「地域は自分たちで作っていく」くにたち農園の会

みなさん、こんにちはー!東京・世田谷の農園で野菜を作るアナウンサー「ベジアナ」小谷あゆみです。
今回ご紹介するのは、国立市谷保で農を切り口に様々な事業を展開するNPO法人「くにたち農園の会」。
東京・郊外に残された貴重な田園風景、住宅街の中に田んぼが広がるのどかな都会の里山にあります。近隣の市民と子供たちが参加する食と農の体験イベントに、同行してきました。

5月のある日曜日、東京都国立市谷保にあるコミュニティ農園「くにたちはたけんぼ」で、小中学生を対象にした農体験イベントがありました。

主催したのは市民科学の観点から調査研究をするNPO法人「市民科学研究室」(通称:市民研)と、有機農業の普及や食育の活動をするNPO法人ポラン広場東京です。
「めざせ、子どもシェフ!食と農のとびっきり体験」と題して、東京のまち中にも農家さんがいることを知ってもらい、畑や田んぼでの体験を通して、食と農について学んでもらう連続講座の一環として開催されました。

参加したのは、小中学生9人とその親やスタッフなど総勢20人です。
案内役を務めたのは、国立市谷保を拠点に、コミュニティ農園の運営をはじめ、地域に残る里山資源を活かした事業を広く展開するNPO法人「くにたち農園の会」の理事長、小野淳さんです。
一行は、谷保天満宮で集合し、国分寺崖線からにじみ出た湧水や、町の中に張り巡らされた豊かな用水を見学しながら、初夏の青空の下、農園へ向かいます。

畑へ着くなり子供たちを出迎えてくれたのは、アオダイショウです。
アオダイショウとは、ナミヘビ科のヘビで毒はなく、別名サトメグリ、ネズミトリなどと呼ばれ、農地や民家の庭先などによく表れます。
人との関わりが深いヘビですが、自分達の背丈ほどある体長は迫力があり、顔やしっぽをクネクネ動かす姿に、みんな硬直気味です。

小野さんが、「首に巻き付けたい人は~?」と呼びかけると、「ムリムリムリーッ!」と首を横に振りながらも、勇気を出して数人が、アオダイショウの頭をそおっとなでていました。
里山で人と共生する生き物から子供たちへ、刺激的な”洗礼”となりました。

続いて、案内されたのは麦畑です。
ちょうどこの日は別のグループの麦刈り体験イベントと重なり、黄金色に実った麦の穂を眺めながら、「麦秋(ばくしゅう)」という季語を教わったり、1つの田んぼで冬には麦を育て、夏には水を張って稲を育てる「二毛作」について学んだりしました。

種もみから芽が出た田植え前の苗を手で触ります。
「キヌヒカリ」という品種で、「コシヒカリ」より耐倒性に優れ、ごはんが冷めると甘みが増すことからお弁当にも適しているのが特徴です。

春菊、ルッコラ、水菜など様々な葉物野菜のトウが立ち、花が咲いていました。
「菜の花」にもいろんな種類があること、野菜の花の多くはエディブルフラワーとして食べられることも学びます(※食べる前に農家さんに確認しましょう)。

いよいよ収穫体験です。
サニーレタスの根元の茎をハサミでカットします。
ボンボンのような大きな葉っぱ!野菜のチアリーダーのよう。

そのほか、にんにくや玉ねぎを収獲したり、アスパラガスや江戸東京野菜「のらぼう菜」の種をかじってみたり、畑ならではの体験を楽しみました。

畑の野菜作りで欠かせない「土づくり」という農業についての大切なお話では、子供たちが想定外のリアクションに~⁈

小野さん:「土はなんでできていると思う?」
子ども達: ・・・・・
小野さん:「土はね、岩がくだけて砂になった粒や、生き物の糞と死がいでできているんだよ。」
子ども達: ・・・シーーン・・・

わたしもそばで様子を見ていましたが、先生役の小野さんの話そっちのけで土いじりに真剣になる様子が、実は、子供たちの土への関心度合を物語っていました。

教室の中での授業なら、生き物の糞や死がいというところで驚いたり、声を上げたりしそうなものですが、それよりも実際に手にしたひんやりした土の感触や湿った独特のにおい、子ども達は五感をフル回転させて、土を感じているようでした。
アスファルトやコンクリートに囲まれた都会で暮らす子ども達にとって、もしかしたら、校庭や公園の砂遊びではなく、「土いじり」をしたのが初めての子も多かったのかもしれませんね。

なんとおがくずの中からはカブトムシの幼虫も出てきました!
呆然と立ちすくむ子供たち・・・。

毎年春に用水路の清掃をして、田んぼや畑に水が行き渡るように管理しています。
さっきのアオダイショウが、水の中をすいすい泳いでいくのを見送りましたー。

後半は、田畑とつながる子育て古民家「つちのこや」へ移動して休憩し、緑あふれる庭で、レタスや水菜の種を持参したポットにまいて、持ち帰りました。
うまく芽が出るか、野菜の成長が楽しみですね。

参加した子供たちに感想を聞くと、
「今までスーパーで見ていた野菜がこんなふうに畑で生えているのを知って、野菜は土からできているのかと驚きました。」
「にんにくや玉ねぎを土の中から引っこ抜くのが楽しかった。」
など、印象に残ったことを語ってくれました。
収獲した野菜はそれぞれが持ち帰り、おうちでお料理にチャレンジしたそうです。

NPO市民研「食と農のとびっきり体験」参加者のみなさんと小野さん

NPO法人「くにたち農園の会」の代表を務める小野さんは、テレビのディレクターから農業、農資源の活用事業に乗り出した方で、都市農業を切り口とした発想やアイデアが豊富です。
「くにたち農園の会」では、子ども向けの農体験から、大人向けのアウトドアやものづくり、自家製ピザづくり、家庭で蚕を育てる企画、子育て支援から放課後の居場所づくりまで、農の多面的機能を存分に発揮した様々なサービスや事業を展開し、市内にキャンパスのある一橋大学の学生とも連携して活動しています。

「子育て世代が責任をもって自分たちで地域を作っていく」というコンセプトを掲げる「くにたち農園」、今後もイベントもりだくさんですので、谷保の田園風景の散歩がてら遊びに行ってみてください。

・小野さんの関連記事
https://tokyogrown.jp/topics/?id=1203301

【取材協力】 NPO市民科学研究室(通称:市民研)
「めざせ、子どもシェフ!食と農のとびっきり体験」
https://www.shiminkagaku.org/kidschef2022/

NPO法人ポラン広場東京のHPにも、詳しいリポートが掲載されました♪
http://www.polan.tokyo.jp/03_event/220522_kidschef.html


野菜を作るアナウンサー「ベジアナ」

小谷 あゆみ/KOTANI AYUMI

世田谷の農業体験農園で野菜をつくるアナウンサー「ベジアナ」としてつくる喜び、農の多様な価値を発信。生産と消費のフェアな関係をめざして取材・講演活動
介護番組司会17年の経験から、老いを前向きな熟練ととらえ、農を軸に誰もが自分らしさを発揮できる「1億農ライフ」を提唱
農林水産省/世界農業遺産等専門家会議委員ほか
JA世田谷目黒 畑の力菜園部長
日本農業新聞ほかコラム連載中

NPO法人 くにたち農園の会

WEBサイト
https://hatakenbo.org/

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ベジアナが行く!「東京×カラフル×農業」

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