生きた“農”と共存する“まち” 練馬の農業者へインタビュー
みなさん、こんにちはー!野菜を作るアナウンサー「ベジアナ」小谷あゆみです。
秋も深まり、収穫祭や農業祭りなどイベント目白押しのシーズン。
11月19日(日)には、練馬区で「全国都市農業フェスティバル」が開催されます。
そこで、本番直前スペシャルインタビュー!
練馬区の農業者を代表して、全国都市農業フェスティバル実行委員会・実務検討部会のメンバーで、トークイベントにも登壇される、洒井雅博さんにお話を伺ってきました。
洒井雅博さん(37歳)は、「さかい農園」六代目、就農9年目。
若い頃は農業を継ぐ気はなく、自動車関係の会社に勤めていましたが、
社会へ出て視野が広がるにつれて、洒井さんは、
「東京で農業を続けられること、家の前に畑がある風景は、当たり前ではなかったんだ。」と、気づいたそうです。
その後結婚して、徐々に、働くことの意味や、農業の大切さ、地域のことも考えるようになっていた洒井さん。
リーマンショックや大震災を経て思うところがあり、転職を考えた時に、お父様から、『他の仕事をするのなら、家で農業をやれば』と言葉をかけられました。
「それまでは、定年間際になってから畑に戻るのかなと思っていましたが、確かに、地域で食べ物を作ることを知ってもらうという意味でも、若いうちに農業に向き合う方が、やりたいことができるんじゃないかなと考え、就農しました。」と、洒井さん。
背丈を超える大きな葉っぱは、里芋です。
東京都農林総合研究センターが育成した「東京土垂(どだれ)」という品種で、肉質に優れ、たくさん収穫できるのが特徴です。
道路沿いに畑があるため、通る人がフェンス越しに、「こんなに大きな葉っぱになるの」と驚いていくそう。
畑でないと知ることのできない、里芋の葉っぱや実り方。
こうした発見や対話は、近隣の人にとっても、都市農業の魅力です。
「都市農業の長所は、何といっても消費者が近いこと。」と洒井さん。
何を作り、どこへ売るのか、売り先も値段も自分で決められるので自由度が高い。
一方、限られた狭い農地で、どうやって売り上げを上げていくのかも、自分たちで考えないといけません。
また、地方の産地と比べると共同出荷ではない分、他の人と同じものを作って供給過剰になると売れなくなるというリスクも自分で負うことになります。
取引先を増やすと、その分手間もかかるので、どんな農業も、一長一短のようです。
練馬といえば、やはり練馬大根。
近所の小学生が体験学習で種まきしたものが、もうすぐ収穫を迎えます。
その他、露地栽培は、青首大根、三浦大根、ホウレンソウ、小松菜など。
子どもたちの食農体験を通して、周りの大人の理解にもつながるため、洒井さんは積極的に体験の受け入れや出前授業に取り組んでいます。
また、練馬区ではマルシェの開催が多く、お客さんとの対話やコミュニケーションで、生産現場のことを丁寧に伝えると、ファンになってくれることもあるそうです。お客さんと生産現場との距離が近い都市農業ならではの強みですね。
(写真:左)20年ほど前、父の代から始めたブルーベリーの摘み取り園。今では30軒ほどに広がり、練馬区の夏の風物詩となり、地元内外に人気。
(写真:中)八王子市にある磯沼牧場の牛ふん堆肥を使用。都内の牧場で育った牛のふん尿からできる堆肥で土づくりをし、畑で野菜をつくり、近隣の人が食べる。東京の中で循環できるサステイナブルな農業を実践。
(写真:右)コインロッカー式の自動販売機。200~300円で販売している。この日は里芋を販売。
休みの日には、お子さんの習う剣道や塾の送り迎えなど、家族との時間も大切にしているという洒井さん。
農業という仕事は、意外に自由な時間があって、楽しくやりがいがあり、しかもちゃんと稼げるんだという姿を見せたいという思いもあるそうです。
「やはりこの土地を大事に守りたいですし、子どもが継いでくれたら嬉しいですけど、職業の選択肢が多い時代ですから、まずは選んでもらえるような農業を、自分が示していきたい」と、話してくれました。
11月19日(日)、「全国都市農業フェスティバル」では、練馬区のほか、東京都国分寺市、千葉県松戸市、愛知県名古屋市、京都府京都市にて都市農業に取り組むみなさんをゲストに迎えて、都市農業の魅力や未来を語り合うトークライブが、午前の部と午後の部に分かれて開かれます。
今回ご紹介した洒井さんは午後の部に登壇されます。
トークライブに登壇する練馬の農業者の皆さん。
加藤優子さん、西貝洸輝さん、洒井雅博さん、野坂亮太さん。
開催当日は、この他にも「野菜のマルシェ」「キッチンカー」「ワークショップ」など、楽しいイベントが盛りだくさん。
ぜひ、練馬・光が丘公園に遊びに来てくださいね~。
【練馬区公式HP】
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kankomoyoshi/nogyo/toshinou_festival/index.html
【ベジアナの取材後記】
近隣の人においしく新鮮な野菜を届ける「さかい農園」には、多くの人が集まったり、関わったりしています。
その中の一つに、農業と福祉が連携する「農福連携」があり、現在、週に1回、畑に福祉作業所から障害を持つ人がやって来ます。
午前中の数時間、3~5人で雑草抜き、畑の片づけ、堆肥をまくなどの作業をしてもらうと、とても仕事がはかどり、助かっているそう。
同時に、作業する皆さんも外での仕事を楽しそうにしてくれているのだとか。
多様な「農」の在り方として、こども・大人・高齢者・障害を持つ人など、いろいろな人を包み込みながら、まちに彩りを添えている「さかい農園」を見ていると、近隣の住民からも、近くに畑があってよかったと歓迎されていることが、よく伝わってきました。
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野菜を作るアナウンサー「ベジアナ」
小谷 あゆみ/KOTANI AYUMI
世田谷の農業体験農園で野菜をつくるアナウンサー「ベジアナ」としてつくる喜び、農の多様な価値を発信。生産と消費のフェアな関係をめざして取材・講演活動
介護番組司会17年の経験から、老いを前向きな熟練ととらえ、農を軸に誰もが自分らしさを発揮できる「1億農ライフ」を提唱
農林水産省/世界農業遺産等専門家会議委員ほか
JA世田谷目黒 畑の力菜園部長
日本農業新聞ほかコラム連載中
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