TOKYO GROWN |
東京の農林水産総合サイト

SEASON'S REPORTTHE 東京仕事人

『自然に優しい循環型の林業 原木シイタケ栽培』

林業編林業編

内沼きのこ園

内沼秀夫さん/ HIDEO UCHINUMA /

キノコ栽培は農業のように思われるかもしれませんが、国が定めた「特用林産振興基本方針」では、「特殊林産物」として定義されています。今回は循環型の林業の考え方を含めて、原木シイタケを栽培する【内沼きのこ園】さんを取材しました。

有機の王様はキノコ

青梅市の山間部にある【内沼きのこ園】は、シイタケの原木栽培を中心に、キノコの摘み取り園と取れたキノコを楽しめるレストランも経営しています。「東京だけれど牧歌的な感じが残ってるからね、癒しを求めて来る人も多いんですよ。まずは自然の中でゆっくりしてもらいたいと思って、色々楽しめるような施設を増やした感じですね」内沼さんは原木シイタケの栽培を始めて32年。「それまでは畜産業をしてたけど、バブルの時代、有機(オーガニック)がはやり始めて、興味がわいたのが始まり」とのこと。農薬とか肥料とかの問題点が指摘される中で、やはり人間にとって大切なことは自然のものを食べることではないかと思った内沼さん。「いろいろ考えるとやはり【菌食】が一番オーガニックだなと。そして、有機の王様はキノコだと思って原木シイタケ栽培を始めたというわけ。」

キノコの摘み取り園で行列が!

しかし、経営はなかなかうまくいかなかったそうです。「種を打ってから2年経たないと収穫できないというのには参った。全く収入ないんだから。でもね、今度は取れるようになったら原木が見えなくなるほどなっちゃって・・・どうやって売るのって」そこで一計を案じた内沼さん。「トラックにね、キノコ狩りって看板積んで、いろんなところに立てに行ったんですよ。そしたら家に戻ってくる頃には人があふれちゃって・・・それからはずっとお客さんが途切れないようになりましたよ」今では年間1万人ほどの来場者があるそうです(予約制)。

原木栽培で森を守る

とはいえ原木栽培の難しさは同じ原木からは1年に一回しか収穫できないということ。
「年間平均して収穫できないからね。日によっても違うし。なんで、それをわかってくれるスーパーにしか卸せないですよ」だから摘み取り園とレストランが大切なのだそうです。「わかってくれる人に、楽しんでもらいたいですね。ここに来ればその良さがわかるし、原木栽培がなぜオーガニックなのか、ということも知ってもらえるしね」
原木にこだわるのは、広葉樹のナラの木の森を守りたいという思いとおっしゃいます。ナラは18年程度で伐採するのがいいのだそうです。切っても根が横に広がっているので、萌芽再生と言って、木の根元から新芽が伸びてきて、切った木の3倍くらいに増えるのだそうです。横に張った根もそのまま生きているので、その根が山崩れを防ぎ、さらに落葉によって水を溜めるので治水の役割も担ってくれるのだそうです。原木栽培によって循環型の林業が守られるのだそうです。

無駄がない原木シイタケづくり

その原木10㎏からシイタケは1kgほど採れるのだそうです。ただし、原木の役割はそこで終わることはありません。「そのあとは粉砕して菌床に回せるの。うちは菌床栽培はやってないけど、欲しい人に分けてる」原木の2次利用が可能になるのだそうです。さらに冬場の暖房にも使います。暖をとった後の灰は、藍染の藍に使うことができるのだそうです。「無駄なところが全くないでしょう?このやり方は国際連合食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産にも登録されて、海外から見学に来る人も結構いますよ」
内沼きのこ園にはハウスもあって、年間の栽培を可能にしています。ハウスの中では18度から23度くらいが最適だそうで、ボイラーで温水を沸かして熱交換しているのだとか。乾燥しないようにラジエーターを使って、70%くらいの湿度を保つのが秘訣だそうです。

おいしいシイタケの見分け方

さて、そんな内沼さんにおいしいシイタケの見分け方をお聞きしました。
「きのこは広がって胞子が出る状態で完熟状態。皆さん形で選ぶけれど、丸いのよりも広がっている方がおいしいよ」完熟するとうまみ成分グアニル酸が生成されるのだそうです。うまみ成分はアミノ酸でアミノ酸は酸化するので赤くなって見た目が悪くなるのだそうです。ですので形や見た目を優先した場合、うまみが出る前に採集して出荷してしまうのだそうです。「でもね、本当に美味しいしいたけは完熟してからでないと本物の味はわからないよ。香りと歯ごたえ、薬事効果も考えると、原木で完熟したものが一番おいしい。ここではそんな完熟したシイタケが食べられるよ」

キノコ嫌いでも食べられる原木シイタケ

「キノコ嫌いの子供だって、一口食べた瞬間から夢中になって食べはじめるから、おもしろいね。子供は正直」食育という面でも貢献できていると内沼さん。環境についても、団体や企業で来る方にはお話しするそうです。「キノコ菌は白色腐朽菌といってセルロースを分解する酵素を持っているの。山の木が寿命を迎え倒木すると、キノコ菌が土に戻す役割を担っている。キノコは自然界においてはとても大事な役割を持っているって。人間も自然の中で生きているので、共生するのが自然にも優しいでしょうって」

シイタケを食べよう!

さて、最後に原木しいたけの一番おいしい食べ方は?と尋ねると、「やっぱりそのまま焼いたのが一番!」とのこと、【味】【香り】【歯ごたえ】がそのまま楽しめると。「もしくは簡単な料理で十分。グアニル酸が含まれているから、グルタミン酸やイノシン酸を追加して相乗効果で美味しくするような料理がいいね。オリーブオイルたらしてホイル焼きとか、アヒージョとか。とにかくそのままを楽しんでほしいね!」

グルタミン酸=昆布などに多く含まれるうまみ成分
イノシン酸=日本では鰹節に含まれるうま味成分のひとつとして語られることが多い。

内沼秀夫さんへの一問一答

QUESTIONS AND ANSWERS

原木シイタケの保存方法は?
すぐに食べてもいいけど、冷凍しても大丈夫。キノコの菌が活きているので、低温に合うとそれに反応して自分が凍らないためにさらにうまみと香りをだします。明日食べるのであれば一晩冷凍して食べてみてください。長期間保存するときはフリージングパックに入れるといいです。
食べる前の注意は?
笠のふちについた白い部分をリンピと言い、これがとれていると鮮度が落ちた証拠。なのであまりいじらないようしてください。あまり強く洗わないこと。茎をとってから洗うのは、中に水分が入ってうまみが薄まるから気を付けてください。
干しシイタケがいいと聞きますが?
生シイタケのグアニル酸が1だとすると、干すことによって濃縮され10倍になり、更にそれを粉にするとなんと30倍になります。ダシをとってうまみを出してもいいし、調味料代わりにしてもいいです。

ページトップへ