都市のまんなかで育つ「循環する畑」
こんにちは!管理栄養士・お野菜料理家として活動する二児の母、今村結衣です。
野菜や果物は、栄養だけでなく「物語」を持った食べもの。どんな土地で、どんな人が育てたのかを知ると、不思議と味わい深く感じられるものです。食材の背景にある想いを感じながら、食卓に「おいしい」という笑顔が自然と広がる時間を届けたい。そんな願いを込めて、畑と食卓をつなぐレシピやコラムをお届けしています。
今回の舞台は、東京・三鷹市。 見慣れた住宅街の景色の中に、突如として現れる鮮やかな緑!そこだけ別世界のように力強い土の営みが広がる「鴨志田農園」をご紹介します。
アスファルトのすぐ隣でこの景色が保たれているのは、ここがただの畑ではなく、街と手を取り合い「共生」している場所だから。生ごみコンポストや完熟堆肥を活かした『循環する畑づくり』を通じて、小松菜や里芋など、土の力を蓄えた野菜たちがどのように育まれているのか。都会の真ん中で息づく命のサイクルを、親子で一緒にのぞいてみましょう。
三鷹市の住宅街にある鴨志田農園は、一見すると「こんなところに畑が?」と驚くような場所にあります。
住宅に囲まれた限られた面積の中で、自家製堆肥にこだわり、多品目の野菜を育てる畑は、都市農業の可能性がぎゅっと詰まった最前線の現場です。
園主の鴨志田さんは、もともと高校の数学教師という異色の経歴の持ち主。お父さまの他界を機に農業を継ぎ、以来「堆肥づくり」を軸とした循環型農業に情熱を注いでこられました。
落ち葉、もみ殻、米ぬか、赤土。農園のまわりにある身近な資源を組み合わせ、じっくり時間をかけて完熟堆肥をつくり、その土でまた新たな命を育む。そんな『畑の循環』を、日々コツコツと積み重ねていらっしゃいます。
さらに素敵なのが、「生ごみコンポスト」を通じて地域の方々と深くつながっていること。 家庭から出る生ごみを分解し、畑へと還す仕組みづくりは、まさに街全体で命を繋ぐアクションです。
「捨てるはずだったものが、次のおいしい野菜を育てる宝物になる」。そんな循環の喜びを、地域のみんなで分かち合おうとしています。
「脱プラスチック」野菜セットは、野菜が新聞紙に包まれて届く。
こうして愛情たっぷりの堆肥で育った野菜は、驚くほど香りが豊かで、甘みがしっかりしています。
「同じ小松菜や里芋でも、土づくり次第でこんなに味が変わるんだ!」という発見は、大人にとっても嬉しい驚き。
食べることを入口に、「このおいしさはどんな土から生まれたのかな?」と親子で想像を膨らませるひとときは、きっと心豊かな食育の時間になるはずです。
このレシピのポイントは、小松菜の鮮やかな風味、里芋のねっとり感、そして「とろろ昆布」のうま味を掛け合わせること。特別なだしを用意しなくても、素材の力だけで驚くほど深い味わいに仕上がります。
玉ねぎをじっくり炒めて引き出したコクと、蒸した里芋のやさしい甘み。この2つが合わさることで、小松菜をたっぷり150g使っていても、驚くほどまろやかで飲みやすい味わいになるんです。
仕上げに粉チーズをパラリ。お味噌との「発酵食品コンビ」は相性抜群で、お野菜が苦手なお子さんでも「これなら飲めるかも!」と一口チャレンジしやすい一品になりました。
このとろ〜りとした口あたりは、すべて里芋ととろろ昆布による「植物性のとろみ」だけ。小麦粉や生クリームを使わず、素材の力だけで完成するポタージュは、体に優しく、日々のごはん作りにも気軽に取り入れていただけます。
● 小松菜…150g
● 里芋…250g〜300g
● 玉ねぎ(小さめ)…1個(約100g)
● とろろ昆布…5g
● 水…200ml
● 味噌…大さじ1(お好みで調整)
● 牛乳または豆乳…300ml
● 油…小さじ1
● 塩…少々
