多摩産材を守るために重ねる努力
塩野さんの行う「主伐」とは、苗木を植えて新しい森林を育てるために森林の全部(または一部)を伐採すること。これに対して、木々の密度を調節して生育を助けるために一部を伐採することは間伐と呼ばれます。見学させていただいたのは青梅市の吉野街道から車で5分ほど入った森林での作業。この現場はまだ着手したばかりで、取材当日行われていたのは測量作業でした。これから9haという広大な森林を約1年半かけて伐採していきます。 「測量が済んだら図面をにらんで計画を立てる。『どこに集材機を通す道を拓いて、どこから伐採するのが効率的で安全か…』なんてことを考えていると夜も眠れなくなるよ」と塩野さんは苦笑いを浮かべます。眠れないほどに考え抜き、安全への配慮を欠かさない、こうした努力の積み重ねが良質な多摩産材の供給を支えているのです。短くても50~60年という周期で伐採と植林を繰り返し、昔より続いてきた東京の林業。その林業を担っているすべての人々が、同様の努力を昔から重ねているのでしょう。