2026年も東京産の農産物を楽しみましょう!
100軒以上の都内の生産者と取り引きして「駅前型直売所」を展開する東京農産物流通ベンチャーの社長が、直売所がいかにワクワクする場所か熱く語ります。
TOPイラスト:国立市の農泊ウェブサイト「田園都市TOKYO谷保」より(©NPO法人くにたち農園の会)
あけましておめでとうございます。
今年も平穏無事な年になりますように、とは言いますけれど、そんな年になった試しはなし。(あくまで個人の感想です。)
不惑の歳を超えたはずなのに、惑って惑って、どうにもならない。どうせなら、惑って惑って、惑惑。すなわち、ワクワクという気持ちでポジティブにやっていきましょう。
2026年、ワクワクするものといえば、やっぱりスポーツでしょう。
この原稿はお正月恒例の箱根駅伝が開催される前に書いているんですが、どんな結果でしたか。多摩エリアに住んでいると駅伝部の寮が近所にあったりして、母校でもないのに応援に力が入ってしまうことも。
今年も熱い戦いが見られたことでしょう。
野球はWBC、サッカーはワールドカップ。さてさて、どうなることか。
それと、日本が誇る三冠王、村上宗隆選手の大リーグへの挑戦にも注目です。九州出身ですが、プロ野球に入ってからは東京ヤクルトスワローズで才能を開花させた、いわばTOKYO GROWNな選手。みんなで応援しようじゃありませんか。
そんなスポーツ界に比べれば、野菜の世界はエキサイティングさに欠けるのかも?
いやいや、ほんとうは、エキサイティングなんだけどなあ。
申し遅れましたが、都内で農産物直売所を経営する“直売所社長”こと、菱沼が本稿をお届けしています。
当社では、野菜の品目を花形選手、1軍選手、2軍選手に例えています。売上が多い野菜と少ない野菜というのがどうしてもあるわけです。
そして、これが意外と入れ替わっていたりする。毎年、春夏秋冬、同じ野菜が採れているように見えて、けっこう売れ筋に入れ替わりがあるのが面白いところです。
今ではブロッコリーは不動の四番打者という感じですが、昔はカリフラワーの方が主軸を張っていたのをご存知ですか?
今も根強いファンがいるカリフラワー選手ではありますが、ブロッコリー選手がぐんぐん伸びて抜いていきました。そして、2026年、なんと農水省の「指定野菜」になるという超大型契約を獲得します。
大半の直売所でブロッコリーは売上トップ5に入ります。でも、その地位も油断ならない。
おしゃれな登録名のスティックセニョール選手やカリフローレ選手がその座を狙う。茎ブロッコリーや茎カリフラワーと呼ばれる彼ら(彼女ら?)は、料理の時短を願う消費者の救世主を目指します。
カリフローレ(茎カリフラワー)。洋食はもちろん和食にも使える。
直売所の経営には欠かせない、圧倒的な集客力を誇るツートップがいます。(急にサッカーになる。)
それが、トウモロコシとエダマメ。
キング・オブ・直売所とプリンセス・オブ・直売所。
なんでプリンセスなのかって?「おつな姫」という品種がエダマメ界の主力だから。
対するトウモロコシの品種名は、「ゴールドラッシュ」「おおもの」「ドルチェドリーム」と、なんだか自信ありげな名前が多い。だから、キング。まあ、「甘々娘」(かんかんむすめ)とかもあるけどね。
キングも安泰とは言いきれない。黒ずくめの組織ならぬ、白ずくめの奴らに追われている。
「雪の妖精」や「ホワイトショコラ」を筆頭に、黄色い玉座を白く染めてやろうという白色コーンの人気が上昇中なんです。きっと一度は食べたことがあるでしょう。
そうそう、キングといえば、キング・カズこと三浦和良選手。今年も現役続行とのこと!
直売所でもレジェンドに注目してほしい!
