いよいよ秋本番!私たち(株)エマリコくにたちが運営する直売所の店頭も、前回のコラムで取り上げた「端境期(はざかいき)」を乗り越えて、色とりどりの秋野菜たちが賑わいを見せ始めています。
今年で創業10周年を迎えたエマリコくにたちは、東京多摩エリアを中心に130軒ほどの農家さんとお付き合いがありますが、毎年この時期になると、「あの農家さんの畑は、今どんな様相かなあ。いそがしくなってきたかなあ」と、たくさんの農家さんの顔が浮かんできます。でも、実は私自身、こんな風に農業を通して季節を感じるようになったのは、この会社に入社してから。それまで、都心部の畑がほぼ無いような場所で生まれ育った私にとって、「畑」という場所や「農家」という職業はとても遠いもののような気がしていたのでした。さて、このコラムを読んでくださっているみなさんにとって、「畑」という空間はどれくらい身近な存在でしょうか?

連載第五回となる今回は、私たちが運営している、東京の農家さんと市民を繋ぐ農体験イベント『農いく!』の取り組みを眺めながら、東京に畑があることの魅力を考えてみたいと思います。

※『農いく!』とは…東京農業活性化ベンチャー(株)エマリコくにたちが2019年秋に立ち上げた親子向け農体験事業。東京多摩地域の農家さんの畑を舞台に、旬の作物の収穫体験をベースとした1dayイベントや、テーマとなる作物の栽培〜収穫までを数ヶ月に渡り学ぶことのできるシリーズ企画などを開催中。

近いようで遠い、畑という空間を身近なものに

東京の畑は、市民が暮らすまちなかに存在しています。
農家さんの畑を訪れると、すぐ隣に戸建てやマンションの家々が並んでいるのが、一般的な光景。私たちがお世話になっている農家さんでも、拠点とする街の中に、小規模の畑をいくつかもち少量多品目栽培を行っている方が多いというのが特徴のひとつです。
こんな風に、まさに人々の暮らしの中で農業生産が行われている。生産者にとっても消費者にとっても、何と言ってもその「近さ」が都市農業の強みの最たるものだと思います。
しかし、物理的には近くても、実際には畑に勝手に入ることはできないし、そこでどんな農家さんが働いているのかをよく知るのは難しい場合が多い。
『農いく!』は、そんな身近な農家さんの畑を舞台に行う農体験イベントです。親子一緒に楽しく参加してもらうことで、これまで「近いようで遠い」存在だった畑という空間へ、気軽に足を運んでもらえるきっかけを提供したいと考えています。

野菜のプロである農家さんから教わる

『農いく!』では、畑にいる農家さんを「先生農家」と呼んでいます。
普段は生産活動に従事している農家さんに、この日は子どもたちや親御さんの先生となってもらい、野菜のことや栽培のことをいろいろお話してもらいます。
普段何気なく口にしている野菜や果物について、畑に来れば、どんな風に育つのか実際に見ることができることは貴重な体験です。
そんな体験を、より充実した深いものにしてくれるのが、その野菜を育ててきた農家さんの存在!先に述べたように、畑面積が限られ、少量多品目栽培が主流の都市農業においては、農家さんの個性やこだわりもキラリと光ります。
『農いく!』では、そんな農家さんから、直接生産者としての言葉で、野菜の特徴や、どんな風にこだわりを持って栽培をしてきたのかをお話してもらうことで、生産者の工夫や苦労といった普段お店で買い物をしているだけでは見えにくい部分に直接触れることができます。
ちいさな子どもたちにとっては、たまに難しいお話が出てくることもあります。でも、たとえすぐに理解はできなくても、きっと目に見えないちいさな「芽」が出たり、芽の前の「たね」をまくきっかけにはなれるはず。そんな思いで、農家さんにはいろいろなお話をしていただいています。

土に触れる心地よさ、思いがけない発見に満ちている

このコラムを書いている私自身、東京に暮らしながら二人の娘の子育てをしています。
あらゆるサービスに恵まれ、日々の生活に必要なものは比較的気軽に手に入りやすい東京での暮らしはとても「便利」だと感じています。
ただ、同時に、多くの選択肢に満ちているからこそ「何かしなければいけない」または「子どものためにより良い環境を整えてやらねば」など、常に何かしらやるべきことや考えることに追われて忙しない雰囲気を感じることも。それはまた、現代の子どもたちにも通じる部分がある気がしています。
そんな忙しなさで疲れた身体や心を癒やすエネルギーが、畑という空間にはあるのではと思うのです。
農家さんにとっては、日々生産活動を行う仕事場ですが、『農いく!』の日だけは、参加する子どもたちやご家族に少しの間「開いて」もらう。そうすると、そこに育っている作物を見たり触れることはもちろん、自然と子どもたちは土にたっぷりと触れたり、靴を脱いでその感触を確かめたりし始めます。中には、野菜を横目に一所懸命虫を探し始めたり、高く積んである堆肥の山をじーっと観察したり。そこには、都会に暮らしていると、なかなか得難い体験や過ごし方ができる環境が残っているともいえます。
また、広い空のもと、子どもと一緒になって自然にたっぷり触れる時間というのは、大人にとっても羽を伸ばしリフレッシュできる機会になると実感しています。

東京に畑が残っているということ。
そのことがもたらしてくれる価値は、もちろんとれたての野菜を手軽に入手できるという点に加えて、今回ここに書いたような、「学び」や「体験」といった視点から考えても非常に大きな意味を持つと信じています。
10月を迎え、畑にはたくさんの秋の実りが収穫の時を迎え始めています。
『農いく!』も、週末を中心にさまざまなテーマで開催していきますので、ぜひご家族で気軽に遊びに来てみてくださいね。なにせ、舞台となる畑はすぐそこ、会いに行ける距離にありますから。

※今回のコラムシリーズは、地域内流通に焦点を当て、株式会社エマリコくにたちの皆様に執筆を依頼しました。

株式会社エマリコくにたち

流通企画部 圓山めぐみ/MARUYAMA MEGUMI

株式会社エマリコくにたち

電話
042-505-7315
所在地
〒186-0004 東京都国立市中一丁目1番1号
WEBサイト
http://www.emalico.com/

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