養蜂家としてのスタートはアルゼンチン

貴重な多摩産のはちみつを製造している、「みつばちファーム有限会社健康自然工房」。代表の犬飼博さんが養蜂を始めたキッカケは、20歳の頃に決意したアルゼンチンへの移住でした。
アルゼンチンで何を仕事にしようかと悩んだ犬飼さんは、養蜂に着目。静岡で1年間、養蜂の基礎知識を学び、アルゼンチンへ。その後約20年間、アルゼンチンの広大な牧草地の中でミツバチの生態にふれ、日々はちみつ作りに勤しみました。

帰国後、あきる野市で養蜂をスタート

アルゼンチンからの帰国の引き金になったのは、アフリカナイズドミツバチ、通称「キラービー」の猛威でした。攻撃性が強く獰猛で、人間の死亡例も多く、恐れられているキラービー。このハチがアルゼンチン北部まで勢力範囲を拡大し、従来のミツバチが激減。養蜂が出来なくなってしまいました。

帰国を決意した犬飼さんは、ぜひ関東で養蜂を始めたいと候補地を探し始めることに。もっとも養蜂に適していると感じたのが、あきる野市でした。山には山桜や藤の木、アカシアなどの花が咲き、近くには綺麗な水が流れる川もある。自然豊かで都心にも近いあきる野市で、第2の養蜂家人生がスタートしたのです。

妥協せず、良いものをお客さんに届けたい

あきる野市での養蜂は、アルゼンチンの養蜂とは少し方向性を変えて挑みました。大量生産するのではなく、自分たちの目の届く規模で運営。妥協せず、こだわりを持って、品質の良いはちみつをお客さんに届けたい。大量生産ではなく、手作りだからこそできるアイデアが大切でした。

犬飼さんのアイデアが見えるのが、巣箱の形状。普通の巣箱よりも底の空間を6センチ広くすることで、巣箱内の熱を逃がしたり、空気の循環を良くしました。また、入口部分を幅広くし、ミツバチたちの移動をスムーズに。ミツバチが元気に生活しやすい環境を整えたお陰で、なんと従来のやり方と比べて生産量が倍になったそうです!ミツバチのためのアイデアが、効率のいいはちみつ作りへの近道となりました。

ミツバチの無限の可能性

みつばちファームさんでは、ミツバチの生み出す健康成分にも着目しています。3年間研究を積み重ねて生み出したのが歯周病や虫歯菌の抑制に効果が期待できる「ジャラX プロ」。傷の消毒や、ピロリ菌の抑制などにも使われている「じゃらはちみつ」と、抗菌作用の強い「水溶性プロポリス」を合わせた天然の抗菌薬です!しかも飲みやすいので、苦にならないところもポイント。人間はもちろん、成犬の歯周病予防にもオススメなんだとか。

他にも、はちみつと生のローヤルゼリーを混ぜ合わせ、飲みやすくした「はちみつ生ローヤルゼリー」など、ミツバチの生み出す健康成分をもっと身近に、多くの人に届けようと、日々商品開発にも力を注いでいます。

次の世代へレールを敷く

後継者不足に悩む業種が多い昨今ですが、犬飼さんの養蜂場では、すでに跡取りとなる後継者がいらっしゃいます。身内にこだわらず、やる気と能力のある人に自分の養蜂場を引き継ぎたいと考えた犬飼さん。養蜂に興味があり、会社に入社してくれた石原さんを後継者に選びました。

養蜂家はこだわりが強すぎて、頭が固い人が多いと口を揃えて言うふたり。犬飼さんと石原さんも意見が異なり衝突することがあるそうですが、よく話し合うことで解決しているそうです。違う人間なんだから、考えが違うのは当たり前。次の世代へレールを敷いてあげて、その後は止まることなく試行錯誤を繰り返して欲しい。犬飼さんが笑顔で語る傍らには、頼もしく微笑む石原さんの姿がありました。多摩のはちみつのこれからが楽しみに感じられたひと時でした。

犬飼 博さんへの一問一答

QUESTIONS AND ANSWERS

Q.オススメのはちみつの食べ方は?
A.カレーやパンケーキなど、お料理で使うのがオススメ!
風味が豊かになって美味しいです。
Q.趣味は?
A.ミツバチ一筋!休みもないので、毎日ハチのことばかり考えています。
Q.オリンピックに向けての意気込みは?
A.「Eマーク」を取得しました。(商品に込めた思いやこだわり、味や品質等を審査し、「東京の特産品」に認定されると付与される、東京都独自のマーク。)
今後もより多くの人に自慢のはちみつを届けたいです!

みつばちファーム健康自然工房 代表

犬飼 博さん/INUKAI Hiroshi

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