東京にある生産の場をたのしく体験! 東京にも農業、林業、漁業があり、つくる人がいる!
10月25日(金)から27(日)の3日間、丸の内・有楽町・日比谷・豊洲の4会場で開催された「東京味わいフェスタ 2024(TASTE of TOKYO)」。
このうち、豊洲会場(「がすてなーに ガスの科学館」海側特設会場)では、「東京の豊かな農林水産を豊洲で体験」をテーマに、「畑の学校」、「森の学校」、「海の学校」と題したトークショーやワークショップをはじめ、東京産のグルメが味わえるキッチンカーや新鮮な農林水産物が味わえるマルシェが勢ぞろいし、家族連れなど大勢の人でにぎわいました。
豊洲の海を臨む広々とした空の下、体験したり、東京産の食を味わったり、いつもの東京のイメージとはちょっと違う農林水産業を、五感でたのしむ3日間。
「農業」、「林業」、「水産」のエリア別に会場の様子をご紹介します。
畑の学校の先生は、農業体験農園発祥の地、練馬区のプロ農家たち。
おいしい野菜の条件やプランター栽培について実践でレクチャーします。各回30名の定員には行列ができるほどの人気コーナー。
クイズに答えると、野菜がプレゼントされるとあって、子どもたちはもちろん、大人も一緒に盛り上がっていました。
この回の先生は、練馬で「井頭体験農園」とトマトファームを運営する加藤義貴さん。
トウモロコシは常温で置いておくと、翌日には糖度が半減すること。ホウレンソウの旬は本来、冬であることから、夏より冬のホウレンソウの方が栄養価は2倍あるなど、野菜の性質をわかりやすく解説。
おいしい野菜には、“品種”、“鮮度”、“旬”、“土づくり”の4つが欠かせないと話し、そのためには「小さなプランターでも自分でつくることが一番!」と、参加者に野菜づくりの醍醐味を伝えました。
東京産のプレミアムな野菜マルシェ
「東京野菜マルシェ」では東京都のエコ農産物や、東京の農家自ら運営する「東京農村」による新鮮野菜や加工品が勢ぞろい。
おしゃれなイタリア野菜や赤いビーツのジャムを販売する野村辰也さんは、あきる野市で種や資材を販売する会社「野村植産」を経営するかたわら、イタリア野菜などの生産グループ「東京西洋野菜研究会」も運営する若手リーダー。
マルシェの楽しみは、生産者とのコミュニケーション。
野菜の食べ方やおすすめの調理法から畑の様子まで、「東京農業のいま」を知ることができるのは「東京味わいフェスタ」ならでは!
多摩の森林で遊んで学ぼう!
森林のこと、林業や木について知ってもらおうというワークショップ「森林の学校」。
チェーンソーの実演では、迫力あるエンジン音で木を切る様子を間近で見学します。ヒノキの木くずが飛び散ると、あたりにさわやかな香りが漂って森のアロマが楽しめます。
チェーンソーの実演をしてくれたのは、東京都森林組合の職員、白鳥瑞さん(27歳)。
板橋区の出身ですが、テレビで林業の仕事を見て、森の中での仕事に憧れてこの仕事を選んだそうです。
林業の楽しさは、山の中での伐採で、「狙いを付けたところからうまく切れた時は気持ちよく楽しい」と、語ってくれました。
[写真左]見学の後は、ずっしり重い6㎏のチェーンソーを持って記念写真。
[写真中・右] 東京チェーンソーズによる遊びの広場や端材を使ったKIDSのDIYのコーナー。木の香りや手ざわりを楽しむ子どもたち。
「海の学校」 三宅島の漁師、「ミスターとうきょう漁業」西田圭志さんのトークショー
西田さんは、東京都の任命する「ミスターとうきょう漁業」として東京の水産のPRもしています。
キンメダイの漁の方法や三宅島の漁師の暮らしについて話しました。
東京大学のご出身の西田さん。大学では魚の研究をしていたそうです。研究のために魚を獲るのですが、次第に研究よりも魚を獲る方に夢中になり、漁業体験で訪ねた三宅島で漁師になりたいと思ったそうです。
三宅島に移住して3年間修業した後、2018年に独立。自分の船を手に入れた際、先輩漁師がプレゼントしてくれたのがこちらの大漁旗。西田さんの「西」の字が堂々と染め抜かれています。
島の漁は、天候や季節によって左右されるため、漁に出るのは1年のうち180日から200日。
5、6年前までは島の近くでキンメダイがとれましたが、今は船で3、4時間離れた漁場へ移動しています。春と秋はカツオ漁だそうです。
キンメダイは水深400mほどの深い所にいるため、潮の流れを予測して漁をするそうですが、GPSを使って予測するアプリを自ら開発したそうです。
さすがスマート漁師!
[写真左]「キンメダイの目は何色ですか?」子どもからの質問に「深い海にいるため自分の目を金色にすることでわずかな光を反射させて見えるようにしている」との回答に会場の大人達も「おおー」とうなずいていました。
[写真中]葛西臨海水族園による移動水族館「うみくる号」もファミリーに大人気。熱帯魚や東京の魚が見られます。
[写真右]東京から高速船でわずか1時間45分!伊豆大島の地魚のさつま揚げ「波浮天」!
「豊市」会場入り口で皆さんをお迎えした東京「花畑」
「豊市」会場入り口で皆さんをお迎えした東京「花畑」はJA東京中央会による東京育ちの花の苗。
最終日には来場者におすそ分けされました。
東京の農林水産業を体感したイベントの思い出と共に、みなさんのお宅へ花と緑が持ち帰られました。
ベジアナの取材後記 東京味わいフェスタ!豊洲で東京の農林水産業を大満喫
豊洲会場では、「畑」、「森」、「海」のテーマに分かれてエリアが配置され、東京の農林水産業が体験できるコンテンツが充実していました。
練馬区で体験農園とトマトファームを運営する加藤義貴さん。
あきる野市で西洋野菜を広める野村辰也さん。
日の出町で林業の仕事を生きがいとする白鳥瑞さん。
三宅島の漁師として自然と向き合う暮らしを満喫する西田圭志さん。
大都市、大消費地の東京にも実は農業、林業、漁業がしっかり根を張り、自然と共生する生産者がこんなに身近なところにいる!しかもみなさんかっこいい!(もちろん女性の生産者もたくさんいますよ)
東京の農林水産業について、楽しく学びのある味わいフェスタでした。
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野菜を作るアナウンサー「ベジアナ」
小谷 あゆみ/KOTANI AYUMI
世田谷の農業体験農園で野菜をつくるアナウンサー「ベジアナ」としてつくる喜び、農の多様な価値を発信。生産と消費のフェアな関係をめざして取材・講演活動を行う。
介護番組司会17年の経験から、老いを前向きな熟練ととらえ、農を軸に誰もが自分らしさを発揮できる「1億農ライフ」を提唱。
農林水産省/世界農業遺産等専門家会議委員ほか
JA世田谷目黒 畑の力菜園部長
日本農業新聞ほかコラム連載中