11月。秋も深まり、東京の畑でも秋冬に旬を迎える野菜の収穫がピークを迎え始めています。
前回のコラムでは、私たち(株)エマリコくにたちが、東京に暮らす親子向けに提供している農体験イベント『農いく!』の取り組みから、東京に畑があることの価値について考えてみました。
それは、近いようで遠い存在になりがちな畑という空間が、そのまちに暮らす人たちにとって本当の意味で身近なものになることで、「学び」や「体験」という観点から多くの気づきを与えてくれるというものでした。
続く連載第六回となる今回も、この『農いく!』を基に少し違う視点から書いてみたいと思います。
今年度、私たちが、旬野菜の収穫体験をベースとした1dayイベントと並行して注力しているのが、シリーズ体験と呼ばれるものです。これは何かというと、テーマとなる野菜を決めて、その収穫部分だけではなく栽培から親子一緒に丸ごと体験してみようというもの。もちろん、『農いく!』らしく、先生はプロの生産農家さんたち!
今年は4種類の作物を取り上げて、それぞれ4ヶ月〜半年間など長期に渡る企画を実践しています。
この『農いく!』シリーズ体験に参加することで見えてくる野菜のことや東京の農業のことにスポットを当ててみたいと思います。

※『農いく!』とは…東京農業活性化ベンチャー(株)エマリコくにたちが2019年秋に立ち上げた親子向け農体験事業。東京多摩地域の農家さんの畑を舞台に、旬の作物の収穫体験をベースとした1dayイベントや、テーマとなる作物の栽培〜収穫までを数ヶ月に渡り学ぶことのできるシリーズ企画などを開催中。

タネ?苗? 野菜によって異なる最初の姿

今年開催しているシリーズ体験は全部で4本。
テーマとなる野菜は、さつまいも、落花生、大豆、秋じゃがいも。
それぞれ、立川市、国分寺市、国立市、三鷹市の農家さんの畑を舞台に、参加者は3〜4回畑に通えるプログラムです。
細かい企画の内容はシリーズごとに異なりますが、共通していることが一つ。それは、どれも初回は「植え付け」から始まるということ。
さて、それぞれのお野菜、はじまりはどんな姿かたちをしているでしょうか?
さつまいもは苗から、落花生と大豆は豆がそのまま種となり、じゃがいもはいもがそのまま種いもになりますね。
これらは、農家さんにとってはもちろんあたりまえのこと。ただ、野菜を栽培するということに初めて挑戦する子どもたちや親御さんにとっては一つひとつが新鮮な発見です。
野菜が違えば、野菜が生まれる前の姿もぜんぜん違う。種や苗をよく観察してみると、その中でも少しずつ個性があることがわかる。まずはそのことに気がつくことから、シリーズ体験はスタートしていきます。
ちなみに、落花生(おおまさり)を育てた子どもたちは、農家さんが昨年収穫し乾燥させておいたさやの中から豆を取り出し選別する段階から体験しました。野菜の種や苗をインターネットでも手軽に買えるようになった今、こうした種とり・選別作業も貴重な経験かもしれませんね。

お世話をするからわかる、収穫の喜び

プログラムの中心が「収穫体験」である『農いく!』1day体験と異なり、シリーズ体験では畑での生育を観察したり、作物がよく育つようにお世話をすることも大事な取り組みです。
これも、野菜によって少しずつ内容は異なりますが、たとえば草取り、マルチ(畑のうねをビニールシートやポリエチレンフィルム、ワラなどで覆うことで、英語の「マルチング」を略したことばです。)剥がし、土寄せなどを体験します。日頃、農家さんがされている一見地味にも見えるお仕事を実際に体験することで、一つひとつの作業にはどんな意味があってやるのか、また野菜が育つためにはとても大事な作業であるということが、なんとなく分かるようになるはず。
「収穫」は、ある意味ゴール地点。もちろんその後も出荷に向けての工程は色々とありますが、農業でいうと最も華やかでキャッチーな部分ですよね。
でも、シリーズ体験では、実はそこに至るまでの作業こそ価値があって、「たのしい」と思ってもらいたいと願いながら企画しています。
「タイヘン」な部分を経験するからこそ、収穫の喜びも倍に感じられる。そして、日々食べる野菜が手に入るまでの、農家さんの苦労を少し想像できるようになる。
そんな実体験を提供することも、私たちが目指す『背景流通』のひとつの象徴的な形と捉えています。

同じ畑に「通う」ことで、野菜から季節の移ろいを感じる

前回のコラムにも書きましたが、東京の畑では「少量多品目栽培」といって、年間で20〜30種類ほどの野菜を順にリレーして育てることが一般的です。(私たちのお取引農家の中では、多い方で年間100種類以上栽培している方も!)
シリーズ体験では、原則、同じ農家さんの同じ畑に月をまたいで複数回通うことになります。なので、畑に来れば自然と、その時期旬を迎えた(または旬が終わった)野菜との出会いが待っています。
「前に来た時は小さな芽だったブロッコリーがやっととれるようになったんだね」「あんなにあったナス、今は葉っぱが茶色く枯れているね」など、親子一緒に畑を歩きながら観察することで気がつく発見は多くあるでしょう。
市場流通が発達し日常的にその恩恵を受けている私たちは、スーパーに行けば一年中ナスを買うことができます。ただ、本来ナスの旬は初夏〜秋ですね。東京の露地の畑で、真冬にナスを見かけることは、まずありません。
それは、ある種「不便」かもしれない。でも、自分たちの身体をつくる野菜や食べ物を通して季節の巡りを感じられるということは、とても「豊か」なことであると同時に、きっと子どもたちにとって貴重な経験となると信じています。

今回は、私たちが提供する農体験『農いく!』の中でも、より深く農業や畑と関わることのできるシリーズ体験についてご紹介しました。
今年度すでに最終回を迎えた企画もありますが、ご自身の畑での受け入れや先生役を引き受けてくれる農家さんも、たくさんのご家族と数ヶ月に渡り直接触れ合える機会をとても楽しんでくださっていました。
来年度のシリーズ体験も、バリエーション豊かにお届けしていきたいと思っておりますので、ぜひお楽しみに!どんな子どもたちの表情に出会えるのか、私も今から楽しみです。

※今回のコラムシリーズは、地域内流通に焦点を当て、株式会社エマリコくにたちの皆様に執筆を依頼しました。

株式会社エマリコくにたち

流通企画部 圓山めぐみ/MARUYAMA MEGUMI

〒186-0004
東京都国立市中一丁目1番1号
℡ 042-505-7315
http://www.emalico.com/

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イート・ローカル最前線(流通屋のこぼれ話)

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