都民の皆さまに森の魅力をもっと身近に感じていただくため、(公財)東京都農林水産振興財団では森林浴登山を定期的に開催しています。
9月27日(土)に訪れたのは、四季の息づかいを全身で感じられる「南高尾風景林」。
国有林であり、林野庁の「レクリエーションの森」にも指定される、豊かな自然が広がるエリアです。

かつては皇室の御料林としてスギやヒノキが植林されましたが、現在は“多様で豊かな森の再生”を目指し、ボランティアによる手入れが続けられています。
心地よい風、野鳥のさえずり、木々の変化を感じながら歩く約8.5km・5時間のコースは、まさに「癒しの森歩き」。参加者全員で森林浴を存分に楽しみました。

京王線高尾山口駅前に集合

当日の集合場所は高尾山口駅前。朝9時の集合でしたが、土曜日の駅前は多くのハイカー、家族連れ、グループでにぎわい、真夏の暑さが少し落ち着いた時期ということもあって、いつにも増して混雑していました。駅前の様子だけでも、高尾山の人気ぶりが伝わります。

駅前から数分の「TAKAO 599 MUSEUM」の広場へ移動し、参加者全員で準備体操を行いました。
同館は2015年にオープンした高尾山麓の施設で、高尾山の魅力や情報を発信するとともに、“これからの高尾山”を考える場として、このエリアの重要な拠点となっています。お洒落なカフェや広場もあり、訪れる人々の憩いの場として親しまれるスポットです。

(写真左)「TAKAO 599 MUSEUM」 の広場でインストラクターから説明を受ける参加者 (写真右)出発前にみんなで準備体操

参加者のみなさん

当日のメンバーは、一般参加者18名、森林インストラクター東京会(FIT)の森林インストラクター7名、財団職員3名の計28名。私もその一員として、4つのグループに分かれて行動しました。

都内からお一人で参加されたOさんは、「森に生きる植物に触れ、その成り立ちや、どのような環境で成長しているのかを知りたくて来ました」と話され、ご家族で参加されたAさんは「普段は車でキャンプに行くことが多いのですが、家族で登山は初めてなので楽しみです」と嬉しそうに話していました。年齢も構成もさまざまな方々が参加されており、私自身もワクワクした気持ちでスタートしました。

森林インストラクター東京会(FIT)の森林インストラクターは、東京の森林を活動拠点とし、森と共生し、森を守ることを理念に活動している団体です。自然と触れ合う機会が少ない子どもたちや大人たちに、自然体験や野外活動を通じて環境の大切さや魅力を伝えています。

私が帯同したグループのインストラクター・Hさんの、植生への深い知識と丁寧な説明には何度も驚かされました。歩きながら聞く一つひとつの解説が森の姿を立体的にしてくれて、自然への愛情と探求心がまっすぐに伝わってきます。学びの多い、とても豊かな時間でした。

登山開始です

準備運動を終え、全員で集合写真を撮影したあと、9時40分頃に各グループに分かれて出発しました。

最初は甲州街道沿いを歩き、「高尾山IC」を越えて「梅ノ木橋」まで約2km弱を30分ほど歩いていきます。
普段なら何気なく通る道も、登山の入口として歩くと視点が変わり、道の横を流れる案内川の存在に自然と目が向きました。

(写真左)甲州街道沿いを歩き登山口へ向かう (写真右)高尾山IC付近に到着。交通量も多く賑やかなエリア

川沿いには日常では気にも留めない植物が数多く生えており、歩き始めから早くも発見の連続です。
私は植物に詳しくないので、インストラクターさんのそばで解説を聞きながら、ひとつ一つ学びつつ歩きました。

(写真左)川沿いに咲くオオモクゲンジ (写真右)季節を彩る彼岸花

梅ノ木橋から山の中へ

梅ノ木橋を渡ると国道を離れ、林道へ。最初は住宅が点在しますが、徐々に静かで落ち着いた雰囲気に変わっていきます。
「梅ノ木平林道」を約1km、30分ほど歩くと「高尾グリーンセンター」に到着。

