
「楽しみながら、食を育もう!」を合言葉に、東京都主催の「東京de収穫体験フェスティバル」が、昨年に引き続き6月14日に開催されました。
今回は、当日のフェスティバルの模様を【メイン・サブ会場編】と【練馬区内農園での収穫体験編】の2回に分けてお届けします。
メイン会場の新宿駅西口地下広場では、トークショーやキャラクターショー、デジタル収穫体験、トラクター乗車体験、農産物マルシェなど、東京産野菜への理解を深められる多彩なコンテンツが展開されました。
一方、サブ会場の新宿調理師専門学校では、俳優の渡辺裕太さんと一緒に、東京産のトマトやコマツナを使った料理体験が行われ、多くの親子連れでにぎわいました。
今回は、その魅力あふれる当日の様子を一部ご紹介します。






俳優・タレント渡辺裕太さんのトークショー

俳優・タレントとして活躍する一方で、野菜ソムリエの資格を持ち、東京で野菜を育てている渡辺裕太さん。
今回のトークショーでは、「野菜ソムリエがみた東京産野菜の魅力」をテーマに、地産地消で新鮮な野菜を味わえることの幸せや、野菜に興味を持ったきっかけ、現在育てている野菜の話、さらには青梅市で農家さんと取り組んでいるニンニク栽培、そして今後挑戦してみたいことまで、渡辺さんの野菜への想いがたっぷりと語られました。
「トマトは加熱したほうがリコピンの吸収率が高いなど、調理法を知ることで野菜をもっとおいしく食べられるようになりますし、生産地を知ることで『あれも食べてみたい、これも!』と興味が湧いてくるんです」と、渡辺さん。
現在はプランターで、シソ・ナス・ズッキーニを育てており、「朝起きて野菜が育っているのを見ると、つい『おはよう!』と声をかけてしまいます。まるで家族のように」と、ほほえましいエピソードも披露してくれました。
また、会場に来ていたお母さんから「子どもが食べられない野菜をどうしたらいいですか?」という質問が寄せられると、「好きな料理に細かく刻んで入れるのがいいですね」と、やさしくアドバイスしていました。

プランター収穫体験
メインステージの横には、収穫体験用にコマツナ、キクラゲ、シイタケの3種類のプランターや菌床が並びました。
参加者はまず、講師による丁寧なレクチャーを受けた後、シャベルやハサミを手に収穫体験に挑戦しました。



「コマツナが思ったよりもしっかり根を張っていて、なかなか抜けなかった!」と、想像以上の力仕事に苦戦しながらも、親子で声を掛け合いながら協力して収穫する姿が印象的でした。
土や植物と触れ合いながら、一つひとつの作業に夢中になっている姿からは、貴重な体験を心から楽しんでいる様子が伝わってきました。
サブ会場で、「料理教室」
サブ会場の新宿調理師専門学校で、料理教室が開催されました。
事前申し込みをした小学生以上の20組が、プロ用の設備や機器が整った専門学校で調理体験に挑みました。
挑戦するレシピメニューは、東京で生産されたトマトとコマツナを使ったパスタ。
講師を務めたのは、トークショーにも登壇した渡辺裕太さん。
新宿調理師専門学校の先生や生徒たちが、参加した親子のサポート役として加わり、和やかな雰囲気の中でスタートしました。



調理前、東京都産業労働局職員の池田さんが「東京でもたくさんの野菜が作られているんですよ」と紹介し、「東京産野菜の出荷額、1位は? 2位は?」というクイズで会場を盛り上げました。
正解は、1位がトマト、2位がコマツナ。
「今日はこの2つを使って『採れたて野菜としらすのペペロンチーノ風』を作ります!」と発表されると、子どもたちは期待に胸をふくらませていました。
トマトは、日野市「ネイバーズファーム」のカラフルなミニトマト(黄色・黄緑・赤)。
コマツナは羽村市産で、子どもたちがメイン会場のプランターで収穫したばかりの新鮮なものです。

調理の前には、渡辺さんが「包丁は引く感じで!」「みんな見とけよー!」と声をかけ、楽しくデモンストレーション。



小松菜は1cm幅に、ミニトマトは半分にカット。塩ひとつまみとガーリックオイルで小松菜を炒め、そこに茹で汁としらすを加えて煮込みます。
とろみが出たところでミニトマトとパスタを加えて絡め、仕上げにたっぷりのしらすをのせて完成です。




この日、初めて包丁を手にしたというお子さんも、周囲の大人たちがドキドキ見守るなか、一生懸命に調理に取り組んでいました。
参加したお母さんのひとりは、「普段はトマトが苦手で食べない子が、自分で作った料理は頑張って食べていました。自分で作ることって、本当に大事なんだと感じました。」と、うれしそうに話していました。



渡辺裕太さんにイベントを振り返っていただきました
「最初は、料理体験に無理やり連れてこられたような感じで、くねくねしながら話を聞いていた子どもたちが、僕が包丁で野菜を切ったり、火を使って炒め始めた瞬間に、目の輝きが変わったんです。みんな前のめりになって見てくれて、嬉しかったですね。」と渡辺さん。

デモンストレーション中も子どもたちを明るく盛り上げる姿が印象的でしたが、ご本人いわく「もともと子どもと“わちゃわちゃ”するのが好き」なのだそう。
「早いうちから“作る楽しさ”や“料理する喜び”を知ってほしい」とも語ってくださいました。

収穫体験については、こんな話も。
「僕もバーニャカウダーソースの開発のために、農家さんと一緒にニンニクを栽培しているんですが、1人よりも2人、友人に手伝ってもらうだけで作業のスピードが全然違うんです。農家さんは『こんな大変なことさせてごめんね』と言ってくれるけれど、僕らは『貴重な体験をありがとう』という気持ちでやっています。
きっと、都内には子どもに収穫体験をさせたいお父さん・お母さんがたくさんいて、受け入れてくれる農家さんの情報がちゃんとつながっていったら、もっと広がっていくんじゃないかな。」と話してくれました。
最後に、改めて“東京産野菜”の魅力について伺うと――
「収穫されてから栄養分が損なわれる前に食べられるのが、一番の魅力だと思います。みずみずしくて、本当においしい。東京都民にとって、大切な野菜です。」と、東京産野菜への想いを語ってくださいました。


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一般社団法人MURA理事
山内 翠/MIDORI YAMAUCHI
2000年生まれ。赤坂生まれ育ち。赤坂のまちで生きる人々の意思や美しさを伝えるために、場を開いたり、文章を綴るなどして活動。
2024年より赤坂見附に位置する“東京農村”を運営する、一般社団法人MURA理事に。企画・運営を担当。