材木業からお酢づくりの会社へ

人類が最初に作った調味料だと言われるお酢。日本料理を代表する寿司にも欠かせない調味料です。なかでも、特に江戸前寿司に欠かせないと言われるのが赤酢。長期熟成させた酒粕を原料として造る濃厚なお酢です。その赤酢づくりを得意とするのが、横井醸造工業株式会社。もともと材木業を営んでいた初代が、築地での寿司屋の活気に注目して、食酢づくりへと業種を変えたのがスタートだったそう。おかげで、食酢づくりに必要な桶や樽をつくる材料には困らなかったと言います。
今では、都内にある寿司屋のほとんどが横井醸造の酢を使っていると言われるほど、関東一円の江戸前寿司店には欠かせない存在の醸造元です。名レストランを格付けする有名ガイドブックに掲載されている都内の多くの寿司屋さんがここのお酢を使っているというから驚きです。
そこで今回は、東京都地域特産品認証食品・イイシナにも選ばれている「ヨコ井の酢」の魅力を探るべく工場見学してきました!

愛情と手間をかけてお酢をつくる

工場を見学する前に、まずは映像で横井醸造とお酢づくりの基本について学びます。
ヨコ井の酢は寿司屋だけでなく、中華料理などの飲食店やホテルのほか、マヨネーズやドレッシングを作る時の原材料として、食品メーカーなどでも広く使われています。生産されるお酢のほとんどが業務用ですが、最近ではスーパーマーケットやデパートなどで扱う個人向けの商品も充実。果実酢や飲むお酢など種類も豊富に揃っています。
どのタイプのお酢でもまずは酒造りからスタートし、長い工程を経てお酢になります。中でも、こだわりと自信を持ってつくっているのが赤酢。酒粕が原料で、味はしっかりとしていて濃いのが特徴です。その風味を出すために数年かけて室温で熟成させるのですが、発酵する間の温度調整などは機械管理ではなく、すべてスタッフの手作業。発酵のスピードなどを予測しながら、日々しっかり見守って大切に育てます。

縦型工場でつくられるお酢

映像を見終わったら、いよいよ工場見学です。今回コースを案内してくれたのは、代表の横井太郎さん。
4階建ての工場は各フロアの天井が高いため、通常のマンションだと8階建てぐらいの高さがあるとのこと。
「4階に材料が寝かせてあって、お酢づくりの工程が進むにしたがって、重力に従って下のフロアに下りていく仕組みです。3階ではアコーディオン状の圧搾機で絞って、出来たお酒に酢酸菌を入れて発酵させています」。
長期熟成のものだと、4~5年ほど寝かせることもあるそう。
「匂いもどんどん変わります。最初はお酒の匂いだったのが、1年ぐらい経つと奈良漬のような香りになる。さらに熟成させると甘さのある、紹興酒みたいな香りになるんです。酒かすもどんどん茶色く、濃くなっていきます」。
タンクが並ぶ2階は、果実酢や寿司酢などに作り分ける「調合」フロア。かつてはタンクではなく木の樽が使われており、当時使われていた木の樽のひとつが、現在は正門横で看板として利用されています。風情ある木の樽は、かつて材木業を営んでいた会社の歴史も感じさせます。

お酢で健康に!?

見学のあとはお酢の試飲も。初心者にも飲みやすいという「赤のぶどう酢」をいただきました。
飲むお酢というと、鼻にツンときたり、むせたりしないかちょっと心配だったのですが……
まったくそんなことありませんでした! クセもなく、ほんのり甘くてサッパリ飲みやすい味。
お酢は、1日15cc摂取すると良いと言われているそうですが、水で割って、コップ1杯飲むとちょうどそのぐらいの量が摂取できるので毎朝飲めば健康になれるかも! 炭酸で割ったり、焼酎で割ったりして飲むほか、バニラアイスやヨーグルトにかけるのもおすすめなんだとか。
「テレビ番組の企画で、お酢が健康に良いか調査するということで社員の血液検査をしたことがあるんです。その時に採血した医師が、注射針を刺しただけで『これはいい血管だ』って言うんですよ。結果、実験した全員が健康で。やっぱりお酢は身体にいいのかなと思いましたね」。

いろんなお酢を食卓に

さらに看板商品の「真黒酢」も試飲。普通の黒酢に比べてもさらに真っ黒! テーブルに置いてあったら醤油と間違えてしまいそうな色です。ツンとくることもなくまろやかで濃厚な味わい。通常は液体を発酵して作るお酢ですが、この「真黒酢」は、固体発酵という特別な方法で作られています。かける手間も多ければ、原材料も通常の黒酢の数倍使うというから驚きです。
「これだけ濃くて複雑な味わいの黒酢はなかなかないと思います。小龍包や餃子につけて食べると、抜群に旨味が増しますよ」
他にも寿司酢やカニ酢、飲むお酢など豊富なラインナップで、飽きずにお酢を毎日の食卓に取り入れられそう。健康やダイエットにもいいと言われるお酢、もっと積極的に使いたくなりました!

今回の取材担当より一言!

お寿司に欠かせないお酢を東京で作っているなんて初めて知りました。またお酢にもいろいろな種類があり、使用用途によって細かく使い分けていることにびっくり!お酢は料理の裏方役ですが、その存在の大きさを知ることができた取材でした。

RELATED ARTICLERELATED ARTICLE

トピックス

「フローリスト農家」が目指す、ちょっぴり豊かな暮らしの提案。

トピックス

【第12回】「まちのタネ屋さん」は進化する!~野村植産と東京西洋野菜研究会

トピックス

【第11回】ヤギのナチュラルチーズで新規就農! 東京の山地農業にも勝算あり「養沢ヤギ牧場」

トピックス

給食という名の愛と導き 中野区立緑野中学校 

トピックス

新春特別寄稿『都市に農地を創るときが来た』

トピックス

陽のあたる縁側 すぎのこ農園

トピックス

【第10回】目黒で農地を残すには?コミュニティの拠点として都市農地を守る  目黒区「八雲のはたけ」

トピックス

【第9回】小松菜400連作!「全量残さず出荷、それこそが一番のエコだと思う」 江戸川区 小原農園

トピックス

【第8回】落ち葉を重ねて数百年 『 武蔵野の黒ボク土』をコミュニティで掘り下げる! 三鷹市 冨澤ファーム

トピックス

【第7回】女性が主体となれる農業経営の仕組みづくり( 株式会社となったネイバーズファームの狙いと可能性)

ページトップへ