国分寺の魅力、庭先販売で広がる温かい交流                        「こくベジ」のプロジェクトが始まって、間もなく6年が経とうとしています。プロジェクトと併走するように続けてきた僕らのこくベジ便も、ちょうど6年になりました。

僕が「こくベジ」の根幹ともいえる、庭先販売の野菜と出会ったのは20年以上前のこと。
当時アトピー体質だったこともあり、食事に気を遣い食材選びについて学び始めていた頃でした。新鮮であることに大きな価値があると感じ、庭先販売の野菜を買うようになったのです。
庭先販売の野菜は、とにかく新鮮でどの野菜もとても美味しいことが一番の魅力でした。

国分寺の農家さんの庭先に行けば、日常的に近所の人が野菜を買いに来ています。「この間買った菜花がとても美味しかったよ!」、「昨日のスナップエンドウ、茹でながらつまみ食いしていたら食べ過ぎちゃって、今日の分がなくなっちゃってまた買いに来ちゃった。」といった会話で賑わいます。
これは今に始まったことではなく、ずっと昔から国分寺にある光景です。庭先販売を通して広がる市民の温かい交流の風景こそが国分寺の良さだと僕は感じるようになりました。

庭先販売の野菜を取り入れてもらうために

まだこくベジ便が無かった頃のこと。「こくベジ」をみんなで食べようというイベントを企画すると、飲食店の人たちから「地場野菜は新鮮で本当に美味しいね」、「庭先販売があるってすごくいいよね!」という好評の声と共に、「買いに行ったけど買えなかった」という話を聞くことが、よくありました。
庭先販売あるある、なのですが、天気が悪い日や農家さんの都合が悪い日は予告なしに販売が休みになることがあります。また無人販売の場合は、値段ぴったりの小銭を持ち合わせていないと買えません。
飲食店の人であれば、限られた時間の中で買えるかどうか分からない野菜を買いに行くことは難しく、安定して買うことができなければ、こくベジを使った料理をメニュー化することも難しくなってしまいます。せっかくこくベジに魅力を感じ、買いたい、使いたいと思ってくれているのに叶わず、続かなくなってしまうことは実にもったいないことでした。庭先販売と「こくベジ」を求める人々とを繋ぐ橋渡しとなるものが必要だ、とその時感じました。

こくベジ便の配達を始めたばかりの頃、各所で野菜栽培カレンダーをもらいました。それらを元に収穫情報をまとめたこくベジカレンダーを作り、飲食店で「こくベジ」を使ったメニューの安定化に役立ててもらおうと思ったのですが、実際の収穫時期は農家さんによって違っていることが多く、自然と収穫時期がずれることもあれば、意図的に時期を変えて生産していることもありました。結局、確かなことは毎年その時になってみないとわからず、リアルタイムで農家さんから情報収集をして、その都度旬の情報を周囲に発信していく必要がありました。

新鮮な野菜と一緒にこくベジ便が届けるもの

実は国分寺市全体としては、年間200種類以上もの農産物が生産されています。四季折々の旬の野菜、一般的に需要のあるもの、西洋野菜やカラフルで珍しい品種のもの、瑞々しい果樹や鶏卵など、実に様々な農産物を「こくベジ」の農家さんが作っています。配達をしているとその種類の多さに驚かれることがあります。
種類が豊富であれば、どう違うの?何が美味しいの?と気になるところ。配達中によく話題になることです。配達を始めたばかりの頃、恥ずかしながらほうれん草と小松菜の味の区別がつかなかった僕は、わからないことばかりでうまく答えることができませんでした。そこで、配達をしながら、行く先々の農家さんや飲食店の皆さんに聞いてまわり情報や知識を得て周囲と共有していく、ということを繰り返していきました。野菜を届けると共に交流しながら旬の情報を各所に届けるというこくベジ便のスタイルはこうして生まれました。
配達中の交流の中では、「こくベジ」が新鮮で美味しくて感動したという声やエピソードをたくさん聞くことができました。「こくベジ」がきっかけで商売をしているこのまちと繋がれることが嬉しい、という声まであり、「こくベジ」が多くの人に求められているものであることを実感し、そういった声や気持ちがあることを方々に伝えていくことも大切だと感じました。こくベジ便が「こくベジ」と共にあり続ける意義を感じました。

「こくベジ」を届ける、伝えるのが「こくベジ便」

畑が身近にあり、庭先販売を通して市民が交流し、様々な情報や気持ちを共有する。僕は、国分寺界隈で昔から営まれているこの日常の在り方を含めて「こくベジ」だと思っています。
(※正式には「こくベジ」というのは国分寺市内の農家が販売を目的として生産した農畜産物(植木も含む)の愛称です。)
「こくベジ」の定着には、必要とする人の元にきちんとこくベジが届き、こくベジに関する旬の情報を得られることが必要不可欠だと感じています。僕らこくベジ便は、新鮮なこくベジを届けると共に、その交流の中で得られる旬の情報や人々の気持ちを伝達する役割をこれからも担っていきたいと思います。こくベジを生産している農家さんをはじめ、飲食店やご家庭など、「こくベジ」を一緒に盛り上げていく仲間とどんどん繋がっていけたら嬉しいです。
「こくベジ」がこれからもここにあり続けることを願って。

※今回のコラムは農産物を軸にした「地産地消による、まちの活性化」に焦点を当て、NPO法人めぐるまち国分寺の皆様に執筆を依頼しました。

NPO法人めぐるまち国分寺

奥田 大介/OKUDA DAISUKE

1974年、岩手県釜石市生まれ、東京都板橋区育ち。明治大学商学部卒業。
高校在学中に板橋から国分寺にアルバイトで通い始める。その後、市内の新聞販売店に13年勤務。
2007年より周辺地域の活動に参加。ぶらぶらマップ、地域媒体アサココ、ぶんぶんウォーク、おたカフェ、こくベジプロジェクト等の立ち上げに関わる。
現在はカウンセリングの仕事と併行し、こくベジプロジェクトの配送担当として国分寺の街を走りまわる。

NPO法人めぐるまち国分寺

所在地
東京都国分寺市本多一丁目13-7

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こくベジのある暮らし

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