後輩たちに技術や知識を伝授する仕事
漁のスタイルは腰巻き漁(貝巻き漁)。川の中に立ち櫛状に爪の付いた巻きカゴを貝が潜っている4~5cmほどの砂中に入れ、腰に付けた紐で引きながら棒を小刻みに動かして貝を獲ります。アサリは海水域、淡水でも育つシジミは汽水域のやや上流部が漁場です。ボートに乗せていただいたこの日はシジミ漁。漁場に到着すると、太田漁協の仲間たちのボートが5~6隻集まり、すでに漁を始めていました。仲間とはいっても安田さんから見れば親子ほども歳の離れた後輩たちです。彼らは大先輩の安田さんを「マモルさん」と親しみを込めて呼び、世間話やら冗談を飛ばし合いながら巻きカゴを操ります。もちろん後輩たちにとって“マモルさん”とともに漁をすることは貴重な勉強の場でもあるのです。安田さんは川の流れの具合や巻きカゴの目の大きさの選び方などをさりげなく後輩たちにアドバイスします。安田さんにとってはシジミを獲ることよりも、自らが長年培ってきた技術や知識を次の世代に引き継ぐことが本業と言っても過言ではないかもしれません。川底に危険な流木があれば後輩は“マモルさん”に報告します。安田さんは漁の手を止め場所を確認すると、竹の棒を目印に立て、仲間のボートが安全に操業できるよう努めます。