東京では、昔から食されてきたレジェンド野菜たちを「江戸東京野菜」と呼んでグループにしています。
おしもおされぬ東京名産、「東京うど」や「練馬大根」。レギュラーを張り続けて100年以上。まだまだ若いヤツには負けないぜ。
見た目の売上は多くはないけど、スーパーサブ的な野菜、いぶし銀的な野菜もお店にとって大事です。
たとえば、ギンナン。三鷹市が名産だって知っていましたか?
八王子の直売所では生キクラゲを見かけます。干しキクラゲとは違うプリッとした食感にハマる人も多いです。
一軍選手が減ってくる夏の時期には、ツルムラサキやモロヘイヤ、クウシンサイが大活躍します。選手層の厚さって大事です。
近年、遠く地中海からの殴り込みも増えてきました(そんな物騒な話じゃないか)。東京産のイタリア野菜が、直売所の店頭でじわじわと増加中。
カーボロネロやラディッキオはまだまだレギュラー選手とはいえないけど、ロマネスコなんて、おいら昔からいるけどなにか?みたいな顔をして店頭に陣取っています。
個人的には、ワイルドルッコラとも言われる「セルバチコ」に潜在力がある気がします。
幾何学的な形のロマネスコ。多くの直売所で見かけるようになった。
というように、野菜界もなかなかにエキサイティング!水面下で、店頭での陣取り合戦が繰り広げられているのです。
直売所社長としては、あまり食べたことないな、料理したことないな、という野菜にもぜひチャレンジしてみてほしいです。それは、もしかしたら、次世代のスターかもしれませんし、復活を遂げたレジェンドかもしれません。
さて、TOKYO GROWNな野菜たちを食したいときには、とりあえず近所の直売所に行くという方が多いと思います。
そこで、都民の皆さまへ、お年賀として、直売所社長による「直売所の歩き方 5か条」を差し上げたいと思います。もっと直売所が楽しくなること間違いなし。
では、さっそく参りましょう。
第1条 その日のうちに食すべし
まあ、当たり前なんですけど!
せっかくの地元産、鮮度が高いうちに食べないともったいないですから。できることならば買ったその日のうちに食べていただきたいです。
とくにキング(トウモコロシ)とプリンセス(エダマメ)は間違いなく当日にお願いします。
それと、もうひとつ理由があります。
地元の農家さんはギリギリまで熟したものを収穫します。トマト、イチゴ、イチジクなど。
ほんとにギリギリ、明日になったら完全アウトっていう熟し具合の商品も入荷しています。だから、すぐに食べてください。でも、それがうまい。青いうちに収穫する大産地とはやはり違うと断言しておきます。
ちなみに、トマトは多くの直売所で絶対的エース、売上第1位の野菜です。
東京はトマト農家が多い地域。お気に入りのトマト農家をぜひ見つけてください!
イチジク。完熟してから収穫できるのは地元農家の特権だ。
第2条 農家やスタッフと話すべし
農家さんや直売所のスタッフは、同じ街に住む仲間。気楽に声をかけてみましょう。
話しかけるのは勇気がいるって?それ、農家さんも同じですから!
一流のスポーツ選手でも口下手な人はいますよね。それと同じように、シャイな農家さん、多いです。でも、話しかけられるのを待っていることもわりとあります。
あと、そうですよね、見た目がヤンキーな農家さん、いますよね。話しかけにくいですよね。分かります。でも、東京には、心優しい農家さんしか生息していないです(当社調べ)。
もし話が盛り上がったら儲けもの。野菜の食べ方はもちろん、栽培の工夫とか、地域の歴史とか、そういう話が聞けたら食卓がちょっと豊かになりますね。積極的に話しかけていきましょう。
第3条 “推し農家”を見つけるべし
時代は推しですよ、推し。
自分が好きならいいんです。他人の好き嫌いは関係ない。
JAの共同直売所では農家さんの名前がラベルに書いてあります。農園の可愛いロゴマークがついた商品も増えています。今日の野菜はとくにおいしいなと感じたら、ぜひ同じ農家さんをリピートしてください。もちろん出会えない日もあるでしょう。出会える日を待つのも、推し活の楽しみのひとつと心得ましょう。
推し農家さんを1人2人持っているのが、ほんとうの野菜通というもの。
ちなみに、直売所社長としては、直売所そのもののファン、すなわち「箱推し」もお願いしたいところです!
