いよいよ、2021年も年末が近づいてきましたね。
12月になったというだけで、気持ちがせわしなくなるから不思議です。
東京多摩地域の畑はというと、まさに農家さんも大忙し!今年は特に気候も良く、冬野菜が毎日ドカドカととれています。
それに呼応するように、私たちの直売所にもカラフルな野菜たちが所狭しと並んでいます。店頭に立つスタッフにとっては、体力的にはしんどくなる時期…ですが同時に、新鮮でバリエーション豊かな野菜に日々触れることで、一年の締めくくりに活力ももらえます。
個人的には、気候の良い11月を経て、めまぐるしく過ぎていく12月を迎えるこの時期も、案外好きなものです。
さて、私たち(株)エマリコくにたちでは、直営の飲食店を通じて地元野菜の流通拡大も図っています。
地元野菜の直売所から始まった、自称・東京農業活性化ベンチャー企業が営む飲食店の魅力とは?今回は執筆にあたり、日々現場に立つ飲食部門のスタッフたちにインタビューを行いました。
ぜひご覧ください。
『くにたち村酒場』…エマリコくにたち創業の翌年である2012年春にオープン。地元農家の野菜をふんだんに使ったメニューと、スタッフおすすめのワインを気軽に楽しめるお店。
店内に置かれた大きなワイン樽や壁に描かれたスタッフ手書きのイラスト、そして親しみのある接客スタイルが、友人同士はもちろん、家族でゆったりと過ごしたくなる温かみのある雰囲気をつくっている。看板メニューは「地元野菜どか盛りバーニャカウダ」!
『Craft! KUNITA-CHIKA』…2017年夏、くにたち村酒場の隣にオープン。東京を中心に全国各地のブルワリーが丹精込めて手がけるクラフトビールを多数オンタップ。これらの個性豊かなビールに合わせた、シェフ特製の地元産野菜を使った料理が絶品。
今年の緊急事態宣言中には、売上の半分をフードバンクに寄付する「チャリティーランチ」を実施するなど、小さなお店ならではの、様々な取り組みに挑戦している。
「東京産という“縛り”」を最大限に活かしたい
最初にインタビューに応えてくれたのは、『くにたち村酒場』店長兼シェフのYさん。エマリコくにたちの飲食部門統括責任者も務めています。
Yさんが言う、「東京産という“縛り”」とは一体どういう意味でしょうか。
「前にいた職場では、全国から一番おいしい食材を集めて料理するという環境が当たり前でした。とにかく味が良ければ、産地は限定されないわけです。でも今はその真逆。村酒場やKUNITA-CHIKAでは、野菜は原則地元の農家さんから仕入れる、と決まっていて、それは料理人としてはある意味“縛り”ですよね」と話します。
もちろん、どうしても地元で手に入らない野菜や、地元では時期外れの食材などは他のルートで仕入れることがあります。とは言え、やっぱりメインは地元産の野菜。
そうなると、「正直に言ってしまえば、いつもすべての野菜が、一番おいしい状態というわけではないと思っている」んだそう。
なるほど、それは野菜を販売する直売所のスタッフも頷く部分がある気がします。旬の走り、盛り、名残によってもおいしさは変わるし、雨が続いた直後など天候の影響もダイレクトに受けながら、野菜の味は敏感に変化します。
一見不便そうですが、『くにたち村酒場』や『Craft! KUNITA-CHIKA』では、それをあえてお店の強みに変えられるよう工夫をしています。
「同じ野菜でも、農家さんによる個性がめちゃくちゃ出るなあと感じています。だから、品目や品種ごとではなく、その日に入荷した野菜そのものの個性を見極めて料理したいと思っています。野菜の特徴や、時期ごとに変わる素材の味を活かして、最大限おいしい状態にしてあげられるよう、調理方法は細かく変えています。それが、苦しみでもあり、一番の楽しさでもありますね」と教えてくれました。
二店舗とも、店内はオープンキッチンで、席によっては調理をしている風景がよく見えるような作りになっています。お店を訪れた際には、ぜひそんな現場の工夫をのぞいてみてくださいね。
畑で見たもの、農家さんから聞いたことを飲食店でも伝えたい
次は、昨年秋にエマリコくにたちに入社し、今年の春から『くにたち村酒場』のホールに立っているKさんに、飲食店で心がけている「背景流通」※の方法についてお話を聞いてみました。
