世界中の食が集まり、超一流のレストランやお店で美食が楽しめる大都市・東京ですが、一方で東京にもローカル、地元があり、ご近所コミュニティがあります。
東京都の観光企画「東京のガストロノミーツーリズム」で、東京の食の魅力を発見する旅を掘り起こそうと、都市農業の番組にも出演されている料理研究家きじまりゅうたさんと、わたくしベジアナ小谷あゆみが、東京の食の作り手に出会う旅をしてきました。

練馬農業の名物!最新型のやさいの自販機!

東京23区で最大の農地面積を誇る練馬区。
上石神井にある「ベジファームかのん」代表の高橋範行さん(写真上)。
代々受け継いだ農業と新しい技術を取り込んだハイブリッドな農業で、ここでしか食べられない「おいしさ」をめざしています。

こちらは人気の品種、“べにはるか”。
季節を通して年間およそ40種類もの野菜を栽培しています。
近所の保育園児も芋ほりに来るそうで、高橋さんは、
「芋ほり体験に来る子どもたちは、普段は土に触ることがないので、土の中の虫を見るだけでもすごく喜んでくれます。」
とのこと。
畑に足を踏み入れると土はふかふか。祖父の代から土づくりには稲ワラを入れているそうです。

自宅の一角が直売所になっています。
直売所には、練馬区内でよく見かけるコインロッカー式の野菜自販機が置いてあります。

直売所入り口横の本日のお品書きには、クリ、サトイモ、サツマイモ、ヤキイモようかん、シイタケ、サツマイモチップス、ダイコン葉、ホシイモなどが掲示されていましたが、日替わりで様々な野菜が入るそうです。

畑で取れたての野菜が並ぶので鮮度はバツグン!正真正銘、畑直送です。
ご近所の人はもちろん、新鮮でおいしくて手頃だと評判が広まって、練馬区外から買いに来る人も増えているとのこと!
しかも値段は一般のスーパーなどとほぼ変わりません!
ご近所の人が、うらやましいですねー!

すごいのはこちら!最新式の自販機です。

冷蔵機能のついた自販機で、特に夏場は重宝します。
1,000円札を入れればお釣りがでるのも便利です。

この日の売りもの、おすすめの一部を並べていただきましたー!
新鮮野菜は、ミニトマト、ダイコン葉、シイタケ、サツマイモ、クリ。
野菜だけでなく、加工品も多いのが特徴で、焼きいもようかん、さつまいもチップス(岩塩味とシュガー)、ほしいもなど、ラインナップが豊富です。

貯蔵庫で寝かせてサツマイモの甘みを出す

サツマイモは畑から掘ってすぐよりも、適温を保ち、数か月間寝かせることで、デンプンが糖に変わり、甘みが増します。

都市農業は、農地の面積が小さく、生産量は限られていますが、一方で、人口が多く、店舗も多い大消費地の中にあるので、より高い品質で、価値を付けていけば、それに応えるマーケットがあるということです。

庭先での直売以外には、レストランをはじめ、ラーメン、ピザ、パン、洋菓子などのお店に野菜を卸しています。
お店からのこんな野菜を作ってほしいとリクエストがあると、新しい品種にもチャレンジするなど、料理人やお客さんとの対話やニーズはビジネスのヒントになります。

「農業を継ぐことに迷いはなかったですか?」

就農して8年という高橋さんに、尋ねてみました。
「小さいころから伝統ある農地を守っていくのは大切だと思っていたので、迷いはなかった」とのこと!
ただ、人手がないと作業が回らないことも実感し、最近は、福祉施設を通じて障害のある方に農作業をしてもらう「農福連携」にも取り組んでいます。

高橋さんのようなセンスのある若い農家によって、東京の農業は進化しているんですね!
練馬らしい風景を代々継承してくれている農家ってカッコイイ~!

練馬の野菜にこだわる「小料理 石井」

続いて訪ねたのは、大泉学園より徒歩3分の「小料理 石井」。
野菜のほとんどは練馬区産で、そのほかは西東京市など、いずれも東京産というこだわりようです。
店主の石井さんは、野菜ソムリエの資格も取得。東京産の野菜を積極的にとりいれます。

本日の献立(写真下段)の下にずらりと並ぶピンク色の文字は、すべて生産者のお名前。
土鍋で炊き立てのサツマイモごはん。生産者は大泉の加藤さん。
茄子は南大泉の鈴木さん。大根、カブ、ラディッシュは南大泉の高橋さん。落花生は大泉の瀧島さん。
内藤かぼちゃは大泉の村田さん。ルッコラと小松菜は、西東京市の矢ヶ崎さん。
生産者の顔が見える数多くの地場産野菜を使ったレシピを通して、料理人のこだわりが感じられます。

料理研究家のきじまさんも、改めて東京農業の魅力、野菜の力、生産者や料理人の濃厚な個性に、深くうなずいておられました。

ベジアナの取材後記

東京にある"ローカル"を感じる東京ガストロノミーツーリズム。
練馬の農業に始まって、東京ならではのご近所の味や魅力を体験しました。
地元を愛して誇りとする職人たちの仕事に出会え、食を通して、東京の魅力を再発見する旅となりました。

きじまりゅうた氏 プロフィール

祖母と母が料理研究家という家庭に育ち、幼い頃から料理に自然と親しむ。
男性のリアルな視点から考えた「若い世代にもムリのない料理」の作り方を提案している。
現在は「NHKきじまりゅうたの小腹すいてませんか」「NHKきょうの料理」「CBCキユーピー3分クッキング」などのテレビ番組へのレギュラー出演を始め、WEB・雑誌 上でのレシピ紹介や、料理教室やイベント出演などを中心に活動している。著書も多数。
NHKひるまえほっと にて東京都内の都市農業を取材するコーナーも担当。

訪ねたのはこちら

◆ 旬を感じる都会の農園「ベジファームかのん」[練馬区上石神井]

◆ 練馬の野菜にこだわる「小料理 石井」[練馬区東大泉]

■ 練馬区にたくさんある直売所や農園の情報は、練馬区の公式アプリ「とれたてねりま」で。

東京ガストロノミーツーリズム

東京ガストロノミーツーリズムは、「東京の食の魅力発見の旅」(東京都産業労働局観光部)のサイトで紹介しています。
東京の気候風土が生んだ食の魅力発見の旅、ぜひご覧ください。

野菜を作るアナウンサー「ベジアナ」

小谷 あゆみ/KOTANI AYUMI

世田谷の農業体験農園で野菜をつくるアナウンサー「ベジアナ」としてつくる喜び、農の多様な価値を発信。生産と消費のフェアな関係をめざして取材・講演活動を行う。
介護番組司会17年の経験から、老いを前向きな熟練ととらえ、農を軸に誰もが自分らしさを発揮できる「1億農ライフ」を提唱。
農林水産省/世界農業遺産等専門家会議委員ほか
JA世田谷目黒 畑の力菜園部長
日本農業新聞ほかコラム連載中

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ベジアナが行く!「東京×カラフル×農業」

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