● 粉チーズ…適量(仕上げ用)
1.玉ねぎをじっくり炒める。まずは玉ねぎを弱火で丁寧に炒め、素材が持つ本来の甘みを最大限に引き出します。
・玉ねぎは繊維を断つように薄切りにする。
・鍋に油と玉ねぎ、塩少々を入れ、弱めの中火でじっくり炒める。
・辛味やツンとした香りがなくなり、甘い香りが立ってくるまで炒める。
2.里芋の下準備。里芋は蒸して、温かいうちに皮をスルッとむいておきましょう。
・里芋はよく洗い、皮つきのまま蒸すまたは茹でる。
・竹串がスッと通るまで15〜20分加熱し、ザルにあげて皮が乾いたら、手で押し出すようにして皮をむく。
・むいた里芋が大きければ、ひと口大に切る。
3.小松菜をカットする。小松菜は火が通りやすいよう、ざく切りにしておきます。
・小松菜はよく洗い、水気を切って2cm幅程度に切る。
4. とろろ昆布と一緒にコトコト煮る。お鍋に具材と「とろろ昆布」を合わせ、旨みをじっくり引き出しながら煮込みます。
・1の鍋に2の里芋ととろろ昆布、小松菜、水を加える。
・小松菜が鮮やかな緑色になったところから3〜5分ほど弱めの中火で煮る。
5.ブレンダーでなめらかに。ハンドブレンダーを使い、全体がとろとろのポタージュ状になるまで仕上げます。
・火を止め、ハンドブレンダーで全体をなめらかに撹拌する。
6.味噌と牛乳で味を整える。お味噌を溶き入れ、牛乳を加えてまろやかな味わいに。最後に味を優しく整えます。
・再び弱火にかけ、味噌と牛乳または豆乳を加え、全体を温めながら味を見る。
・必要であれば塩で味を整える(粉チーズの塩味もあるため控えめに)。
7.仕上げの魔法をパラリ。器に盛り、仕上げに粉チーズをふりかければ、香り豊かなポタージュの完成です!
・器に注ぎ、仕上げに粉チーズをふりかける。子どもには少なめ、大人には少し多めにふって、好みで調整して楽しんでみてくださいね。
▶「スルッ」とむける感触を体験!
里芋の皮が気持ちよくむけるあの感触を、ぜひ親子で一緒に楽しんでみてください。
「魔法みたい!」という驚きが、食材への興味に繋がります。
▶小松菜の「変身」を観察してみよう!
生のときの色と、火が通って「鮮やかになったあと」の色を見比べてみましょう。
色や香りがどう変わったかな?五感を使って、お料理の不思議を感じてみてください。
▶「とろ〜り」の正体を探してみよう!
このポタージュのとろみ、何からできているのかな?里芋、とろろ昆布、牛乳…。
それぞれの素材がどんなお仕事をしているのかをお話ししながら味わうと、いつものスープがもっと特別なものに感じられます。
生ごみコンポストや完熟堆肥を活かした鴨志田農園の取り組み。それは「食べて終わり」ではなく、その先へと命を繋いでいく、これからの都市農業の形です。
今回のポタージュは、そんな豊かな循環の物語を食卓へと届けてくれる一杯。 「このお野菜、どんな土で育ったのかな?」 「おうちで出た生ごみも、いつかまた美味しいお野菜に変わるんだね」
そんな会話がふと生まれたら、いつものごはんの時間が、東京の農業や環境について想いを馳せる大切なきっかけになるはずです。
あたたかい一杯から広がる『東京の循環する畑』の物語を、ぜひ親子でゆっくりと味わってみてくださいね。

埼玉県出身。二児の母。女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科卒業後、青果物の専門商社でカット野菜工場の品質管理業務に従事。
その後、地域密着型の青果店で野菜の仕入れ、配送、営業等に携わる。その傍ら、野菜の切り方教室を開催。
結婚、出産を経て、野菜や農業に関わる企業のサポートやレシピ記事執筆を行っている。
Instagram▶https://www.instagram.com/ponsan.68/




