デザイナーから農業の世界へ

夏にはぶどうのもぎり体験もできる山内ぶどう園。京王線仙川駅から徒歩10分という立地で、駅前の賑わいを見たお客さまから、「最寄駅は仙川駅で間違っていませんか?」と電話がくることもあるそう。
「駅前の風景からすると、徒歩圏内に畑があるとは思えないみたいなんです」と笑顔で話すのは、祖父からぶどう園を継いだ山内美香さん。就農する前は、デザイナーの仕事をしていたというから、かなりの転身です。
「大学の先輩後輩だった主人もデザイナーの仕事に就いていて、今もサラリーマンが本業です。なので、畑のことは主に私がひとりでやっています。ご両親やご主人と一緒に畑をやってる女性は他にもいらっしゃるんですけど、ひとりで表舞台に立って女性が農業しているのは、ちょっと珍しいかもしれませんね」

体験することで知ってほしい

就農してから、ぶどうだけではなく、柿やイチジクなど扱う果樹の種類も増やしていっている美香さん。
「ボランティアさんに手伝ってもらって野菜も育てていますが、やはり果樹は魅力的な部分が大きいですね。キウイやブルーベリーもやっているんですが、これからはかんきつ類やいちごも始めたくて」
体験することで果樹の魅力をもっと知ってほしいと目を輝かせます。
「ぶどうの収穫のあとに、それでサングリアを作ってピザを焼いて食べたり、イベントも行っているんです。食べるだけだと伝わらないことってまだまだたくさんあると思って。実際に畑で見て、自分で収穫することで学べることも多い。食べて身体に入ってくるものの意味とか大切さを、収穫から体験することでしっかり印象に残せたらいいなって」
畑には、御主人が作ったという石窯があり、イベント時には大活躍!
「近所のホームセンターでレンガを買って作ってくれました。家族の支えがあるからこそ、農業に力を注げている部分はありますね」

畑でワークショップ開催

食べる以外の体験もしてほしいと、新たな取り組みにも積極的に動いています。
「ワークショップにも力を入れていきたいと思っているんです。たとえば、ぶどうを使ったリースづくりワークショップなどを開催しています。果樹などを使った染め物体験などもやりたいんですが、平日開催が多くなってしまうのが悩みどころ。食べるだけじゃなく、果樹や野菜とふれあう機会をもっと作るために、試行錯誤を繰り返しています」

2020年は情報発信するチャンス

2020年の東京オリンピック・パラリンピックも、東京の都市農業にとってはチャンスだと捉えています。
「東京では農業をやっていないと思ってる人が、結構多いんですよね。就農前に大阪に住んでいた頃も、『東京には農地ないでしょ』って言われたことがあるんです。農家の娘だって答えたらとてもビックリされた。東京と大阪の距離でもそういう認識なんだから、世界では東京の農業を知ってる人がものすごく少ないんじゃないかと。なので、オリンピックなどで東京を訪れた方に、積極的に東京の農業について発信したいですね。競技会場で近いところもあるので、畑に直接足を運んで、実際に畑を見て欲しいです」
果樹を切り口に、知られていない景色や体験を提供したいという美香さん。デザインを学んできたクリエイティブな発想で、都市農業の新しい魅力を見せてくれそうです。

山内 美香さんへの一問一答

QUESTIONS AND ANSWERS

Q.山内ぶどう園の特徴は?
A.小さなぶどう園ですが、都内でぶどうもぎり体験が出来るのは大きなメリットだと思います。地方に行くのと比べ、渋滞に巻き込まれず電車で気軽に来られるし、移動時間が短い分、現地でゆっくり楽しんでもらえます。子供たちが走り回って遊べるし、家族連れの方には特にのんびり過ごしてほしいですね。
Q.就農を考えている女性にひとこと
A.女性ならではのコミュニケーション能力やマーケティング能力が重要性を増すと思うんです。情報発信が上手な人も多いし、男性にない視点で経営できるのは強み。一緒に活動する人が増えたら嬉しいです。
Q.今後の展望は?
A.いろいろな分野の人と繋がって、新しいことにはどんどんチャレンジしたいですね。畑での結婚式なんていう企画も出ていて、いろいろ考えて取り組むのは本当に楽しいです。

山内ぶどう園

山内 美香さん/YMAUCHI Mika

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