売所散歩』

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