島の伝統食「くさや」作りにやみつき 藤井栄作さん

生まれて初めてくさやを食べたその日から

「僕は広島生まれの広島育ち。新島出身の女性と結婚することになって、生まれて初めてくさやを目にした訳です。香りは衝撃的でしたね。世の中には不思議な食べ物があるなぁと思いましたが、食べられないってこともなかったですよ。そんな僕が17年後には、水産加工協同組合の組合長をやって、毎日くさやを作っているんだから、人生っておもしろいものだと感じます。」藤井さんの奥様のご実家は新島で120年近く続く、くさや製造・販売店の老舗です。結婚後、彼はその伝統を継ぐため島へとやって来たのです。 くさやは伊豆諸島の特産物として知られるムロアジをはじめ、マアジやトビウオ、カワハギなどを開いてくさや汁に漬け込み、天日乾燥させた保存食。独特の香りがあるため好き嫌いがはっきり分かれますが、一度クセになると普通の干物では物足りなくなってしまうのだとか。

400年以上の歴史を誇る島の保存食

約400年以上前の室町時代に、すでにくさやは作られていたといわれますが、産業として生産され始めたのは江戸時代になってから。当時、新島では塩の生産が盛んで、年貢塩として幕府に上納していました。魚は塩水に浸して保存食としていましたが、その塩水を捨てることなく繰り返して使っているうちに、格段の旨味と風味が楽しめるくさや汁となっていったのです。その後、新島のくさや汁は伊豆諸島に伝わったといわれています。
「昔は各家庭にくさや汁があって、その家独自の味を楽しめたそうですよ。ぬか床と同じですね。今では家庭でくさやを作るということはほとんどありません。その頃に新島に来て各家庭を訪ね、自慢のくさやを食べてみたかったですね」と藤井さんは笑います。新島生活17年にして、彼はすっかりくさやにやみつきのようです。藤井さんに限らず新島の人々にとって、くさやは食卓に欠かせない食材です。

400年以上の歴史を誇る島の保存食

手軽に味わえる真空パックをおみやげに

新島空港近くのくさやの里で製造作業を見学しました(事前予約をすれば見学可)。従業員の方が丁寧にマアジを開き、新島の清らかな地下水で洗い、くさや汁に漬け込みます。組合長とはいえ藤井さんもこの作業に欠かせない要員です。くさや汁の香りは強烈でしたが、慣れてくると「うまそう」と感じている自分に少し驚きました。
「このご時世ですから、集合住宅でくさやを焼いていると苦情が出るという話も多いです。でも安心してください。今では焼いて裂いて真空パックされた商品も数多く揃っています。移動中でも香りが漏れることはなく、袋を開ければすぐに食べられますから、島のみやげにおすすめです。新島産のくさやを見かけたらぜひ味わってみてください。慣れればやみつきになること間違いなしです。特にお酒の好きな人にとってはたまらないですよ。」

手軽に味わえる真空パックをおみやげに

新島水産加工協同組合代表理事組合長

藤井 栄作さん/FUJII Eisaku

くさや作りはこちらで見学できます

電話
04992-5-0641
所在地
新島村本村くさやの里(要予約)

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