第4条 野菜・果物以外のお宝も探すべし
野菜や果物だけ見ていたら、直売所の魅力の半分しか体験していないかも。
まずは畜産品です。卵やお肉、牛乳、ハチミツなど。あきる野市にはヤギのチーズがあります。もう試しましたか?
農産加工品もいろいろ見つかるはず。漬け物やピクルスは美味しいものが多いです。地元の醸造所と連携したクラフトビールもよく見かけるようになりました。伊豆諸島の直売所ならパッションフルーツやレモン、アシタバを活用した農産加工品が見つかります。
冷凍ケースのなかも要チェック。美味しい冷凍食品は密かなトレンドです。たとえば、練馬区にお住まいなら、特産キャベツを使った冷凍餃子はいかがでしょうか。
きっと、販売棚の片隅で、地元のお宝が見いだされるのを待っています。宝探しのつもりで、畜産品や加工品も楽しく選んでみてください。
畜産品や加工品の多くは365日買えるというのが野菜や果物との違い。旬の移ろいを感じられるのが直売所の素敵なところですが、同時に、通年で食卓を彩ってくれる商品も見つかれば、最高ですよね。
産みたての鶏卵は、直売所でぜひチェックしてほしい。
さて、さいごの第5条。
これを伝えて、今回の締めくくりとしたいと思います。
第5条 “おいしかった”を伝えるべし
スーパーマーケットで買った野菜が美味しかったからといって、スタッフさんに「おいしかった」と伝えますか?そういう人はあまり多くないでしょう。
伝えたからといって、スーパーのスタッフさんが農家さんに「おいしかったと評判ですよ」と伝えることはできるでしょうか?なかなか難しいでしょう。
その点、直売所は違います。
農家さんの庭先直売であれば農家さんに直接伝わりますし、私たちが経営するような共同直売所でも、農家さんと消費者との間にあるのはお店だけ。
直売所スタッフに野菜の感想を言っていただけたなら、その襷(たすき)は、農家さんにきっと渡します。
ここに地産地消の素晴らしさがあります。
農家さんがおいしいものを作っても、市場に出荷していると、なかなか評価が分からないもの。
直売所であれば、食べたみなさんの声がダイレクトに聞こえます。
その声がまた次の年の栽培のやる気につながり、さらにおいしい野菜になってお店に返ってくる。
そして、「もっとおいしくなった」の声をいただいて、さらに栽培方法の研究に熱が入る。
地産地消とは、“狭い街のなかでぐるぐると巡る感情のループ”です。
そのループをスタートさせるのは、地元の消費者のみなさんです。
「おいしかった」のひとことが、来年のさらにおいしい野菜へとつながります。
以上、「直売所の歩き方 5か条」でした。いかがだったでしょうか。
都民のみなさんと農家さんとの襷をつなぐ。
それが僕ら直売所の役割です。その責任を日々痛いくらいに感じます。でも、ワクワクもしています。
僕らからすれば、農家さんが、暑い日も寒い日も畑に出て丁寧に育てた野菜は、キラキラと光ってみえます。まあ、言い古されている表現ですけど、愛情がこれでもかと詰まっている。
そんなキラキラした商品を並べておいてワクワクするなという方が無理というもの。
TOKYO GROWNな野菜の魅力を伝えるべく、僕らもさらに知恵を絞っていくことを新年にあたって誓いたいと思います。
今年はどんな野菜が売れるかな?
レギュラー陣が相変わらず頑張るか、次世代スターの台頭か、はたまたレジェンドの復活か。
ふふふ、楽しみです。
さあ、いらっしゃいませ!

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株式会社エマリコくにたち代表取締役
菱沼 勇介/Yusuke HISHINUMA
1982年生まれ。一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。
2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。
2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。都内の多数の生産者をネットワークし、“背景流通業”を掲げて駅前型直売所「しゅんかしゅんか」や飲食店など幅広く展開する。
「東京農サロン」主宰メンバーのひとり。
























