タカベの仕事は潮との勝負
8月下旬の朝5時30分、3隻の船団で出漁です。先頭を行くやや小型の1隻は、3人が乗り組んで魚影を探すなどの役割を担い、後に続く2隻はそれぞれ7~8人が乗り組み、連携して円形に網を立て魚群を囲い込む役割を担います。漁場に着くと、まずはスカシ(魚影を見つける漁師)が海へ飛び込み、泳ぎながらタカベの群れを探します。難しいのは、ただ群れがいればよいというわけではないところ。群れの大きさ、潮の向き、そして2隻が網で囲い込める速度かどうかとの兼ね合いを総合的に判断して合図を出します。スカシが水面に顔を出して手を上げるや、「手ぇ、上げたぞ~っ」と船のあちらこちらから鬨(とき)の声が上がり、タカベとの真剣勝負がスタート。2隻がフルスロットルで放射状に大きく展開して網を広げます。この間に漁師たちは素潜りとフーカー(船上から空気が送られてくるヘルメットを装着しての潜水)に別れて次々と飛び込み、水深20mほどの海底で網を定着させたり、魚が刺さり過ぎて網が倒れないように調整したり、目まぐるしく動き回ります。約20人がフル回転で働き、約10分で網の設置完了。次は全員が船上に上がって網に刺さったタカベごと、よいしょーっ、よいしょーっと網を人力で引き上げます。全員が自分の持ち場で八面六臂の働きを見せ、船上に力がみなぎり渡ります。