ここは自然体験や研修などに利用できる施設で、宿泊も可能。森の中で自然に触れながら学べる魅力的なスポットで、車でアクセスできる点もありがたく感じました。

(写真左)梅ノ木橋で小休止 (写真右)林道を進み「グリーンセンター」へ向かいます

三沢峠へ

小休止の後、いよいよ登山道に入り、11時頃に山道のスタート。湿った木の根に注意しながら慎重に進みました。

(写真)湿った木の根に気を付けながら、静かな森林の中を進む

30分ほどで「三沢峠(401m)」に到着。スタートから約4km、所要2時間ほどと、ここまで順調なペースです。
峠ではしっかり休憩をとり、再び全員で集合写真を撮影。山の空気を吸い込みながら次の区間へ向かいました。

(写真)三沢峠で全員そろって集合写真

草戸山でお昼ごはん

三沢峠から少し登ったところにある『榎窪山(420m)』は広くもなく展望もないため、そのまま通過し、昼食ポイントの『草戸山(364m)』へ向かいました。

ここを上がれば草戸山山頂です

草戸山には12時頃に到着し、13時前までお昼休憩。山頂には標識や「山の神」の祠があり、視界も開けているので、みんなでゆったりと昼食を楽しむことができます。

(写真)草戸山の山頂で、景色を眺めながらの昼食タイム

祠の鳥居の先には八王子市街や都心方面を一望できる絶景が広がっており、景色を眺めながらの贅沢なランチタイムとなりました。
空気も澄んでいて、景色を前にすると自然と気持ちもリフレッシュされました。

(写真)八王子市街と都心方面を一望できる唯一の絶景ポイント

下山開始です

休憩後は高尾山口駅を目指して下山します。

(写真)小さなアップダウンが続く下山ルート。慎重に歩みを進めます

草戸山のすぐ近くには「境川源流」のポイントがあり、下側からアクセスすると源流の様子を見ることができます。
境川は町田市までは神奈川県との県境を流れ、その先は大和市、藤沢市を抜け、最終的に江の島から相模湾へ注ぐ川です。私は以前、源流から河口まで歩いたことがありますが、流域ごとに景色や街並みが大きく変わり、とても興味深い体験でした。

(写真)林道整備にあたる方々。快適な登山道を支えてくださっています

草戸峠の分岐付近では、相原側の林道整備の方々が休憩されていました。低山とはいえ、重たい刈払機を背負って峠まで上がり作業される姿には頭が下がります。
私たちが快適に山を歩けるのは、こうした方々のおかげだと改めて感じました。

後半は“核心区間”

ゴールまで残り2km強ですが、ここからが今回のルートの“核心”となる約2時間弱の区間。
下山側は同じ距離の中に20〜30mの細かなアップダウンが10回ほど続くため、想像以上に体力を使います。

朝は薄曇りでしたが、時間が進むにつれて強い日差しが差し込み、気温も上昇。後半になるほど身体に負担がかかります。
さらに、全行程9km弱の後半に差し掛かると疲れも出て、脚が上がらずつまずきそうになる場面も。足元に注意を向けながら慎重に歩きました。

(写真)ゴールまでもう少し。住宅街の裏側に続く下山道

賑わいの裏に、こんな静かな高尾がありました

長いアップダウンを乗り越え、無事に麓へ到着。
高尾山の下山口は住宅街の裏側に突然現れるため、初めて歩く方は少し驚くかもしれません。

その後、スタート地点の「TAKAO 599 MUSEUM」に集合し、各自解散となりました。
土曜日の高尾山といえば「とにかく混雑」というイメージがありますが、今回のルートは驚くほど静かで、ゆったりと自然を味わえる穴場コースでした。
そして何より、終始丁寧に案内してくださったインストラクターの皆さまに心から感謝します。
本当にありがとうございました。

江口 基/Motoi EGUCHI

登山用品ブランドを運営しながら東京都や近隣の山を登っています。
東京都在住なので青梅や奥多摩、高尾、少し脚を伸ばして丹沢山塊等が好きなエリア。
一番好きな東京の山は自宅からも見える「大岳山」です。
Instagram:https://www.instagram.com/yamaneko_mountain_works/

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森林浴登山

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