(※一般的に農産物を流通させる過程で忘れ去られてしまいがちな、生産農家、畑、栽培方法などについてのさまざまな情報。これらを一緒に流通させることを目指して生まれた弊社独自の言葉です)
「村酒場に食べに来てくださるお客様に、どんな風に伝えたら、私が畑を訪れた時に感じた心地よさや農家さんのかっこよさが一番伝わるのだろうと、いつも悩みながら接客しています」と、正直に教えてくれたKさん。「飲食店では、お客様同士の時間を楽しんでもらうことが何より大事なので、スタッフである自分がどこまでそういった説明に時間を取って良いものか、塩梅に悩むんです」とも。確かに、さじ加減がとても難しそうです。
入社してすぐの頃は、前回までのコラムで紹介していた「農いく!」の運営をサポートしたり、今年の緊急事態宣言中には農家さんのもとで援農活動も経験したKさんだからこそ、具体的に思い浮かぶ農家さんの表情や畑の風景がたくさんあるのだろうなあと想像しました。
だからこそ飲食の現場での伝え方に悩んでしまうけれど、そんな風に畑とスタッフの距離が近いということこそ、エマリコくにたちの飲食店のオリジナリティ。私たちの強みだと自負しています。
Kさんが、村酒場を訪れるお客様に一番オススメするメニューが、看板商品でもある「地元野菜どか盛りバーニャカウダ」。時期により旬の地元野菜をそれぞれのおいしさが最も引き立つ調理法でアレンジして、大きなお皿に盛り付けています。提供の際には、そのまま食べるのが良いのか、バーニャソースとの相性が良いのか、野菜ごとに一言添えるようにしているとのこと。
ぜひ『くにたち村酒場』に来られる際には、ホールスタッフ・Kさんにお野菜のこと、生産農家さんのこと、なんでも聞いてみてくださいね。
生産者さんに、提供していただいた野菜を使った料理の写真を見ていただいているところです。
お腹の中から幸せに、楽しくなってもらいたい
最後に、『Craft! KUNITA-CHIKA』店長兼シェフのSさんです。
もともと、都心部に暮らしながらパートナーの方と共に料理を生業としてきたSさん。
もう少し自然豊かな風景が残る場所に暮らしたい、と10年前に国立市へ引っ越してきた頃、ちょうど同じ時期に、エマリコくにたちが一号店となる「くにたち野菜 しゅんかしゅんか」をオープンさせていました。
その頃から、仕事に使う食材を調達するためしゅんかのお客様だったSさんご夫妻。振り返ると、ご本人は「正直最初の頃は、地元産だから特別においしいということではないかなあ」と感じていたそうです。ただ、パートナーの方がお店のスタッフに色々なお話を聞きながら地元産食材を活かして使うことにこだわる姿を隣で見続けているうち、自身の気持ちにも「ただおいしさだけで選ぶのではなく、近くでとれた地元野菜を積極的に使っていこう」というふうに、変化が生まれていったそう。
今では、エマリコの飲食店店長兼シェフとして、毎日地元野菜を扱うようになりました。「地元の野菜も10年前と比べるとどんどんバリエーションが増えて、品質も全体的に高くなってきていると強く感じます。そんな地元野菜を使った料理を食べることを通して、お腹の中から幸せに楽しくなってもらいたいとの思いから、日々キッチンに立っています」と話してくれました。
『Craft! KUNITA-CHIKA』では、多種多様なクラフトビールと絶妙に相性のよい一品料理が目白押し。もしかしたら、Sさんが国立市に引っ越してくるずっと前から作り続けてきた長年のレシピもあるかも?ぜひご来店の際は、そんなお話も聞いてみてください!
今回は、私たちの運営する飲食店のスタッフにインタビューした中から、地元野菜を扱う上での工夫や料理への思いなどを紹介しました。
農家さんたちが丹精込めて育てた野菜が、お店で手間暇かけられどんな一皿が生まれるのか。ぜひ直売所のご利用と合わせて、そんな発見も楽しみに来ていただけたら嬉しいです。
※このコラムシリーズは、地域内流通に焦点を当て、株式会社エマリコくにたちの皆様に執筆を依頼しました。
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株式会社エマリコくにたち
流通企画部 圓山めぐみ/MARUYAMA MEGUMI
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