野菜の魅力を発信

西東京市で家族で営まれている「やすだ農園」。畑に併設された直売所は、まるでプチマルシェのよう。かわいらしいイラスト入りのPOPが添えられた、色鮮やかな野菜が並びます。「イベントなどで実際にマルシェなどに出店する時は、そのイベントの雰囲気にあわせてPOPを作ったりしますね。それを直売所でも使っているんです」と話すのは、加奈子さん。以前は保育士として幼稚園に勤めていたそう。直売所の飾りつけなどにも、その時の経験が活きているのがわかります。
「10種類ほどの野菜が入った『サラダセット』は、直売所でもネット販売でも人気がありますね。あけたらそのまま、彩りのいいサラダができるんです。いろいろな種類の野菜をまるごと買うのは難しいと思うけど、こうやってセットにすれば一人暮らしの人でも多品種食べられていいかなと思って」
赤や紫など目にも鮮やかな野菜が多く、加奈子さんはSNSなどでも積極的に野菜の写真や生育状況を発信しています。「マルシェやネット販売のお客さまが見てくれて、また買ってくれたり。繋がりができていくのが嬉しいですね」

野菜を育てるのがとにかく好き

畑の作業を中心になって進めている加奈子さん。「とにかく野菜を育てるのが好きなんですよね。経営の工夫とかは夫に任せて、自分はとにかく畑で作業がしたいんです。子供を出産した時も、家に戻って2週間はおとなしくしていたんです。でも畑が気になって、子供が寝ている間に抜け出して畑を見に行っちゃいました。家族から、『まだもう少し家で休んでて』ってちょっと怒られたりして(笑)」
農家の娘として生まれ、畑で遊んで育ったので、仕事をやめて農業を始めることは自然なことだったと言います。「ただいま、って感じでしたね。畑にいるのが普通のことだったし、いつかは自分で農業を、という想いはずっとあったんです」

東京で農業をやるということ

就農してからは、東京で農業をやることのメリットやデメリットも考えながら、いろいろな試みにもチャレンジしています。「野菜って、種類で値段を決められがちなんですよね。トマトがいくら、キャベツがいくら、みたいな。どんな土地で育ったかとか、キャベツにも種類があるとか、そういうのはあまり意識されない。だから、特別な種類だったとしても、単価を上げるのが難しい。東京で育った鮮度の高いものが届いている、っていう価値が伝わってないのが残念なんですよね」

跡取り娘として畑を守っていく

結婚を機に、ご主人の弘貴さんも仕事をやめて就農しました。「フレッシュ&Uターン農業後継者セミナー に一緒に参加して勉強しました。最初は虫も苦手だったんですけど、今は慣れてきたみたいです(笑)」。近所の人も畑を気にかけてくれるそう。「畑に知らない人が入ってると、誰かいるよって教えてくれたり。直売所では、野菜を買うついでにレシピを教えてくれたりもします」。収穫した野菜は、近隣の飲食店などにも入れています。「形の悪いものも、味がよければ飲食店などでは使ってもらえるので。自分の育てた野菜が、プロの手で調理され、それをまた自分も食べられるっていうのは嬉しいですよね」
地域での交流も活発にしながら、今後は食育などの分野にもチャレンジしたいという加奈子さん。女性の目線を大事にしながら、農業の未来を模索しています。

チャレンジ農業支援事業を活用

やすだ農園では東京都のチャレンジ農業支援事業を利用し、ロゴやホームページを制作しました。それにより、農園のブランディングが進み、PRや販路開拓に活用しています。

東京都チャレンジ農業支援事業
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/nourin/nougyou/shinkou/challenge/

安田 加奈子さんへの一問一答

QUESTIONS AND ANSWERS

Q.やすだ農園の特徴は?
A.大正時代から続く畑で、露地栽培を中心にやっています。直射日光をたくさん浴びることで、味が濃く、栄養価も高い野菜ができると言われています。
Q.女性が就農することのメリット・デメリットは?
A.特に女性だからっていうことはないかもしれませんが、今は農業用に使えるかわいい作業着や道具が多いので、そういった意味では楽しめているかも(笑)。
Q.就農してよかったことは?
A.毎日畑に行けることですね。野菜が大好きなので。特にうちの畑は横に林があって癒される空間です。
Q.大変なことは?
A.都市農業としての課題がたくさんあるので、それを解決していくのは大変ですね。ほかの農家さんとも連携して、よい方向に進みたいです。
Q.今後の展望
A.加工品にも挑戦したいなと思っています。今考えているのは、ビーツのコンフィチュール。野菜をいろいろな形で多くの人に届けられたらと思います。

安田 加奈子さん/YASUDA Kanako

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