多摩産材に魅了された山の仕事人 林田耕平さん

木材の香りに包まれていた少年時代

「父は、在来工法(日本の伝統的な木造建築の工法)を守る昔気質の大工でした。家にはいつも国産の杉や檜が積まれていて、僕はそんな香りに包まれて育ったんです。兄は建築士になり、僕もいつしか山で働けたら楽しいだろうなと思うようになりました。山での仕事は今年で19年になりますが、今でもこの仕事が楽しくてたまらないですね。」林田耕平さんは森林整備や多摩産材の加工・販売、森づくり活動のサポートなどを行う東京都森林組合の職員です。その仕事内容は多岐にわたりますが、取材当日は、伐採のお仕事を拝見。前夜にまとまった雨が降ったためか、その日の仕事場である青梅市内の山林には、濃厚な土と木々の香りが満ちていました。山道から急な斜面を登った場所には、重機の音が響き、オレンジのヘルメットを被った作業員たちの姿がありました。立木をつかんで伐採、枝払いし、木材を切り揃えるとともに集積作業も行えるハーベスタという重機から降りた林田さんが、東京産の木材、多摩産材の魅力を教えてくれました。

無垢材は伐採されても生き続ける

「よく地産地消っていいますが、それは木でも同じなんです。例えば青梅市に家を建てるとした時、青梅の山々で育った木で造った家は、その土地の気候や湿気に耐える、つまり長持ちするのです。それから、東京産の木材は無垢材として使いやすい。木は切り倒されても生き続け、呼吸を続けます。夏は湿気を吸って、乾燥する冬には湿気を放出してくれる。何より無垢材は香りがいいし、触れると温かくて柔らかいんですよ。防腐剤処理や塗装した輸入材木に温もりは感じられないですからね。」 実を言うと、林田さんも奥様も都心部で育った都会っ子ですが、だからこそ2人揃って子どもを育てるなら、土があって虫がいて、コンクリートで固められていない川がある、そんな土地を求めていたといいます。現在は青梅市内で2人の子どもを育て、念願のマイホームも建てました。もちろん使用したのは多摩産材。ほとんどが林田さんのチームが伐採した木材で、彼が切り倒した木材を使った柱もあります。

無垢材は伐採されても生き続ける

多摩産無垢材の家で育つ幸せ

「無垢材の床は子どもがジュースをこぼせば染みこんでしまいますし、クレヨンの落書きも落としにくい。でも、シミや落書きや、そんな全部を含めて家族の思い出ですから、まったく気にしませんよ。」と林田さんは微笑みます。杉や檜を育てるという仕事は気の長いものです。植林から早くても40~50年、太い立派な大木になるには80~100年という時間がかかります。だからこそ貴重でありがたいものなのです。まだ林田さんの幼いお子さんたちには「お父さんはどうやらキコリさんらしい」という程度の認識しかありません。しかし彼らがもう少し成長した、ある日に気づくことでしょう。多摩産材の香りに包まれて、温もりのある柔らかな無垢材で造られた家で育ったことが、どれほど幸せであるのかということに。

多摩産無垢材の家で育つ幸せ

東京都森林組合職員

林田 耕平さん/HAYASHIDA Kohei

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