隅から隅まで知り尽くした東京湾で漁を始める
道具類を甲板に配置して、いよいよ漁がスタート。野口さんが海底から引き上げたアナゴ筒を手に取って蓋を開け一瞬のぞき込んでから松永さんへ手渡します。松永さんは船底の生け簀につながる容器にアナゴを放ち、残ったイワシはバケツへ。さらに桶の水で筒を洗って丁寧に積み上げる作業も同時に行います。アナゴが入っている場合もあれば空振りの場合もありますが、無駄のない2人の動きには見とれるばかりです。最初の休憩を迎えたときには開始から1時間以上が経過。500本の筒すべてを引き上げるには3~4時間かかりました。 多摩川河口近くの釣り船宿に生まれた野口さんがアナゴ漁を始めたのは40代半ばのこと。それまでも釣り船を操り、大漁に胸躍らせる釣り人たちを案内していた野口さんにとって、東京湾は勝手知ったる自分の場所。転身するなら自分の場所を走り回る漁師だったといいます。小さな頃から海に親しんできた野口さんにとって“オカ”での仕事は想像できなったのかもしれません。1年後に当時19歳だった松永さんに声をかけ二人での漁がスタート。松永さんは現在44歳、立派なベテランですが東京湾の漁師仲間ではまだ若手に入るのだとか。