多摩川流域の人々が目標をともにして力を合わせて
高度経済成長が叫ばれた1960年代の終わり頃から秋川の本流である多摩川の水質は悪化の一途をたどり、やがて“死の川”と呼ばれるまでに汚染されてしまいました。大きな原因は、急激な人口増加により大量の生活排水や工場排水が流されたこと。川沿いの住民は危機感を募らせ、行政も立ち上がって下水処理施設の整備を進めました。もちろん、美しい川を復活させるためには、支流の秋川をきれいにするだけでは意味がありません。多摩川の源流域、すべての支流、そして東京湾に注ぐ河口域の人々、各地の漁協、行政が力を合わせて努力を重ねることで多摩川は復活しつつあります。
現在、多摩川流域の住民はおよそ407万人。「大きな川が流れる大都市は世界にいくつかありますが、私は多摩川が一番きれいだと胸を張って言えます」と安永さん。アユが遡上できる川を再生するための作業は水質浄化だけではありません。河口から秋川までには多くの堰があり、堰を越えられないアユも数多くいます。堰にはアユが上れるように魚道も設置されていますが、安永さんたちは魚道の入口を見つけられず堰を越えられなかったアユのために、土のうなどを使った簡易魚道を設ける作業を続けています。多摩川中流域でアユを捕獲し、上流域や秋川に放流する作業も欠かせないものです。