歴史に翻弄された野瀬農園
野瀬さんの4代前のご先祖が、この地にやって来たのは日本人の小笠原への入植が始まった明治9年(1876)のこと。当時は、農業指導でマンゴーをはじめとしたフルーツやコーヒーなどの栽培が奨励されていました。野瀬家のご先祖たちも父島の山野を切り開いて農園を広げていきました。そして昭和9年(1934)、昭雄さんが生まれました。昭雄さんは農園での生活が大好きでしたが、10歳の時に転機が訪れます。太平洋戦争の戦況悪化によって日本人に強制疎開が命ぜられたのです。その後、野瀬さんが父島に戻ってきたのは、昭和43年(1968)に小笠原が日本に返還されてから数年後のこと。28年ぶりに家族を残して単身で野瀬農園に戻ったところ、農園は見渡す限りのジャングルに変貌していました。
