『どんなモチベーションでこくベジを運んでいるのですか?』

僕らこくベジ便のメンバーがよく聞かれる質問です。
気づけば南部さん、高浜さん、西村さん、奥田の4人でエイヤッと始めたこくベジ便は間もなく5年半になります。何もないところから始めたこの「まちの活動」のような「事業」は、農家さん、飲食店さん、いろんな人の協力のもと、まちの日常に溶け込む存在になることができました。
最初は配達する車も、野菜を入れるコンテナも、みんな借り物で、4農家さんから集荷して10軒ちょっとの飲食店さんに届けるくらいで、今思えば、休みの日に草野球をするような感じのノリでこくベジ便は始まりました。

〈こくベジプロジェクトとは〉

「こくベジ」は、国分寺市内の農家による農畜産物の愛称です。国分寺では、江戸時代に行われた新田開発から300年間、土を育むことを大切にしながら、たくさんの作物が育てられてきました。「こくベジプロジェクト」は、そんな「こくベジ」の魅力をPRし、農と食をつなぐことで、まちの活性化を目指す取り組みです。
「こくベジプロジェクト」の発足は2015年。国分寺市による地方創生先行型事業の一環として企画されました。農家はもちろん、JAや飲食店、商工会や観光協会も一体となり、地産地食という目標に向けて盛り上がっているのが「こくベジ」の特徴です。
2020年より「こくベジプロジェクト推進連絡会」が立ち上がりその流れを引き継いでいます。
主な取り組みは、こくベジ参加店(使用している飲食店)のPR、マルシェの開催、トマトフェスタなどの食べ歩きイベント、農福連携などの取り組みの相談対応や実施です。

「個々のお店をPR」

以前から「ぶんぶんウォーク」というイベントで国分寺野菜を市内飲食店さんに使ってもらう活動をしていたこともあり、2015年末に国分寺市からこの取り組みに協力してほしいというお誘いを受け、「こくベジ」プロジェクトの立ち上げに参加しました。協力していただける飲食店を集めるため、日ごろから国分寺野菜を使用しているお店や「ぶんぶんウォーク」に参加しているお店を中心に声掛けをしました。
当初の計画だったご当地グルメを展開するのではなく、個々のお店に国分寺野菜を使った特別メニューを提供してもらい、それをPRするという現在の「こくベジ」プロジェクトのベースになる形をつくりました。
こくベジの参加店舗数は初年度22店舗でスタートして、5年目の2019年度には105店舗まで増えました。

〈こくベジ便とは〉『誰かがこくベジを運ばないと続かないよね』

まさかその後に自分たちで運ぶとは思ってもいない中、『誰かがこくベジを配達しないとこのプロジェクトは続かないよねー』と呑気に話していました。
それまでの経験から、野菜の流通の仕組みがないと続かないだろうことは目に見えていました。また、飲食店さんにとっては仕入れのルーティンに、自らが動くということをプラスするのはかなりハードルが高いです。
配達するということには、物理的に品物を届けるということのほかに、季節ごとに旬の野菜が何なのかを把握し、その魅力や食べ方などの情報を取りまとめて伝えることや、飲食店さんと農家さんという文化の違う人たちの間に入って調整する(緩衝材となる)ことも含まれていました。
その、誰かが、、、と言っていたのが、自分たちでやってしまおうか、ということになって、前述の4人の有志で配達を始めました。高浜さんが自身の経営するカフェを拠点に、配達は南部さんと僕である程度できるかなーとは思いましたが、、、
今思えばよくぞやったな、という感じです。いろいろなことができているのは日常的に「こくベジ便」がまちなかを走っているからですからね。
まだまだ道半ばですが、配達をやり始めて本当によかったなって思います。こんなに面白いことになるなんて想像以上でした。

〈国分寺の農業〉

人口12万人ほどの都市である国分寺市。農地面積の割合は東京都内で2番目に多く、街の中に農地が点在しています。少量多品目の生産が特徴で、直売所での販売が盛んに行われています。宅地化による農地の減少や、後継者不足といった課題を抱えていますが、農のある町を盛り上げようと、市民と行政により様々な取組みが行われています。

「こくベジ便の配達とその可能性」

現在は主に週2回、10軒ちょっとの農家さんと農協の直売所をまわって集荷し30~40軒の飲食店や食堂、施設に配達しています。2020年春からは個人向けの野菜セットの販売も始めて、協力してくれるこくベジのお店で受け取れる(現在5店舗)という仕組みも構築中です。このほかに企業や、マンションのコンシェルジュ、学童保育所などへの配達を定期的にしています。
『この前のナスがすごくよかったよ!』とか『味が濃くて瑞々しいからお客さん喜んでくれた。』とか『今まで食べたイチジクの中で一番美味しい。』といった会話を交わしながら、お店や農家さん、近くの大学の学生さん、地域の団体の方々とのちょっとした相談を配達中にされることが多く、それがきっかけでまちのプロジェクトが生まれたり、僕らの本業の仕事が生まれたり、時には僕らを介することなく新しい取り組みが生まれたりしています。
これから、南部さんや配達の仲間と、そんな面白い取り組みやこれからのこくベジ便の可能性のことをお伝えしていきたいなと思います。

【NPO法人めぐるまち国分寺監事・配送担当/ぶんぶんウォーク実行委員会事務局・奥田大介】
1974年、岩手県釜石市生まれ、東京都板橋区育ち。明治大学商学部卒業。高校在学中に板橋から国分寺にアルバイトで通い始める。その後、市内の新聞販売店に13年勤務。2007年より周辺地域の活動に参加。ぶらぶらマップ、地域媒体アサココ、ぶんぶんウォーク、おたカフェ、こくベジプロジェクト等の立ち上げに関わる。現在はカウンセリングの仕事と併行し、こくベジプロジェクトの配送担当として国分寺の街を走りまわる。

※今回のコラムは農産物を軸にした「まちの活性化」に焦点を当て、NPO法人めぐるまち国分寺の皆様に執筆を依頼しました。

NPO法人めぐるまち国分寺

奥田 大介/OKUDA DAISUKE

NPO法人めぐるまち国分寺

所在地
東京都国分寺市本多一丁目13-7

BACKNUMBER

こくベジのある暮らし

RELATED ARTICLERELATED ARTICLE

トピックス

「フローリスト農家」が目指す、ちょっぴり豊かな暮らしの提案。

トピックス

【第12回】「まちのタネ屋さん」は進化する!~野村植産と東京西洋野菜研究会

トピックス

【第11回】ヤギのナチュラルチーズで新規就農! 東京の山地農業にも勝算あり「養沢ヤギ牧場」

トピックス

給食という名の愛と導き 中野区立緑野中学校 

トピックス

新春特別寄稿『都市に農地を創るときが来た』

トピックス

陽のあたる縁側 すぎのこ農園

トピックス

【第10回】目黒で農地を残すには?コミュニティの拠点として都市農地を守る  目黒区「八雲のはたけ」

トピックス

【第9回】小松菜400連作!「全量残さず出荷、それこそが一番のエコだと思う」 江戸川区 小原農園

トピックス

【第8回】落ち葉を重ねて数百年 『 武蔵野の黒ボク土』をコミュニティで掘り下げる! 三鷹市 冨澤ファーム

トピックス

【第7回】女性が主体となれる農業経営の仕組みづくり( 株式会社となったネイバーズファームの狙いと可能性)

ページトップへ