東京の自然と林業を守るために 三谷清さん

東京が誇る多摩産材の現状

日本は国土の約2/3を森林が占める森の国です。その首都である東京はと言うと、面積の1/3以上(約36%)が森林です。この数字はちょっと驚きですね。山の斜面にスギやヒノキを植栽し、育て伐採するという林業が日本で始められたのは江戸時代といわれます。現在、ブランド化されている多摩産材(多摩産材認証協議会が認証している木材)をはじめ、多摩地区の優れた木材は多摩川の水運を利用して運ばれ江戸の街並みを作っていました。しかし、東京の、ひいては日本の林業の現状は安価な外国産の木材に押され、あまり明るい状況とは言えません。長年、東京の環境問題や自然保護、林業に関するエキスパートとして活躍され、現在は東京唯一の原木市場である多摩木材センター協同組合の専務理事を努める三谷清さんに東京の林業の現状や、今後の展望などを聞きました。

林業とは50年先を考える仕事

「東京の森林のうち、人の手で植え育てているスギやヒノキなどの人工林の約9割は植栽されてから41年以上たった木々で、すでに伐採できる林齢になっています。しかし、木材価格の下落によって伐採すると赤字となる山が多いのが現状です。実際に伐採搬出される木は最盛期だった1968年の1/7の生産量。木材価格は1/5から高級材に至っては1/10になっているんです。50年前に植栽した人々に現在の状況を想像できるはずはないでしょう。しかし、今後の林業を考えるのは50年後の木材の需要や価格を正確に予想しなければできない。だから、これだという林業政策を打ち出せていないのが現状です。未来のことは分からないとしか言えません。」と三谷さん。「分からない」とは林業の専門家としての真摯な実感なのでしょう。とすると、東京をはじめ日本の林業はこのまま衰退してしまうのでしょうか。森の国から緑が消滅してしまうのでしょうか。再び三谷さんに質問を投げかけます。

林業とは50年先を考える仕事

林業の現場でがんばっている人々

「環境は移動できません。例えばカナダの環境が優れているといって、その環境を輸入することはできない。日本の自然環境は日本が守るしかないのです。コストが合わなくても森林を守る必然性があるのなら、みんなでコストを分担しなくてはならない。林業ではウッドマイレージという発想があります。外材を運ぶには石油を消費するわけだから地球環境のためにその消費を抑えるという地産地消的な発想ですね。毎年の成長量に合わせて立木を伐採、植栽することで継続的な森林経営を行う法正林という考え方もあります。東京の林業でいえば管理コストを下げることも必要でしょうし、樹齢100年以上の高級材のみに特化するという考えもある。」林業の危機を前にして、さまざまな人がもがき、そして模索しています。最後に三谷さんがつぶやくように話してくれました。「僕は70歳だから、あと何年仕事を続けられるのか分からない。でもこれだけは言えます。多摩の山々の現場でがんばっている人がいます。原木市場でも製材所でも、その先の流通の現場でもがんばっている人がたくさんいます。僕は彼らを応援したいんですよ。」

林業の現場でがんばっている人々

多摩木材センター協同組合 専務理事

三谷 清さん/MITANI Kiyoshi

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